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「米中百年戦争」が開始された/宮崎正弘2018.07.15 Sunday
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かくて「米中百年戦争」が開始された
関税による貿易戦争は五十年つづく、経済史未曾有の大戦になる
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トランプ大統領は、決意を翻さなかった。2018年7月6日を後世の歴史家は「米中百年戦争が開始された」と書くだろう。中国からの輸入品に25%の高関税を課して、過去の損失分を取り返すという報復的な手法は、単純なバランス上の問題ではない。
米国からみれば、世界のヘゲモニーを中国には渡さない、という戦略的決意の表明であり、繰り返し述べてきたように、商いレベルの発想ではないのである。
潜在的な米国の目標は中国のBRI(一帯一路)と[MADE IN CHINA 2025]の実現を阻むか、あるいは大幅に遅延させることにある。
WTOに加盟させれば、ルールを守り、中国が経済的に豊かになれば、民主化が達成されるとした米国の読みは真っ逆さまに外れた。
WTOのルールを何一つ守らず(外資参入条件も、金融市場の整備も、変動相場制への移行も)、欧米から先端技術を盗み出して創ってきた模造品も、世界のハイテク競争に伍せるほどの高いレベルに達し、同時に民主化に背中をむけて、デジタル全体主義国家を実現した。
これらは欧米ならびに日本、インド、アジア諸国の価値観とも巨大な懸隔がある。だがアセアンやインド経済圏の多くも中国の経済的軍門に下って、米国との絆を薄めてきた。米国にとっては由々しき事態の到来だった。
7月6日午前零時を期して、関税率の適用が開始され、中国はただちに応戦した。米国からの輸入品に25%の関税を課す。これは中国の消費者にとって、大豆の価格が上がればインフレになる。豚肉もトウモロコシもあがる。中国のメンツどころではないはずだ。
▲ペロポネソス戦争は半世紀、ポエニ戦争は1世紀以上続いた。
「米中貿易戦争は五十年続くだろう」と中国のエコノミストの一部も予測をしている。
アテネとスパルタの「ペロポネソス戦争」は二次にわたり、第一次(BC460−445)は混戦、第二次(BC431−404)はスパルタの勝利に終わり、ペルシアを巻き込んで、結局はマケドニアの台頭を促した。世界の文明の発祥といわれたギリシアの国力は弱まり、やがて衰退に向かった。
ペロポネソス戦争は54年続いたのだ。
ローマがカルタゴを滅ぼした「ポエニ戦争」は三次にわたり、第一次(BC264−241)はシチリアをめぐり、第二次(219−201)では猛将ハンニバルがローマに迫った。第三次(149−146)でカルタゴは、今日の日本のように無防備で戦って滅ぼされた。じつにポエニ戦争は118年続いた。
「米中百年戦争」は、いつを持って始まりとするかは後世の歴史家が算定するだろうが、シナ事変から中華民国支援を開始し、第二次世界大戦以後、とくに朝鮮戦争以後、敵対関係となった米中関係を「第一次」と見るならば、現在は貿易を巡っての「第二次米州戦争」であり、ローマと戦ったカルタゴのハンニバルの猛追こそは、BRIと[MADE IN
CHINA 2025]であり、おそらく中国の負けとなるだろう。
しかしその後も膂力を失わず、中国が臥薪嘗胆を果たすとするならば、米国の衰弱もまた自明の理であり、EUは末期的、日本は退嬰的、インドは興隆の途上。であるとすれば、半世紀後の米中戦争がどちらに軍配があがるかは不明である。
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スポンサーサイト2024.03.27 Wednesday
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