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書評『小池百合子 偽りの都民ファースト』(ワック)片山善博 v 郷原信郎
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    宮崎正弘/書評
    清新なイメージで「小池劇場」を売り込んだのはたいした度胸だが
    『悪代官』を退治するなんて印象操作の化けの皮が剥がれてきた

    都民ファーストと叫んではいるが、実質は『自分ファースト』じゃないのか。というのが、本書の骨格をなす基調のトーンだ。
    「詭弁」と「先送り」が得意技。
    真髄の政治信条は不明。結局、この女性知事は「地方自治を弄んでいる」と舌鋒鋭く、小池都政の欺瞞に迫るのが本書だ。
    最近、やたらと増えた小池都政バッシングだが、この本の著者をみれば、前の鳥取県知事と元検事。いってみれば地方自治の専門家である。
    彼女は『敵』と連続的に造りだして、メディアを逆利用して、『悪党』と対決するポピュリストを演じているが、それに自ら酔ってしまった。しかも、その酩酊度はリスキーな段階に来ている。
    「都民ファースト」なんておこがましく『自分ファースト』で自爆の道を驀進しているのではないのかと迫る片山元知事は現在大学教授だが、日頃の言説を聞いているとリベラル色が強い。決して保守でない。
    その片山氏が言うのだ。
    都民は「クリーンな政治を求めて」、彼女を撰んだが、「小池知事の政治姿勢に対して疑問の声」が強くなり、とどのつまり「肝腎の情報公開にしても『見せる化』には熱心でも、真の『見える化』からはほど遠い」のではないかと強く疑念を呈している。
    しかし、彼女を撰んだ本当の理由は対立候補が「バカとアカ」しかいなかったから他の選択肢がなかったからじゃないの?
    一方、郷原氏は「都民にとって小池知事に期待する部分が大きいものの、豊洲移転問題を政争の具にすることに違和感を覚え始めた」のが都民の大多数であり、都民ファーストが実際の選挙では票に結びつかないだろうと示唆する。
    片山氏曰く。「重責を担う都知事が、スター性に酔ってはいけない。政党を立ち上げ、都議会選挙に臨む時間など本来ないはずだ」
    そして郷原氏曰く。
    「『安全』を『安心』の問題にすり替え、暴走する小池都知事。このままでは東京都の『地方自治』は遠からず崩壊する」と。
    小池劇場批判の先陣を切ったのは桜井よしこ氏と有本香氏だが、この都政批判の出版ブームはまだまだ収まりそうにない。『新潮45』など、ほとんどが小池百合子都知事批判である。
    こうなると、本選挙で何割の都民が投票に行くのかな?

    posted by: samu | 書評 | 22:44 | - | - | - | - |
    書評『父の謝罪碑を撤去します』(産経新聞出版)大高未貴
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      宮崎正弘/書評

       


      偽証、フェイクで日本を貶めた吉田清治とは何者だったのか?
      慰安婦問題の原点「吉田清治」長男の懺悔と悲壮な独白

      嘗てオートバイを駆って、世界一周女性単身の冒険をなしたエネルギー溢れる大高さんが、保守ジャーナリズムが未踏の領域に力一杯斬り込んだ。
      そのフットワークの力強さ、感受性の鋭さ。好奇心が本書に充ち満ちている。
      いまさら言うまでのないが、吉田清治は日本を貶めるために「創作」に熱中し、あり得なかったことを次々とでっちあげ、朝日新聞と「共闘」して我が国に名誉を著しく汚した張本人である。
      しかし朝日新聞が、この嘘を自ら謝罪したことにより、吉田証言なるものが、かえって注目を集めた。朝日新聞は、購読者数を激減させ、経営がふらつき、東大の就職希望者がほとんどいないというほどの惨状に追い込まれた。
      長男の悲壮な決意とは、
      「父が発信し続けた虚偽によって日韓両国民が不必要な対立をすることも、それが史実として世界に喧伝され続けることも、これ以上、私は耐えられません。いったい私は吉田家最後の人間としてどうやって罪を償えばいいのでしょうか。せめてもの罪滅ぼしに決断したことがあります」
      それが吉田清治の謝罪碑の撤去である

