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書評/『日本をダメにするリベラルの正体』(ビジネス社)/山村明義
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    宮崎正弘/書評
    日本のリベラルは「知の荒廃」を象徴してあまりある
    鳥越某の惨敗でリベラルの退潮がはっきりと示されているのに。。。

    リベラルが日本では誤った使い方をされている。なんだか知性のある良識派とか、自由主義とか、アメリカで認識されているリベラリズムとはたいそうな懸隔がある。
    なにしろ政権与党の自民党も、リベラル・デモクラティック・パーティだから。
    桜井よしこ氏はこう言っている(ダイアモンドオンライン、16年8月2日号)
    「リベラルという表現は、むしろ愚かな人という意味合いさえ(アメリカでは)含み始めた。だから皆、いま、自分はリベラルだと言うより、プログレッシブ(進歩的)だと言っている」。
    もっと率直に言えば、米国でリベラリズムというのは治癒の見込みのない愚者という意味で使われる。
    80年代のレーガン革命は「レーガン・デモクラット」という新しい投票行動を生んだが、それは民主党支持者が、当時の民主党執行部の時代錯誤的リベラリズムに愛想をつかし、大挙して保守主義に雪崩れ込んできたからだった。
    ハンフリーとか、マクガバン、デュカキス等々。
    当時、評者(宮崎)は、取材でよくワシントンへ出かけていたので、共和党関係者とりわけレーガン支持の若者達と議論すると、「Liberal―Pinky−Fool」という熟語が飛び出してきた。
    説明の必要もないだろうが、リベラルって、結局、愚かな馬鹿という意味で会話が成り立っていた。
    それくらい退嬰的というか、反進歩的タームなのであるにもかかわらず、日本では良識的自由主義という意味と取り違えられて頻度はげしくメディアでも使われている。
    リベラリズムを巧妙に煽って、保守主義に挑む論調は朝日新聞に典型的に見られる。

    著者の山村氏は、まずリベラル派といわれる人々はダブルスタンダードであると指摘し、大江健三郎や、瀬戸内寂聴、坂本龍一、内田樹、山本太郎、古賀茂明らの名前を挙げる。このなかにはネオリベラルで売り出し中の三浦瑠麗という政治学者も入るという。
    しかし、「この『リベラル勢力』は、いま完全にほころびているのだ。最大の問題は、彼らが知的な人たちに見えて、実は根本の部分に政治哲学を持っていないことだ。端的に言えば日本の『リベラル』と呼ばれる政治勢力はリベラリズムとはほとんど何の関係もない。彼らの拠って立つのは、ただ『反権力』という立ち位置のみである」と手厳しい。
    しかい、まったくその通りである。

    日本のリベラルとは「知の荒廃」を象徴してあまりあるうえ、鳥越某の都知事選惨敗でリベラルの退潮がはっきりと示されている。
    彼らは中国や北朝鮮の核武装、人権抑圧をスルーするという際立った特性を持ち、寛容をかかげながら、他人を強要する不自由、愛のリティや弱者が常に正しいという恐怖政治が、彼らの理想らしいのだ。
    そして彼らは保守の復活に我慢が出来ないらしいのだ。
    昨年あたりから日本会議を「カルト集団」と頓珍漢な攻撃を始めた。批判本だけで十冊もでたが、どれもこれも的外れ、そのうえ、批判本を読んで日本会議に加盟したという人が相当でてきて逆効果となったのは一種のアイロニーだろう。
    かくして本書はリベラリズムの欺瞞と二重基準と、その妖しげな人脈、その没論理を徹底的に追求した快著である。

    posted by: samu | 書評 | 09:40 | - | - | - | - |
    書評『出会いの幸福』(ワック)曾野綾子
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      宮崎正弘/書評


