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書評『日本は誰と戦ったのか』(KKベストセラーズ)江崎道朗
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    江崎道朗『日本は誰と戦ったのか』(KKベストセラーズ)
    矢板明夫『習近平の悲劇』(産経新聞出版)
    石平『習近平の終身独裁で始まる中国の大暗黒時代』(徳間書店)

    宮崎正弘 書評

    こういう人物が中国の『最高指導者』であることが
    中国ばかりか、世界を不幸のどん底に陥れるだろう


    矢板明夫『習近平の悲劇』(産経新聞出版)
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    日本のメディアの多くが「習近平が権力を掌握」し、「三期目を目指しているため、次期後継者を政治局常務委員に加えなかった」などと分析した。
    表面的な動きだけなぞると、そういう論考もあるのだろうけれども、習近平は権力を固めていない。事実上、軍権を掌握できていない。不満分子が山のようにいて習近平の失脚を狙っているというのが現実の状況である。
    ずばり、矢板氏は指摘する。
    「習による側近政治、恐怖政治に早く終止符を打ちたい各派閥の幹部も、『習降ろし』を始める可能性があり、習の三期目があるかどうかは流動的だ」。
    評者(宮崎)も過日、この蘭で論じたように、トップセブンのうち、習近平派は三人、団派はふたり、江沢民派が一人、そして無派閥が一人という「派閥均衡」の人事であることに留意すべきで、これでなぜ習の独裁体制と言えるのか?
    濱本良一(國際教養大学教授。元「読売」北京支局長)は、党大会に百歳になる宋平が出席した事実などを踏まえ「党指導層が生き残りをかけて生んだ総意」(『エルネオス』、17年12月号)だと分析したが、おそらくこれが真相に近い。
    一部の議論に「習近平が絶大な権力を固めた」などとするものがあるが、これは過大評価でないとすれば、おべんちゃらではないのか。
    こうした分析も、評者近作の『連鎖地獄』(ビジネス社)で展開したばかりである。
    じつは習近平はコンプレックスの固まりであり、肩書きばかりを欲しがり、過去五年間に習近平が着手した「改革」なるものは、すべて、ものの見事に失敗だった。
    政治改革はゼロ、社会は毛沢東の暗い時代へ後戻りし、経済改革には手を着けられず、ゾンビ企業を放置し、軍改革にいたっては大失敗という無惨な結果が、なによりも習近平の無能ぶりをあらわしている。
    しかも中国社会は以前よりぐんと暗くなった。
    国有企業をばっさりとスリム化すれば良いのに、それを李克強首相にやらせず、経済政策決定権を李首相から取り上げた。だから経済改革の一番の要が挫折している。
    通貨改革も、せっかく人民元がSDR入りしていても、習近平は中央銀行総裁の周小川にまかせっきりにせず、外交に到っては、いまも素人の範疇から抜け出せない。劣等感がなせる疑心暗鬼が、ほかの指導者の手柄にしたくないという狭窄な心理に支配され、中国経済の前進を阻んでいる。
    そのことに習は気がつかない。なぜなら彼の周りを茶坊主が囲んでしまったからだ。
    これからの習が直面するのは中国経済の破綻である。
    日本のメディアの多くが「中国経済崩壊論はあたらないではないか」と崩壊論を予測してきた評者らへの批判が喧しいが、中国経済はとうに破綻しているのであり、それを誤魔化しているに過ぎないのが実態である。
    だから矢板氏もこう書く。
    「中国経済は『タイタニック号』のような大きな船であるため、穴がたくさん開いたとしても沈むのには時間がかかる」(45p)。
    そこで「習思想」を党綱領に加えたからと言って、彼が毛沢東と並ぶ指導者であるはずがない。矢板氏は手厳しくこう言う。
    「習思想」なるものは「トウ小平が唱えた『中国の特色ある社会主義』の理論に『中華民族の偉大なる復興』をいった勇ましいスローガンを加えただけで、習のオリジナルは殆どなく、とても思想と呼べる代物ではない」(38p)
    中国報道に携わって北京特派員を十年、さすがにベテランのチャイナウォッチャーだけに、そのへんに蔓延る怪しげな中国観察とは次元が異なる。
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    FDRのホワイトハウスは共産主義スパイが乗っ取っていた
    コミンテルンの指令で暗躍した奴らに米国は完全に騙された

