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書評『トランプが中国の夢を終わらせる』ワニブックス/河添恵子
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    藤岡信勝 書評

     

    今、もっとものっている元気印の女性ノンフィクション作家、河添恵子さんの新著が出た。書名は『トランプが中国の夢を終わらせる』(ワニブックス刊、1296円+税)。25日発売でアマゾンに予約注文していたのだが、本日(15日)著者から現物が送られて来たのですぐに読んだ。以下はその感想文である。
     本書の内容をひとことで言うと、近現代の世界政治を彩る人物相関絵巻図である。登場人物の数は、ざっと200人を下らない。この中で私が名前を知っているのは、たかだか3割程度である。半世紀を生きてきた著者が、中国語、英語、日本語の3つの言語を縦横に駆使し、30年にわたって40か国を取材して回った知見がぎっしりと詰め込まれている。圧倒されるような、凄まじい情報量である。
     この中には知らなかった事実が沢山あるのだが、私はどうしても、歴史にかかわる人物に興味を惹かれる。そこで本書の中で、私にとって最も魅力に富む、男女一人ずつの人物を取り上げてみたい。
     第一は、ロイ・マーカス・コーンという名前の人物である。コーンは検事(のちに弁護士)として、1950年代初頭、「赤狩り」を推...進したジョゼフ・マッカーシー上院議員の手足としてはたらいた。マッカーシーは「共産主義のスパイが政府機関に潜入し、枢要なポストを占めている」「国務省内に57人の共産主義者がいる」などと告発し、いわゆるマッカーシー旋風を起こした。1995年に公開されたヴェノナ文書によれば、スパイ潜入の規模はマッカーシーの予想をうわまっていた。
     ところで、アメリカの新大統領トランプの執務室には、コーンの写真が飾られているという。なぜか。年齢的には19歳上のコーンは、亡くなるまでの13年間、実はトランプの顧問弁護士だった。ふたりは1日に5度は話をするほど近しい関係にあった。トランプのアグレッシブで好戦的なビジネス手法は、コーンがトランプに仕込んだものだった。「モスリムやテロリストに関する排他的な政策、歯に衣を着せぬ表現、それらすべてがコーンの受け売りだ」と証言する人もいる。だから、リベラル系のメディアは、大統領選挙戦中に「トランプはコーンの作品」と揶揄していた。
     ハリウッドは「赤狩り」の対象となったから、コーン=トランプへの憎しみは強い。著者は「我々日本人がハリウッドの怨念に引きずられ、トランプ政権の本懐を見誤ってはなりません」と書いている。マッカーシーからトランプへ、こういう反共思想の水脈があったとは興味深い。コーンについて、もっと知りたくなった。
    第二の魅力的な人物は、中国人の女性で、その名を陳香梅という。2015年の9月と10月、北京と台北で「抗日戦争勝利70周年記念行事」が開催された。その場に90歳の老婆が招待され、両岸のメディアが大きく報じた。それが陳香梅なのだが、この人は、アメリカの軍人クレア・シェンノートの未亡人で、英語名はアンナ・チェン・シェンノートという。シェンノートは、1930年代に、日本軍と戦争状態にあった中国国民党政府を支援し、日本軍を攻撃するために1940年に義勇兵をよそおってアメリカ空軍兵らを組織したフライング・タイガーの指揮官だった。ついでに言うと、このフライングタイガーの写真を載せて歴史教科書に取り上げているのは、つくる会の教科書(自由社刊)だけであることを覚えておいでいただきたい。(エヘン!)
     彼女は日本でこそ無名だが、アメリカのワシントンを拠点に、戦後の米中台外交の中枢に長期にわたり身を置いた超大物、ナンバーワンのロビイストなのだという。まさに抗日の国共合作を体現したような女性だ。では、彼女は戦後史の裏側でどんなことをしていたのか。この先は、ぜひこの本を読んでいただきたい。俗に歴史の陰にオンナありというが、歴史戦を仕掛けられている日本としては、恐るべき人物だ。
     こういう、実に面白い本なので、歴史好きの方には特にオススメだ。書名にはあまりこだわる必要はない。
     気がついた誤植を2つ。
     。毅献據璽牽弦毀棔「コーンの性的思考」は「性的嗜好」ではないか。
     ■沓哀據璽減能行から。「ナチスの迫害から逃れるためアメリカに移住したユダヤ人が、アメリカ映画産業に本格的に参入したのは1900年初頭のことで」。年代の整合性は大丈夫ですか。
     誤植は少ない。出版社はがんばってつくったようで、売り上げにも協力したい。

    posted by: samu | 書評 | 09:50 | - | - | - | - |
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