      人生は『出会い』であり、ふとした出会いが印象深い想い出となる
      ほんの数分の出会いでも貴重な邂逅となった人々がいた

      名エッセイを次々と書かれて世に問われる曾野さんには、ファンが多い。WILL巻頭の随筆も随分長いこと続いていると思っていたら本になった。一度読んで忘れているのもあれば、初めて読んだ箇所もある。
      とくにこの随筆集に強烈な印象をもつ人が何人もでてくるが、曾野さんはペルー大統領辞任直後から自宅にフジモリ大統領を匿った逸話は広く知られる。
      その『亡命』生活の最中だったか、評者(宮崎)も加瀬英明邸でフジモリ大統領と会ったことがある。
      おどろくほど日本語が上達されていた上、英語もかなり流暢だった。矢継ぎ早に、中国経済の現状について質問が飛び出した。曾野さんは、フジモリ大統領が曾野家のプレハブ住宅に突如移り住んでからの生活ぶり、そして食事から興味の範囲までを克明に記憶して、この最後のサムライの日本での生活を書いた。
      チリの章も面白く読んだ。
      というのも、チリでアジェンデ大統領の社会主義政権の腐敗、大統領府を武器庫にしたあとに軍事クーデターがおこり、その直後に曾野さんはサンチャゴに入った。その時に抱いた率直な印象は貴重な記録でもある。
      これまた評者の個人的なことだが、先月にサンチャゴに立ち寄って、クーデターの現場となった大統領府をみたが、前の広場にはアジェンデ大統領の巨大な銅像があり、逆にピノチェット大統領の銅像がない、という価値倒錯の現在のチリの思想状況を知っていたので、往時との格差について思いを走らせたのだった。
      もう一つの思いが百瀬博教氏のことである。
      曾野さんは、ある日突然、無名の百瀬を名乗る青年から詩集を贈られ、なぜかひらめくものがあって読んだそうである。そしてフランス料亭に彼を招いて食事をして、というような付き合いをされていた由。
      思い出したのだ。
      百瀬博教氏は2008年1月28日に急逝した。
      新聞には百瀬博教さんのことを「裕次郎の用心棒」と報じたが自宅風呂場で発見。自殺?事故死?(同日夕刊、29日産経朝刊)。
      「三島由紀夫の用心棒」を自称する作家の安部穣二氏は、雑誌『室内』を主宰されていた山本夏彦氏が、その文才を見つけ出した。安部さんと小生は45年近いき合いだが、最初は小金井一家の代貸しと言っていた。
      藤島さんの事務所によく訪ねてきて、話が滅法面白く、抱腹絶倒。あれを小説化したら面白い、と当時から指摘していたのは作家の藤島泰輔氏だった。藤島さんは安部氏の第七番目だかの奥さんとの結婚式で介添えを務めた。
      六年間のオツトメを終えて娑婆に戻った百瀬さんのトレードマークは『永遠に若く』の帽子だった。
        百瀬博教氏の文才を最初に発見し、大胆にも『週刊文春』に手記を連載させたのは花田紀凱氏である。文士とはもっとも縁が薄い人物が濃密で情緒的な裕次郎時代の回想を綴った。
      その花田さんの紹介で、評者も百瀬氏を知ったが、初対面の時から妙にウマがあって、『三島さんに会いたかった。あの自決には衝撃を受けた』と語った。
      そしてなぜか百瀬さんは詩集をくれた。その詩集は純朴そのものの作風で、いまとなっては遺書代わりとしか思えない。そのときに連れてきていた秘書に一緒の記念写真を撮らせ、その写真をなぜか次に偶然サイデンスティッカーさんの追悼会で会ったら、持参してくれていた。
      「どうして私が、この会にでると分かったのですか?」と訊くと、
      百瀬さんが『カンですよ、第六感』と言って笑った。
      百瀬氏とサイデンスティッカーさんとが、どこでどうつながっていたのか、うっかり聞かなかった。 
      こうして思いで深き人々が次々と登場してくるのが曾野さんの新著の特色で、読み込む内に夕食をとることを忘れていた。

      posted by: samu | 書評 | 09:26 | - | - | - | - |
      書評/『戦争を始めるのは誰か』(文春新書)/渡邊惣樹
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        宮崎正弘/書評
        嘘で塗り固められ、情報操作され、歪められてきた戦後史観は誤謬だらけだ
        第二次世界大戦は、本当は誰が始めたのか。日独は悪役に仕立て上げられたのだ

        渡邊氏の新作書き下ろしである。
        幕末の列強の進出からペリー来航、開国、日清・日露の戦い、大東亜戦争へと至る歴史のパースペックティブを、新発見の資料とくに公開されたアーカイブに眠ってきたデータなどを通して重厚に検証し直してきた渡邊氏の数々の労作の数々を私たちはすでに読んできた。
        この一作は「渡邊史観」の総仕上げと言えるかも知れない。
        私たちは戦後の「後智恵」でしか、歴史を見てこなかった。それが大変な間違いであることは、ようやく日の眼を見た新資料で、あるいは新証言で、従来の史観の誤謬が明らかになった。たとえば日本で言えば「十五年戦争史観」の間違い、戦後の「太平洋戦争史観」という大間違いに多くの人が気がついた。
        大満州帝国の歴史的評価はまだ定まらないが、すくなくともGHQがなしたWGIPの基本的指令が行き渡っていたことを、ようやく日本の知識人は把握した。

        「FDRが、フーバー大統領の恐る恐る始めたケインズ的経済運営をこれほどまでに詰まっていたことは『正史』に書かれていない。当選後には、選挙公約を見事なまでに裏切って、国家財政を火の車とし、ケインズ的経済運営手法を積極的に導入したのが借金王と呼ばれることになるFDRだった」。
        彼は借金を誤魔化すためにも戦争を始める必要があった。
        ところが「フーバーを無能な大統領と貶め、FDRを賛美する歴史家はこの事実を書こうとしない」のである。これがいまも米国の歴史学界とジャーナリズムに蔓延る左翼史観であり、ただしい歴史を言う本物の知識人に修正主義のレッテルを貼って貶める。この知的荒廃ぶりは日本の状況に酷似している。

        さてルーズベルトという大悪人が仕掛けた世紀の陰謀に日本は巻き込まれた。相棒はチャーチルだった。スターリンは漁夫の利を得たばかりか望外の獲物を手に入れた。戦後の東西冷戦は、ルーズベルトの誤算から生まれた。
        ヒトラーは、ホロコースト以前、ドイツ経済を再建した英雄と見なされていた。
        ドイツの再建は、英国の利益でもあった。第二次世界大戦は、ベルサイユ体制の不条理により、英国の愚策とポーランドの拙劣な外交が火に油を注ぎ、おこった。オーストリア国民はドイツ帝国への併合を熱烈に歓迎したのだった。
        ところが「全く間違ったFDRとチャーチルの外交を正当化するたった一つの方法が、ドイツと日本を最悪国として解釈することだった。戦前のドイツと日本を、自由を抑圧し世界覇権を求める全体主義の国、つまり民主主義の敵として描くことで、FDRとチャーチルの戦争指導の過ちを覆い隠した」(中略)
        「歴史修正主義は米英両国の外交に過ちがなかったのか、あったとすれば何が問題だったのか、それを真摯に探ろうとする歴史観に過ぎない」のである。
        しかし英米で、歴史修正主義は忌み嫌われ、学閥から排斥され、ジャーナリズムが敵視し、この知的荒廃がつづく限り、歴史の真実はなお埋もれたままになるだろう。