      さるにても吉田清治なるは、本当はどういう人間で、いったい何を考えていたのか?
      本書はその生い立ち、生活ぶり、戦後の妖しげな足跡、その晩年のくらしぶりに長男の証言をもとにぐいぐいと真実に迫る。
      吉田清治は結構な文才があり、応募作で懸賞金を手にしたり、週刊朝日の手記で佳作に入選したりした経験があった。
      その多少の文才が、かえって作家になれるかもという幻影を追って、その夢想に取り憑かれて就職もせず、ぶらぶらとしていた。まさしく戦後の「知の荒廃」という時代の背景を鮮明に連想させてくれる。
      下関時代に吉田は共産党から「市議会選挙に立候補し落選している」(72p)という過去があることも分かった。
      また済州島の惨劇を吉田清治は書いたが、長男は作りごとだと明言している。
      「父は済州島には行っていません。それは父から聞いています。それで、父は済州島の地図を見ながら原稿用紙に原稿を書いていました」(99p)
      衝撃的な証言はまだまだ続く。
      「慰安婦慰霊碑建立」の活動に立ち上がったある女性は、韓国からイ貞玉なる韓国人女性(運動の中心人物)の訪問を上、国会議員会館を訪ねると、
      「土井たか子の秘書が(イに)『いつもの活動費』と言って、百万円ほどの封筒を渡したこと」があるという。
      直後、河野談話が発表された。
      長男も次男もソ連に留学しており、大田薫の推薦があって、逆に留学記録を書いたためにソ連から追放され、帰国後も公安の頻繁な接触があったという後日談も加わっている。
      舞台裏の闇に繰り広げラテいる日本を貶める策謀に一端が、本書を通じて明らかになった。
       

      posted by: samu | 書評 | 09:26 | - | - | - | - |
      書評/『知の湧水』(ワック)/渡部昇一
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        宮崎正弘/書評

        日本が文化的先進国である一つの象徴は『神学大全』の翻訳である
        英国、仏蘭西、伊太利亜などでしか全訳は出版されていない現実


        渡部昇一『知の湧水』(ワック)
        @@@@@@@@@@@@@@

        「希代の碩学、珠玉のエッセイ」とあって「知の巨人、ラストメッセージ」という文字が本書の帯を飾っている。
        それにしても湧き水のごとく、次々と英知が現れてくるという碩学が世の中にはいるのである。知の湧水とは、じつに適切なタイトルだと思った。
        先日、イグナチオ教会で行われた氏の追悼ミサの入り口に看板があって、仏教でいう氏の戒名は「聖トーマス・アキナス」とあった。
        本書を読んで、その聖名の理由がよくよく理解できた。
        渡部氏は、このなかでドーマス・アキナスに幾多のページを割かれ、とりわけ『神学大全』について詳述されているからである。
        なにしろ、この世界一難解とまでいわれる書物の原書を氏は三回も精読された。「神学大全邦訳完成記念」セレモニーでは、氏がスピーチもされた。

        さて本書を通読したあと、印象的な既述が二ケ所あった。これは個人的な感想であるが、まずはアリストテレスとプラトンの差違である。
        「この二人の大哲人の切り口は全く違った方向に向いていたと言える。つまりプラトンの切り口は『東』に開かれており、アリストテレスの切り口は『西』に開かれていた。プラトンの思想は東洋にも偏在したいたが、アリストテレスは西欧の中世に花開き、実を結び、西洋と特徴付ける哲学となった」(162p)。
        プラトンは「不滅の霊魂とその転生について語っている」のである。『プラトン全集 第1巻』(岩波書店)には次の言葉がある。
        「たしかに、よみがえるという過程があることも、死んでいる者から生きている者が生じるということも、そして死者たちの魂が存在することも、本当なのである」

        なぜこの箇所に評者が惹かれたかといえば、生前の氏との会話(下段追悼文『附録』を参照)に三島由紀夫の転生が話題となったことがあるからだった。

        もう一つは渡部昇一氏が子供三人、孫五人に囲まれた金婚式での感激をさらりと綴ったなかでの、次の文章である。
        そのまま引用すると、
        「子供を育てるということは大変なことである。しかしわれわれはそれをーー当時の大部分の日本人のようにーー当たり前のことと受け止めていた。しいて言えば子供で苦労することは当たり前の人間にとって『人生の手ごたえ』と感じたとでも表現できようか。子供の教育費がなかったらもっと贅沢な生活ができただろうになどとは考えなかったし、子どもがいるので生きる張り合い、働く張り合いができたというべきであろう」(引用止め)
        こんにちの少子高齢化社会への警告的な譬喩である。