    江崎道朗『日本は誰と戦ったのか』(KKベストセラーズ)
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    多くの機密文書やヴェノナ文書が公開され、FDR政権の内部に深く静かに浸透していた共産主義のスパイらによって、外交政策が決定され、政策は曲げられ、アメリカの国益より国際共産主義運動の勝利が目的に置き換わっていた。
    都合の悪い情報は大統領に伝えず、あるいは重要な機密電報は握りつぶされ、平和工作は妨害された。ホワイトハウスがコミュニストに乗っ取られていたからだ。
    本書の題名が象徴するように、日本がアメリカとの戦争に踏み切らざるを得なくなったのはスターリンの工作により、ワシントンが判断を間違えたからであり、近衛文麿の周辺を囲んだ昭和研究会が旗振り役となってしまったのも、中枢にいた朝日新聞記者がコミンテルンの指令をうけたスパイだったからであり、ソ連のスパイだったゾルゲの暗躍が舞台裏で進行していた。
    すでにこれらの真実はアメリカでも「歴史修正主義」を呼ばれる保守系知識人の間では常識となっている。
    ハルノートは直接的挑発であるが、仕組んだのはスパイのオーウエン・ラティモアだった。
    ヤルタ会議を仕切ったのはアルジャー・ヒスだった。こうした裏面史をアメリカは長きにわたって機密文書化し、国民に触れることを禁じてきた。
    ようやく多くの知識人、勇気あるジャーナリスト等の手によって、真実の歴史に書き直されつつある。その象徴的事件はヴェノナ文書が公開されたことだった。そしてフーバー大統領の回想録「裏切られた自由」の刊行であり、日本語の翻訳も上下巻、渡邊惣樹氏の翻訳で、いま出そろった。
    だが、歴史学界とリベラルなメディアは、「アメリカを裏切った者たちを、あたかも無実の被害者であるかのようにかばい、寧ろ英雄視してきました」(280p)
    まさに日本も同じで、尾崎某が「英雄視」され、ゾル下の愛人が悲恋の主人公扱いされ、手記がベストセラーとなり、日本を裏切った政治家が過大評価されてきた。
    最後の部分で、江崎氏は「スターリンの秘密工作員」から次の箇所を引用する。
    「突き詰めて言うと、1930年代と40年代の共産主義の共謀者たちは、一部の合衆国政府高官らに助けられ、売国しながら逃げ切ったのである。
    相対的にホンの一握りの人々だけが起訴され、有罪判決をうけたが、その他大勢は合衆国と非共産主義世界を何度もモスクワに売り渡し続け、自分たちが引き起こした政策の破壊を後にして、自分たちの行為を何ら説明することなく立ち去ることが出来たのである」
    いや日本でもゾルゲに連座して取り調べをうけても戦後は知らん顔でモスクワへ通って代理人を果たした輩は多い。
    しかし、それよりも、ホワイトハウスが乗っ取られていた歴史的事実を、現在日本の状況に当てはめると、もっとゾッとしないか。
    北京の秘密指令を受けたかのような日本のメディア、外交官、学者、ジャーナリストらが、独裁国家の報道をねじ曲げ、むしろ日本を貶めるような偏向記事やテレビ番組を日夜量産しているではないか。
    FDRのホワイトハウスが共産主義スパイで乗っ取られていたという過去を、現在の日本の中枢にあてはめて比較すると、そのあまりに無惨な自主性の喪失に身震いがする。


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    なぜ習近平が訪日を嫌うのか。それは戦争を準備しているからでは?
    元中国人民主活動家だった石平だからこと言える「彼らのメンタリティ」


    石平『習近平の終身独裁で始まる中国の大暗黒時代』(徳間書店)
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    第十九回中国共産党大会と、その後のトランプ訪中、習近平の大歓待演出劇以後の状況を踏まえての中国最新報告と近未来予測が本書の骨格だが、論の展開の基調は題名の通りに、いささか暗い。
    そもそも習近平は、どのような妄想に取り憑かれて「神格化」などという途方もない破滅的行動を取るのだろう。そうした夢遊病者のような発想の源泉は何か?
    ちょっと日本人では考えも及ばない論理の組み立て方が、元中国人であったがゆえに著者は独創的解釈を披瀝する。
    なぜ習近平が訪日を嫌うのか。それは戦争を準備しているからでは? という仮説から、民主活動家だった石平氏は彼らのメンタリティを掘り下げる。
    永久政権が達成可能と錯覚するのは一種病気でもあるし、妄執でもある。
    人権派弁護士への弾圧、政敵をつぎつぎと冤罪で失脚させ、軍隊再編に乗り出した。ネット監視団を置かないと不安で仕方がないらしい。暗殺を恐れて、軍内に残存する江沢民派の根こそぎ粛清を狙うようだが、張陽(陸軍大将。政治工作部主任)が首つり自殺してように、この自決は、日本流に言えば「諌死」ととれなくもないと評者は考えている。
    しかし習近平の妄執による独裁は、次ぎに必然的に戦争を引き起こし、世界に破局をもたらすと石平氏は指摘する。
    なぜなら言論空間は窒息寸前、企業活動には党細胞が義務づけられ、外資の経営方針にも党細胞が介入すると、自由市場原理は成立しなくなり、すべてが統制経済の昔に陥れば、社会と経済は締め上げられて、不満の爆発を待つしかない。
    これをすり替えるには日本に戦争をしかけることも躊躇わないだろうと、論理的に帰結するわけだが、こうしたシナリオも実現性を全否定できないほどに、中国の現況は不気味である。
    また北朝鮮を習近平は政治の道具として活用しているのだと分析する。
    「ある意味では、北朝鮮危機のお影で習主席は、本来なら中国に向けられるはずのトランプ政権の矛先をうまくかわすことが出来た(中略)。世界に脅威を与えている北朝鮮の核が、世界の脅威であればあるほど、その脅威が現実的なものとなればなるほど、アジアや世界に対する中国の軍事的脅威は影を薄め、忘れられてしまうからだ」(181p)。
    つまり習近平の軍事的野心を隠すにも、怖れを知らないほどに世界に恐喝を続ける金正恩の核を取り除くのは中国だと宣伝して、自らは経済制裁に協力するふりをしつつも、自らの核を忘れさせ、「隠れ蓑」として活用していると指摘するのである。
     

    posted by: samu | 書評 | 09:38 | - | - | - | - |
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