        そして本書で渡邊氏が一番言いたかったことは次の文言ではないか。

        「フランクリンルーズベルト(FDR)がソビエトを承認した1932年11月16日が、日本のその後の運命を決定づけた日に思える。極東、とりわけ中国への赤化工作への危機感を持ち、ソビエトの工作を資本主義体制への挑戦とみなし、強い危機感をもった日本は、繰り返しその体制を同じくする、そして同じように共産主義を警戒するはずのアメリカに、日本の立場の理解を求めた。防共のパートナーとなるよう訴えた。それが見事なほどに拒否されたのが、1932年11月16日だった。
        この日こそが、戦後の東西冷戦の第一歩でもあった。アメリカの無理解に対して、日本はその後も懸命の努力を続けた。しかし同時にソビエトの西漸の防波堤の役割を果たそうとしているドイツへの期待を高めざるを得なくなるのである。アメリカのソビエト承認が生んだ外交ドミノだった。日本は1934年夏、ドイツに帝国海軍艦隊を親善訪問させ、陸海軍高官をドイツに派遣した」(174p)

        しかし勝利の女神は悪魔の側にほほえんだ。
        「現代では多くの人々の心に、この時期にはまだ顕在化していないホロコーストのイメージが染みついている。曇った心のプリズムを通して、ヒトラーやナチスドイツを見てしまう。それがヒトラードイツはアプリオリに悪の国だとする解釈の原因である」(314p)。

        真因であるベルサイユ条約態勢の不条理は軽視され、チェンバレンの愚策もポーランドの稚拙な外交も、無視されるかスルーされている。
        「本当のことをかいてしまうと、連合国が作り上げた戦後体制の正統性が崩れる。敗戦国を一方的に断罪した二つの戦争法廷の根拠も失われる。だからこそ歴史修正主義に立つ歴史家は徹底的に嫌われてきた」わけである。

        新書版だが、びっしりと書き込まれており17行詰め328ページという浩瀚、雄に一冊の単行本を越える量がある。

        posted by: samu | 書評 | 10:20 | - | - | - | - |
        書評/『日米対等』(祥伝社新書)/藤井厳喜
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          宮崎正弘/書評


          日米貿易不均衡? 最高級兵器を米国から買えば一晩で解決できるじゃないか
          同盟を本当に『対等』な同盟とするには、何をしなければいけないのか

          国際政治学者の藤井厳喜氏、もっとも最新のアメリカ分析である。
          米国留学から帰国されて爽快にデビューされた以来、30年。おもえば藤井さんの思考、分析は、加齢とともに、「円熟度」を増してきたと言える。
          知遇を得てすでに30年余だから、多くの論客がマンネリの論考に埋没していく中で、藤井さんのアメリカ報告はつねに新鮮であり、そのうえ、大手メディアが一切書かないインサイドストーリィをふんだんに伴うので、いつも瞠目させられる。
          それもこれも長い滞米歴にくわえての、多くのアメリカ人脈がいかされるからだ。
          トランプの当選を早くから予測し、テレビなどでも公言してきた藤井さんだけに、説得力がますます強くなった。
          実はカナダから米国選挙を克明に分析していた渡邊惣樹氏も、『ボイス』で三回に亘ってトランプが勝つと予測してきた。それは単純にいって、「ヒラリーが犯罪者だからである」(渡邊氏)。
          彼女が私的メールを秘蔵し、国益をいかに害したかを、多くのアメリカ人は気づいていた。だからヒラリーの集会は空きが目立ち(テレビは、そのシーンを放映せず)、一方のトランプはどの集会も立錐の余地がなかった(テレビはその情景をカットし、暴言だけをクローズアップさせて意図的なヒラリー支援キャンペーンを展開していた)。
          評者自身、ニューヨークへ行った折に両陣営の選対本部を見に行ったが、トランプタワーは人出で満員。ヒラリー選対は高層ビルに閉じこもってエリートが出入りしているのみだった。
          書店をのぞけばトランプ本が平積み、ヒラリー本は書棚にひっそり。だから、メディアの偏向報道のあまりのひどさを実感してきた。

          さて本書の特筆はいくつもあるが、第一にトランプ政権の陣容を克明に、その人脈を追跡しながら分析し「軍人OBがかってないほど多い」のは、むしろ危険ではなく、安心であると断言しているポイントだ。
          なぜなら軍人は戦争を望まないし、軍事力は抑止力という基本理念をもつからであり、軍経験のないシビリアンでは、軍事と政治がセットだということさえわきまえないから机上の空論に陥りやすいのである。オバマの失敗は、軍人、ベテランを遠ざけ、現実を見ようともせず、机上の空論に走りすぎた結果だった。

          第二のポイントは『トランプノミクス』が『レーガノミクス パートツー』と見ていることだ。したがって「世界からアメリカに投資を呼び込むために、ドルが強くなることは避けられない」とする。
          日本に関して言えば「日米間の貿易は、すでにルールが確立し、アメリカに有利な仕組みが出来ている」ので、トランプは関税だのなんだの言い出しても、さほどの影響は受けないという
          TPPも、日本が土壇場まで努力した背景というか思惑には「アメリカ抜きとなれば俄然に日本が主導権を発揮できる『大東亜共栄圏』の実現ではないか」と、まことにユニークな分析を展開されていて、このポイントも本書の持ち味のひとつである。
          もちろん加盟国の再交渉が必要だが、なるほど、そこまで読んで政府自民党は日本で可決を急いだのか、いやしかし、自民党や外務省の情報収集能力を眺めていると、そこまでの深謀遠慮があったのか、どうかは謎である。
          第三に日米貿易不均衡は、日本が最高級兵器を米国から買えば一晩で解決できるとして、 同盟を本当に『対等』な同盟とするには、何をしなければいけないのかを提言する。
          ともかく面白く読み終えた。

          posted by: samu | 書評 | 18:21 | - | - | - | - |
          書評/室谷克実『崩韓論』(飛鳥新社)/宮崎正弘
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            宮崎正弘/書評