        (附録)
        「渡部昇一氏を悼む/宮崎正弘」(拙メルマガ4月19日号より再録)
        (引用開始)
        「渡部昇一氏が4月17日に亡くなった。振り返れば、氏との初対面は四半世紀以上前、竹村健一氏のラジオ番組の控え室だった。文化放送で「竹村健一『世相を斬る』ハロー」とかいう三十分番組があって、竹村さんは一ヶ月分まとめて収録するので、スタジオには30分ごとに四人のゲストが待機するシステム、いかにも超多忙、「電波怪獣」といわれた竹村さんらしい遣り方だった。
        ある日、久しぶりに呼ばれて行くと、控え室で渡部氏と会った。何を喋ったか記憶はないが、英語の原書を読んでいた。僅か十分とかの待機時間を、原書と向き合って過ごす人は、この人の他に村松剛氏しか知らない。学問への取り組みが違うのである。
        そういえば、氏のメインは英語学で、『諸君!』誌上で英語教育論争を展開されていた頃だったか。
        その後、いろいろな場所でお目にかかり、世間話をしたが、つねに鋭角的な問題意識を携え、話題の広がりは世界的であり、歴史的であり現代から中世に、あるいは古代に遡及する、その話術はしかも山形弁訛りなので愛嬌を感じたものだった。
        近年は桜チャンネルの渡部昇一コーナー「大道無門」という番組があって、数回ゲスト出演したが、これも一日で二回分を収録する。休憩時に、氏はネクタイを交換した。意外に、そういうことにも気を遣う人だった。
        そして石平氏との結婚披露宴では、主賓挨拶、ゲストの祝辞の後、歌合戦に移るや、渡部さんは自ら登壇すると言いだし、ドイツ語の歌を(きっとお祝いの歌だったのだろう)を朗々と歌われた。芸達者という側面を知った。情の深い人だった。
        政治にも深い興味を抱かれて、稲田朋美さんを叱咤激励する「ともみ会」の会長を務められ、ここでも毎年一回お目にかかった。稲田代議士がまだ一年生議員のときからの会合で年々、参加人員が増えたことを喜んでいた。
        最後にお目にかかったのは、ことしの山本七平授賞式のパーティだったが、氏は審査委員長で、無理をおして車椅子での出席だった。「おや、具体でも悪いのですか」と、愚かな質問を発してしまった。
        訃報に接して、じつは最も印象的に思い出した氏との会話は、三島由紀夫に関してなのである。
        三島事件のとき、渡部さんはアメリカに滞在中だった。驚天動地の驚きとともに、三島さんがじつに偉大な日本人であったことを自覚した瞬間でもあった、と語り出したのだった。渡部さんが三島に関しての文章を書かれたのを見たことがなかったので、意外な感想に、ちょっと驚いた記憶がふっと蘇った。
        三島論に夢中となって、「憂国忌」への登壇を依頼することを忘れていた。合掌」(引用止め)。

        〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

        あの巨大津波で松島基地に係留されていた戦闘機は塩漬けになった
        奇跡の修復プロジェクトによって13機が前線に復帰した


        小峯隆生著、柿谷哲也撮影『蘇る翼 F2B津波被災からの復活』(並木書房)
        @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

        こういう物語があったこと、知らなかった。
        東日本大震災直後の2011年4月、松島基地を取材で訪れた筆者は、津波で大きく損傷したF2Bを見た。
        塩漬けの無惨な姿で、最新鋭機が転がっていたのだ。
        評者(宮崎)と言えば、あの日、福建省福州にいた。滞在したホテルで胸騒ぎがして、東京に国際電話を申し込んだが一時間通じなかった。災害発生を知り、部屋のテレビを入れると、生々しい被害状況が刻々と映し出されて驚愕した。
        東京も交通が痲痺しており、評者は上海で二日間待機し、帰国したことを思い出した。

        さて被災した戦闘機である。精密機器の塊である戦闘機を完全修復することは不可能だろうと予測された。世界中でも、そんな例はなかった。
        航空自衛隊にとって複座型のF‐2Bは、戦闘機パイロット育成のために、なくてはならない機体だ。しかもF‐2の生産は終了しており、新たに製造することはできない。このままでは日本の国防に大きな空白が生まれてしまう。
        安全保障上、由々しき問題であり、かと言って制約された防衛予算をみれば代替機の購入など夢の物語である。
        塩漬けとなったF‐2Bを復活させることはできないだろうか?
        空幕内に「チーム松島」が結成され、前代未聞の「海水漬け」戦闘機の修復プロジェクトがスタートした。