            約束してカネまで巻き上げていながら「約束した覚えはない」
            世界一の嘘つき民族は、中国人ではなく韓国人だったのか


            悪韓論、呆韓論と続けての大ヒットとなった室谷氏の新作は、韓国社会が崩壊している悲しい現実を描く。
            嫌韓論からはじまった、この韓国批判という大潮流は、いちじの韓流ブームを吹き飛ばしてしまった。無韓論、限韓論、断韓論、絶韓論、脱韓論、妄韓論とくれば、次は征韓論の新バージョンからも、しれない。
            いまさら指摘されるまでもなく、この国は『本当に駄目だ』。そして、もっと崩れる。
            なぜ駄目かについても、逐一の説明はいまや不要、国家としての体をなしていないばかりではない。青瓦台が機能していないという不幸は、換言すれば無政府状態であり、そのうえ、在韓米軍撤退,THAAD展開反対を唱える親北派の文候補が、いまのところ最有力の次期大統領候補だから、おして知るべしである。
            経済はおもてむき繁栄しているかにみえて実態は高利貸し、闇金融の世界。不動産バブルは空前の規模で破裂しているのに、ヤミ金融が支えている。
            これが「外華内貧」の実態だ。
            韓国経済を「漢江の奇跡」だと騒がせた財閥は、軒並み崩壊しているというのが真相であり、そのうえに中国の凄まじい嫌がらせが被さって、絶望という名前の未来が、そこに見えてきた。
            権力と財閥の癒着は歴代政権の特質だから、想定の範囲であるのだが、朴政権の場合、実姉、実弟と絶縁しているので、「他の親戚も青瓦台に寄せ付けない」。このめに、妖しげな女が出入りした。
            「なぜ韓国の権力者は同じ種類の失敗を繰り返すのか。(中略)かれらの欲望には際限がない」からであると室谷氏の解説は一刀両断。
            「かれらは有卦に入ったら、もうブレーキが効かない。韓国型の学校教育は人を自信家に育てる。誰もが自分は尻尾を捕まれないと過信するのだろう」
            それが際限のない賄賂要求となり、経済構造が闇金融と賄賂で汚され、国のために尽くす、国のために死ぬという発想が生まれない。
            この危機を救うのは軍のクーデタしかないが、軍が腐敗しており、朴正煕のような憂国の軍人は絶無、朴は日本の軍事教育をうけていたからクーデタが出来たのだった。
            評者(宮崎)がもっとも知りたいのは、この国が崩壊したら、難民が日本に押し寄せることになるが、それはシリア難民の比ではないだろうに、日本ものんびりと韓国の崩壊に手をこまねいて眺めているだけなのだ。
            このほうが怖いのではないか。

            posted by: samu | 書評 | 17:05 | - | - | - | - |
            書評『孔子を捨てた国 現代中国残酷物語』(飛鳥新社)福島香織
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              宮崎正弘 書評
              中国に敵対するISを政治的に逆利用し、ウィグル族弾圧を正当化
              ISが武器を欲しがれば、テロリストに中国は平気で売るだろう

              中国各地に孔子廟がある。日本にも湯島、長崎、神戸、横浜。。とりわけ宏大な孔子廟は佐賀県多久市にある。
              中国での孔子廟参詣者は、合格祈願の親子くらい。あまりに少ないので静かだから受験生が勉強に来ている風景は、日本の図書館のようでもある。
              評者(宮崎)も、中国各地でこれはという孔子廟をかなり見学したことがあるが、ハルビンのそれは宏大な境内に参詣者が三人ほどしかおらず、また広東省の北部の街、潮州では美しい庭園、のんびりした境内に参考書を暗記する若者の呻くような声が聞こえた。
              いきなり余談だが、潮州での神様は孔子ではなく、李嘉誠である。この香港最大財閥のボス李嘉誠は潮州出身で、土地の人は彼にあやかろうと神棚に写真を飾るように街のいたるところに李嘉誠の写真があるのだ。
              孔子がこころの拠り所だというのは嘘で、人民は孔子なんぞ信じていない。
              その中国が世界各地に道徳と中華文化を普及すると言って、「孔子学院」を建て、さらに「孔子平和賞」を設定してノーベル平和賞に対抗した。
              前者はカナダで米国で抗議運動が興り、後者は初回受賞の連戦がボイコットし、日本の村山富市も遠慮した。
              文革の最中、人々は殺し合い、その人肉を大鍋に放り込んで食した。食人の風習をあますところなく描いたのは作家の鄭義だった。彼は米国へ亡命した。
              いま臓器狩りが闇のビジネスに化け、臓器移植手術は年間十万件。
              あるとき、南京の女子学生が誘拐され惨殺されてバラバラ死体で見つかったが、臓器は発見されなかった。死亡推定時間直後に近くの病院では臓器移植手術が行われていた。具体的には犠牲者は習愛育という、血液型が「A。Rh陰性」だった。これは「パンダ血液と呼ばれる希少な」血液だったゆえに、同じ血液側の臓器移植希望患者の注文があり、マフィアに狙われたのだ(233p)
              まさに生き地獄。
              だから、こんな国で出産したくないと香港へ、米国へ、最近は妊婦の入国に五月蠅くなったので、サイパンへ向かう。
              「民主中国」という宣伝雑誌があるが、実際の中国では女性権利が蹂躙され、迫害と拷問、臓器売買、カルト、凶悪事件の頻発。大事故の隠ぺい。
              突撃精神が旺盛な福島香織さんは、現場に潜入し、突撃取材を繰り返し、噂の裏を集めてきた。その生々しい実態報告が、本書である。
              どれほど残酷で非情なひとびとが寄せ集まった生き地獄であるかを、わたしたちは追体験できる。

              本書には様々なことが書かれていて、それぞれが身の毛もよだつ現実であり、あとは本書にあたっていただいた方が良い。
              ひとつだけ、特筆紹介しておきたいのは「ISと中国の『もちつ、もたれつ関係』」である。
              ISはイスラムであり、中国はイスラム教徒を弾圧する国であり、とくにISの戦闘員はウィグル系、トルコ族系が多い。つまり水と油なのであるにも拘わらず、ISはなぜ中国をテロの標的にしないのか。
              ISの大口資金提供者は中国である。ISの武器も26%が中国製である。裏で繋がっている。
              それは「中国が投資しているシリア・テリゾール油田で、ISの手に落ちた」。だが、中国のメディアは伝えていない。生産される原油は本来、中国のものであるにも関わらず、手をださないのは何らかの密約があるからだろう。
              もうひとつのメリットは、ISが欧米と戦うという文脈で、中国はウィグルの独立は運動をテロリストと宣伝し、弾圧を正当化できるからだ。
              「ISの勢力拡大は、西側諸国に中国がこれまでやってきたウィグル族弾圧がテロとの戦いであるという大義名分を認めさせ、同時にISに逃げ込んだウィグル族を、中国側が手を汚すまでのなく、米国の爆撃で殺されるか、脱走兵としてIS側に処刑される機会」となっているからである。(103p)。
              髪の毛が逆立ちするほど恐ろしい、残酷で非情な民族は、したがって尖閣諸島を盗むことくらいなんとも思っていないのである。
              中国はISに武器を売るだろう。臓器の注文があれば、人を殺してでも臓器を売るように。

              posted by: samu | 書評 | 09:54 | - | - | - | - |
              書評/『米中もし戦わば』ピーター・ナヴァロ著 赤根洋子訳
              0

                宮崎正弘/書評
                トランプのブレーンが解説する野放図な中国の野心
                トランプのぶれない中国批判の源泉は、この本にあった


                中国脅威論の決定版のひとつが本書である。
                オバマ大統領は誰にそそのかされたのか、軍事的知識に乏しく聯略的判断が不得手のため、敵と味方を取り違えている。ロシアを敵視して、ハッカー攻撃の犯人だと証拠を挙げずに断定し在米のロシア人外交官35名を追放した。
                プーチンはこの措置に報復せず「次期政権の出方を待つ」と余裕を見せた。
                フランスの戦略思想家レイモン・アロンに有名な箴言がある。「正義が統治する社会を定義するより、状況を不適切と非難することは易しい」
                そのトランプは『ツィッター大統領』と呼ばれ、記者会見を滅多に開かず、逐一のメッセージを自らが書き込むツィッターで、政策のヒントを繰り出してきた。既存のメディアを無視する遣り方に米国のジャーナリズムは慌てた。
                政治に必要な即効性の武器がネット社会では変革していた。トランプは時代を先取りしていた。
                そしてトランプは「オバマやヒラリーに比べたらプーチンのほうが賢い。馬が合いそうだ」と強烈なメッセージを発信した。
                トランプはしかし、中国に対しては強硬である。
                その発言の数々をフォローすると、どうやらトランプの情報と分析の源泉が、この本にあると判断されるのである。

                ナヴァロはまず、中国の軍事戦略を緻密に検証してこう言う。
                「中国はソ連とはまったく異なるタイプの軍事的競合国である」
                「このままではアメリカは中国に(少なくともアジア地域で)『降参』と言わざるを得なくなるかも知れない」(50p)という危機感を抱いている。
                最大の脅威とは核戦力や、ミサイルの数や、艦船、空母の員数や能力ではなくハッカー攻撃力である。
                「平和にとっては不都合なことに、中国ほどアグレッシブにサイバー戦争能力の増強を図ってきた国はない。また、平和で貿易の盛んな時代にあって、中国ほど積極的にサイバー戦争能力(の少なくとも一部)を展開してきた国もない」(121p)

                ロシアのハッカー能力より、中国のほうサイバー攻撃で勝っているのに、オバマはなぜロシアだけを問題にしたのかが問題だと、この行間が示唆している。
                中国にはアルバイトを含めて200万のサイバー部隊がある。
                「もっとも悪名高きサイバー部隊はおそらく、上海・浦東地区にある十二階建てのビルを拠点とするAPT1部隊であろう。APTとはアドバンスド・パーシスタント・スレット(高度で執拗な脅威)の略語で、コンピュータネットワークを長期間攻撃することを意味する。(中略)。中国人ハッカー達がこうした産業戦線で盗もうとしているのは、大小の外国企業の設計図や研究開発の成果、特許製法といったおきまりのものだけではない。彼等は電子メールから契約リスト、検査結果、価格設定情報、組合規約にいたるまでありとあらゆるものを傍受している」(123p)

                そのうえ、中国のサイバー部隊には第三の戦線があることをナヴァロ教授は指摘している。
                「配電網、浄水場、航空管制、地下鉄システム、電気通信など、敵国の重要なインフラへの攻撃である。これには、民衆を混乱させるとともに経済を壊滅させるというふたつの目的がある」(124p)。

                ともかくアメリカは「中国製品を買うたびに中国の軍事力増強に手を貸している」というあたり、まるでトランプのツィッターから放たれたメッセージと読める。
                まさに中国と商いを拡大するごとに日本企業も中国の軍拡に手を貸してきたのだ。永田町や霞ヶ関の人たちよりも、この本は大手町あたりに本社を置く日本企業幹部に読んでほしいと思った。
                 

                posted by: samu | 書評 | 11:37 | - | - | - | - |
                書評『こんな朝日新聞に誰がした?』(ワック)長谷川煕 v 永栄潔
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                  宮崎正弘/書評
                  日本の知性を台無しにしたアジビラ新聞(朝日)
                  なぜ、このようは偽善体質の紙面に継続しているのか?