        男たちの挑戦が始まった。ついに18機のF‐2Bのうち13機が修復され、再建された松島基地に続々と帰還したのだ。
        壮大な戦闘機修復プロジェクトは、いかに実行され、成功したのか? 
        筆者は数か月かけて、航空幕僚監部、松島基地、三菱重工業小牧南工場、IHI瑞穂工場、国会議員など、多くの関係者にインタビューを重ね、このプロジェクトが関係者の熱意や努力ばかりではなく、深い洞察力に裏付けられた判断力と実行力によって成し遂げられたことを知った。
        損傷した航空機や施設、すなわち戦力をどうやって回復させるか、そのためには何をなすべきかを計画・立案した空幕の強力なリーダーシップ、予算措置など政治・財務面のサポート、そして何より損傷機の修復に取り組んだメーカーの熱い「ものづくり魂」がひしひしと伝わる感動のドキュメントが出現した。
         

        posted by: samu | 書評 | 10:31 | - | - | - | - |
        書評『中国と韓国は息を吐くように嘘をつく』(徳間書店)高山正之
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          書評/宮崎正弘

           

          『正論』の巻頭言を纏めた最新版だから、殆どの文章は読んだ記事もあるが、基軸は朝日新聞批判である。
          絶望的な馬鹿新聞を、いまさら俎上の載せて斬っても、馬鹿が治る可能性は薄いが、保守陣営のなかでさえ、記事を疑いながらも騙されているお人好しが多い。だから、本書の役割はやはり大きい。
          戦後、GHQがやらかした日本精神壊滅施策は予測以上の功を奏し、馬鹿を大量生産した。その世代は『あほー世代』として後世の歴史家が書くことになるだろう。
          そのGHQに便乗し、ときに権力に媚びて、ますます日本を貶めた朝日新聞が、こんにちまだ日本に存在していること自体が奇々怪々である。聞くところに拠れば、最近東大生の朝日就職希望組が激減したとも言うのだが。。。。

          さて本書で採り上げられている話題は全方位で、ヒラリーの陰謀から韓国のダメさ加減まで、国内的には三浦和義から少年の猟奇殺人まで。あまり詳細をここで紹介してしまうと読者が本を買わない、営業妨害になると言われそうなので、一つだけに留める。
          それはアイリス・チャンの妄言、誹謗批判の続きである。

          評者(宮崎)の経験でも南京に鳴り物入りで解説されたフェイク記念館(ダイギャクサツ記念館)の中庭に、金ぴかの像が聳えているが、これ、アイリスチャンである。
          その周りに市民がピクニックがてら弁当を拡げて「この女、誰?」と言っていたのには別な驚きもあったが、そのことは措く。
          彼女が死んだとき、香港のメディアまで、彼女を『中華民族のヒロイン』と書いた。すでに彼女のペンギンブックス「レイプオブナンキン」は、すべてがフェイクであることは、120%証明されており、いまさら、その出鱈目を指摘する積もりはない。

          問題はその後に起きた。彼女の人生が暗転したのだ。
          増長し、ハイになった彼女はクーリーの悲劇の歴史ドキュメントに挑んだのだ。アメリカの西部開拓史とはインディアンを虐殺、殲滅し、ついでにバッファローを殲滅したことだが、カリフォルニアに達して、西部まで鉄道が繋がっても、鉱山労働者不足に陥った。そこでアメリカ人は、奴隷を清国から大量にいれることにした。これがクーリー貿易である。

          おりからのゴールドラッシュ。中国人労働者は奴隷とも知らず、また使役されたあと、ダイナマイトで殺されることも知らず新大陸にやってきた。
          アイリスは、この真実を暴いた。
          フェイクの『南京虐殺』を高く高く評価して止まなかった米国ジャーナリズムが、この作品には戦慄し、そして罵倒を始める。
          百八十度の評価変えが起きたのだ。
          「あ、これがアメリカ人を怒らせたな、だからノイローゼになって拳銃で自殺したのだ」と考えていたが、高山氏も、そう結論した。
          評者は『TIME』書評欄で、信じられないほどの悪罵に満ちたアイリスへの酷評と罵倒を読んだ。
          「『歴史の裏付けもない』、『『軽率な駄作』とこき下ろした』(28p)
          高山氏は、その後日譚を綴る。
          「落ち込む彼女にこんどは米国の出版社が再起のチャンスを与えてきた。『パターン死の行進』を書いてみろ、日本の悪口をもっともらしく書くのがおまえの仕事だと。(しかし)アイリス・チャンには支那人には珍しく良心があった。調べれば歩いたのはたったの60キロ。日本軍は食事も休息も与えていた。米国人の嘘に呆れた。でも嘘はもう書きたくない。悩んで鬱になって、その果てに彼女はサンノゼ市の自宅近くで拳銃自殺した」