                   

                  先週も下関でビジネスホテルに泊まったが、フロントに積んである「無料」の新聞は『朝日新聞』だった。松山で、鹿児島で、熊本でもそうだった。
                  国内線では新聞が配給されなくなったが、日経の国際線で乗客が要求するのは日経か、スポーツ新聞である。
                  そうか、誰もが朝日を購読するのをやめたらしい。押紙(おしがみ)の結果、販売店が一部でも読者を増やそうと逞しい努力をして、ビジネスホテルに積み上げても、宿泊客がそれで朝日を読み始めるという効果には結びついておらず、実売部数は劇的に減り続けている。
                  現場の悲鳴が本社のデスクには届かず、あいかわらず『平和ぼけ』「左翼リベラル」の呆け記事を書いている。頭と足の乖離!
                  もっとも評者(宮崎)とて、大学時代は三年間、朝日を配り奨学金を受けた口だが、朝日を読まなくなって半世紀近く、時折読むとかっとなることがある。
                  この本の著者ふたりに関しては紹介の必要がなりだろう。ともに朝日の記者を経て朝日を弾劾するかのような鋭角的批判を展開され、朝日嫌いの読者ばかりか、ジャーナリズム全般に深甚な影響を与えた。
                  朝日新聞の記者のみならず、おそらくは全メディアに、静かに浸透している。口には出さないが猛省が起きているようである。
                  にも関わらず吉田証言事件以後も、朝日は「アジビラ」なのである。この体質こそ、問題である。
                  ふたりが哄笑する場面がある。朝日批判の著作をだした途端、年賀状がこなくなった社友、OB、元同僚がたくさんいるというのだ。
                  以下、本書の内容は見出しで一目瞭然である。
                  朝日は『マルクス主義結社だ』
                  朝日は『日本のプラウダ』だった
                  朝日に『左翼』でない記者はいるのか
                  朝日は『歴史に学ばない』
                  朝日は『虚報』『誤報』を繰り返す
                  朝日は『GHQチルドレンだ』
                  朝日は「戦後民主主義の優等生」か? 等々。たいへん愉快には読んだものの、読後感はなんだか虚しい。

                  posted by: samu | 書評 | 10:38 | - | - | - | - |
                  書評『呆れた哀れな隣人・韓国」(ワック)加瀬英明 v 呉善花
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                    宮崎正弘/書評
                    韓国の現状はシャーマニズムが支配している
                    「不思議の国のアリス」のように未成熟、異質、不可解

                    韓国通のふたりが縦横無尽に韓国の不条理を俎上に載せて語り合い、問題点を切り尽くした。
                    このふたりの共通点がある。
                    第一に呉さんは当然としても、韓国を知り尽くしていることだ。加瀬さんが韓国に通い出したのはハーマンカーン『漢江の奇跡』の事前事後調査などで、ときに日帰りの出張もこなした。
                    知り尽くしているからこそ自信をもって断言できる韓国は「哀れ」という一言かも知れない。
                    振り返れば加瀬氏の韓国論は数多く、その昔は『誰も書かなかった北朝鮮』も書かれ、『醜い韓国人』も監修された。後者は韓国で発禁となったばかりか、呉さんの入国拒否に先立って、加瀬さんもまた入国禁止となった。
                    第二の共通点は、そのことで、ふたりとも韓国に入国禁止となっていることだ。
                    産経記者を裁判にかけたり、言論の自由もなければ、裁判、つまり司法権の独立もない、やっていることは李王朝の独裁、事大主義、政治のダッチロールが現代でも継続されているという、おかしな国である。
                    この対談は『歴史通』に十回にわたって連載されたシリーズを体系的に編集し直して、一部加筆修正されたものだ。そういえば過去に読んだ箇所があって記憶回路に蘇った。

                    さて冒頭から重大な指摘がある。
                    それはシャーマニズムが、韓国政治を支配しているという恐るべき前近代的風習である。
                    「李氏朝鮮末期に国力は衰退し、経済も困窮状態にありました。そうしたときに西洋列強諸国が進出し、日本も近代化を強く求めました。そのような不安な社会状況の中でミン妃はことある毎にシャーマンの助言を受けていたのです」
                    こう指摘する呉女史は「シャーマンを宮廷に住まわせ、頻繁に祭儀を行っていました」と続けている。
                    しかも朴権恵大統領も側近との接触を好まず、シャーマンの助言を頼っていた。
                    「ミン妃のいきすぎたシャーマンへの傾倒が、国を狂わせ、ついには国を滅ぼすことにまでつながっていった」のだが、「現在の韓国の混乱は当時と軌を一にしていると思わずにはいられません」。
                    と呉さんは嘆くのだ。
                    一時、韓国メディアでは『呉善花は日本の謀略機関がでっちあげた評論家で、実在しない』と言っていた。しかし実在がばれると入国拒否にしたり、最近は『安部首相を背後で操る黒幕』と書いている。
                    『朝鮮日報』が「極右・呉善花、安倍総理と夕食会に参加」と大きく報じたのだ。
                    最後に加瀬氏は、文学的寓話にたとえて、韓国をこう言う。
                    「『落ちる、落ちる、いったい底があるのだろうか?』。少女アリスが野原で遊んでいるときに、深い穴に落ちてしまう。底に着いたときに、すべてが逆立ちになっている。『不思議な不思議な国』が拡がっている」
                    なぜ韓国がアリスのような不思議な国なのか、それは『未成熟で』「あまりにも異質で、不可解で」。想像を絶する文化、マナー、人生観をもつ国だからである。
                    じつに語り口がユーモラスで、感情を露わにせず、諭すように、しかし鋭角的に韓国の暗部を照らした。読後感は、やはり『呆れるばかりに哀れな国』ということだった。
                    ▼□◎◇▽◎◎◎□□◇
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                    宮崎正弘/書評


                    高度情報社会がつぎに行き着く先になにがあるのか
                    主知主義の限界をしらない傲慢な知性がむしろ失敗を産むだろう

                    小山和伸『無知と文明のパラドクス』(晃洋書房)
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                    経済学の泰斗、小山和伸教授が永年の哲学的思考の成果を世に問われた。
                    本書はいろんな意味からも革新的な著作である。経済文明発展史の体系化を、主知と無知という、ちょっと想定しずらかったアングルから照射しなおし、AI(人工知能)の文明が行き着く先を真剣にかつ深刻に議論する。
                    骨格をなす小山教授の考え方はこうである。
                    「人類の知性が文明を創ったとする主知主義を排して、むしろ無知な人間が無数のランダムな試行錯誤を重ね、たまたまうまくいった稀な成功例を、周辺の人々が無批判にまたは盲目的に模倣することによって、多様な文明が生まれた」(中略)「人間の合理性には極めて大きな制約があるという、合理性の限界である」
                    はなから既存の哲学や文明史家に挑戦的だが、学術的に冷静に逐一の例を検証してゆく。
                    大雑把に人類史をふりかえっても、60万年前あたりが起源とされる。第一の波は、一万年前の農牧畜生活で、第二の波が工業社会の実現である。産業革命がもたらし、現代は『第三の波』すなわち情報化社会である。
                    大事な留意点は、「第三の波である高度情報化社会の出現によって狩猟採集や農牧畜業、あるいは工業がなくなってしますわけでは決してない」のであり、むしろ「高度情報社会は工業化社会の進歩に伴う危機を解決するために、やむを得ず試行錯誤の結果生み出されてきた革新である」という認識である。
                    英国の産業革命でも蒸気機関車がはしる道筋にはのんびりと農耕作業にいそしむ田園風景があり、多くの農民が普遍的な生活をしていた。
                    しかし高度情報化社会は政治、経済、投資、生産、軍事の局面で、想定外の変化をもたらした。
                    米国大統領選挙はツィッターの論戦で、トランプが勝利したともいえる。トルコのクーデターを阻止したのはエルドアン大統領が携帯電話、ツィッターを駆使した情報戦の巧みさが奏功した。
                    逆にチュニジアから起きた「アラブの春」は、小型通信機、携帯電話の写メール、そして無数のユーチューブなどによって無知な大衆が直接行動をとった結果であった。
                    「少し前だったら、とても知り得ないような微細な情報を、高度情報化社会ではいつでも誰でも、詳しく知ることができる。多様な機能を備えた携帯電話やスマートフォン、ipodやiPadは、強大な情報を瞬時に収集し処理し、そして伝達する小さな怪物である」。
                    チュニジアでベン・アリの独裁政権を転覆させ、つぎにリビアの独裁者を葬った「アラブの春」の一連の政変劇のように、発火点となったのは微細な事件だった。
                    ところが、「瞬時にして世界中の人々がその詳細な情報を、リアルタイムで共有することが出来る。その情報を共有する膨大な数の人々の間に、怒りや不安や称賛を呼べば、たちまち大規模なデモが起きたり、株価や人気の暴落や暴露が起きたりする」のである。
                    だが「計画の挫折や変更は世の常態」であるとする小山氏は、主知主義の限界、合理性の限界を指摘され、次のように書かれる。
                    「たとえ人間社会の因果連鎖を極端に単純化して、無理に数理モデルを創ったとしても、そのモデルを以て、現実社会の未来を先験的に予測することは、もはや絶望的に不可能な試みである」
                    本質とは何か?
                    「こうした人間社会や数理モデルで表現、記述して、そのモデルを数論理的に解いて未来予測をするといった無理なアプローチが、現実の説明力に限界が既に明らかであるにも拘わらず、なぜかくも飽くことなく試行され続けるのか」(中略)「その根本原因として、主知主義の幻想がある」のではないか。
                    やや難解でアカデミックの文章が重なるとはいえ、本質的な文明論であり、おおいに知的刺戟を受けた。

                    posted by: samu | 書評 | 10:37 | - | - | - | - |
                    書評『アメリカが隠しておきたい日本の歴史』(ハート出版)マックス・フォン・シュラー
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                      宮崎正弘/書評
                      アメリカ人は戦前の日本が残虐だったと信じ込んでいる
                      アメリカが日本を文明国に作りかえたなどと嘘宣伝を繰り返しているが。。。


                      英和対照の歴史入門テキストのような仕上がりである。
                      さきに英語で説明があり、そのあとに日本語が続く。日本で42年も暮らしている著者だからこそ、多くの人々と過去の論争経験を生かした表現が頻出する。つまり、どうしたら説得できるか、あるいはどうしても説得できなかった難点は、どこにあったか、その微妙な勘所をうまく衝いている。
                      たとえば、戦前の日本軍は残虐だったのか、という設問に、こういう記述がある。
                      「アメリカ人は、以前日本はとんでもなく残虐な国だったが、優しいアメリカ人がその日本を半文明国に作りかえてあげた。それが真実であると主張します。そして、アメリカが日本をよく見張っていないと、再びアジアで暴れ回るだろうと考えている」
                      真実はあべこべ、建国前後からインディアンを虐殺し、フィリピンを植民地化し、日本に無差別虐殺をおこなったのはアメリカだった。
                      著者のマックス・フォン・シュラー氏は海兵隊出身の偉丈夫。もっか結婚式の牧師を務める傍ら、日本人に『アメリカが隠しておきたい日本の歴史』を説かれてきた。
                      近年とみに外国人による歴史の真実を蘇らせようとする試みが盛んとなったが、その口火を切ったのはヘンリー・スコット・ストークス氏、つづいてケント・ギルバード氏である。
                      もとよりアジア人では黄文雄、ペマ・ギャルポ、石平、呉善花の各氏が大活躍され、さらに最近は骨太の楊海英氏が出現した。
                      これからが花盛りとなる。
                      基本的に共通しているのは憲法の押しつけ、大東亜戦争評価がアメリカの仕組んだ東京裁判史観にあり、民族固有の歴史、文化、その尊厳がふみにじられていることに日本人になりかわって、憤怒の呼びかけをしているポイントにある。
                      本書は英和対照のテキストでもあり、歴史を難しく論じないで、平明に説いている特徴がある。
                      英語は難解なボキャブラリーが避けられているため、高校生ていどでもよくわかる。海外へ留学する学生も増えている昨今、せめてこれくらいの説明を英語でおこなうには、格好のテキストにも仕上がっている。

                       

                      宮崎正弘/書評 
                       苦節三十年、台湾本省人の悲願がようやく実りつつある
                      「『中国は一つ』には縛られない」とトランプの爆弾発言まで

                      ♪淺野和生編著『民進党三十年と蔡英文政権』(展転社)

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                      最初は地下運動だった。創設は秘密メンバーで、戒厳令下に民進党は結党へ向けて密かにスタートした。
                      蒋介石国民党の独裁時代、野党の存在は許されていなかった。台湾は蒋介石外来政権の体制下、言論の自由は封じ込められていた。
                      70年代後半からアメリカの圧力もあって、緊張緩和が進み、このころの台湾は治安もたいそう安定しており、夜中まで飲み屋も開いていた。台湾独特の文化がかたちづくる、台湾版銀座=『酒家』も繁盛していた。驚いたのは街角で「党外雑誌」が売られていたことである。
                      国民党を批判した書物がおおっぴらに売られていたのだ。
                      表面的に違法だから取り締まりの対象だが、警官も見てみないふりをしていた。書店を覗くと、カーテンで仕切られた奥の部屋には『発禁書』が並んでいた。日本語の書籍も輸入が禁止されていたのに、夥しい日本からの書籍があった。
                      これらは評者(宮崎)が直接、台湾で目撃したことで、仕事のため、しょっちゅう台湾へ行っていた時代である。本省人の人々と会うとおおっぴらに蒋経国を批判していた。獄中にあった独立分子も釈放される措置が次々にとられた。
                      88年に蒋経国が急死し、李登輝が総統代行となる。
                      そして1986年9月28日、台北の円山飯店で「民進党」が合法的に結党され、本格的な政治活動が始まる。長い道のり、外国へ亡命していた独立運動の活動家らも、陸続として台湾へ帰った。
                      『民主進歩党』という党名を提案したのは謝長挺である(後年、行政院院長=首相、08年の総統候補、現駐日台湾大使(台北経済文化代表処代表))。
                      謝は、そのとき『民主的包容、進歩的取向』という理想を表す十文字が念頭にあった。
                      はじめての民主選挙による総統選挙は1996年だった。
                      民進党は独立運動のカリスマ膨明敏を擁立し、李登輝に反感をもつ国民党反主流派は林洋港をたてて臨んだ。無所属からも王履安などが立候補したが、結局圧倒的過半で、李登輝が当選した。
                      李登輝は以後、静かに、しかし決然と国民党の古い体質を変え、蒋介石時代の独裁のシステムを破壊していく。これを李登輝の「千日革命」という。
                      台湾に本格的な民主化が始まり、2000年には国民党の分裂で「漁夫の利」を得て陳水扁が総統となった。2008年には馬英九に奪回され、しばし民進党は「冬の時代」を送った。
                      馬英九は外省人であり、急速に北京に近づき、独立路線を消した。
                      雌伏八年、2016年1月、蔡英文は圧倒的支持を得て、国民党を破り、また議会でも民進党がはじめて多数派となった。
                      72年の日華断交以来、民間交流しかなかった日本外交に大きな『変化』が起きた。
                      「蔡英文の当選が決まった1月16日夜に、岸田外相が『基本的な価値観を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する重要なパートナーであり、大切な友人』と台湾を評し、『祝意』を表した」(66p)
                      しかし絶対安定多数を獲得した民進党であるにもかかわらず「蔡英文は、『改革を支持するすべての人たちと一致団結』するため、民進党で権力を独占せずに、すべての力を結集する政府を目指した」
                      謝長挺が提唱した「民主的包容」のキャッチフレーズが蘇った。
                      とはいえ蔡英文政権は『一つの中国』に就任演説では言及しなかった。北京の度を超した罵倒がつづき、中台の政治的交流は頓挫したが、それは台湾民衆多数が望むところであり、大陸から台湾への観光客は激減した。
                      そして、大変革の波が米国からやってきた。
                      トランプ次期大統領は蔡英文の祝賀電話に応じたばかりか、「中国にアメリカは指図されない。『一つの中国』政策には縛られない」と爆弾発言をするに至ったのである。
                      過去三十年の動きを、多角的に検証したのが本書である。

                      posted by: samu | 書評 | 10:32 | - | - | - | - |