          posted by: samu | 書評 | 22:58 | - | - | - | - |
          書評『南洲翁遺訓を読む  わが西郷隆盛論』(到知出版社)/渡部昇一
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            書評/宮崎正弘

             

            渡部さんに西郷を論じた本があるのは納得できる。
            なぜなら氏は山形県鶴岡出身。幕末、庄内藩は?川に忠実で、三田の薩摩屋敷を襲撃し、焼き討ちにした。
            官軍と戦った「東北列藩同盟」では、会津落城後も闘いつづけ、ついに降伏したときは、苛烈な処分を覚悟していたところ、「寛大な措置を」という西郷の決断のもと、会津がやられたような非道い処分がなかった。
            感激した藩士等が明治になってから、鹿児島へ何回も通い、西郷の訓話を集めて編纂されたのが『大西郷遺訓』(南洲翁遺訓)の初版の由来である。この旧庄内藩士の本は千部印刷されて、その後、いろいろな解釈本も出回り、どれほどの影響力を後世にもたらしたか計り知れず、平成の御代においても、岩波文庫版のほか、数種類が上梓されているほどである。
            渡部氏は、このなかで幾つかの重要なポイントを指摘され、原文と現代語訳のあとに、独自の解釈を付け加えているのだが、ここでは二つのことを採り上げたい。

            第一は革命家としての西郷の陰謀である。
            およそ戦時において軍事行動に謀略はつきものであり、これを冷徹に行える者が勝利を導く。つまり英雄にはつねにダークサイドがある。
            西郷の陰謀、じつは沢山あってきりがない。薩摩藩邸焼き討ちにしても、背後で庄内藩士を焚きつけたし、公武合体から倒幕に急変するや、坂本龍馬が邪魔になったため、隠れ家を内通させたのも、西郷と考えられている。
            渡部昇一氏はこういう。
            「若き日の西郷は策略軍略に長けた大軍師、大参謀でした」。(中略)その典型が「薩摩屋敷を根城にした関東攪乱です。西郷は相楽総三、伊牟田尚平などを使って、江戸中に火をつけたり強盗をしたりして、不安に陥れ」、「江戸取り締まりの庄内藩まで攻撃したので、(報復として)庄内藩は薩摩屋敷を焼き、それが鳥羽伏見の戦いに結びついた」
            相楽ら「赤報隊」の残虐非道も、用済みとなるや、「官軍にあるまじき非道」といって処刑している。
            その良心の呵責と反省から、西郷は「遺訓」のなかに、「一事の詐謀を用うべからず」という表現を披瀝していると渡部氏は解釈している。
            もう一点が税金である。
            『租税を薄くして、民を豊かにする』というのが西郷の基本信条である。
            それは「南洲は若い頃、取りたてられて郡方書役助(こおりかたかきやくすけ)という農村を見回って村役人を指導する役目でありました。給料は四石です。(中略)十年間、この仕事をしました。すなわち薩摩藩の一番底辺の世界に直接ふれたわけです。当時、日本中どこでも百姓が過酷な年貢で苦しめられていたと思いますが、薩摩藩はとくにひどくて、元来、同情心の強い」西郷は税金問題に鋭敏で、減税をなし国力を富ますという、政治テーゼが産まれた、とする。
            全体に、やさしい解説がなされ、西郷の人となりを学ぶ本となっている。
             

            posted by: samu | 書評 | 23:05 | - | - | - | - |
            書評/『尖閣だけではない、沖縄が危ない!』(ワック)惠 隆之介
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              書評 /宮崎正弘

              なぜ沖縄は中国に操られ、米軍基地で裨益する「県民」が反対するのか?
              行政単位で最大の予算配分、飲酒過剰で長寿王国は返上

              衝撃の内容を含む新刊、恵さん渾身の力作である。
              沖縄独立を主張するグループがあるが、民族主義の純粋な浪漫主義かと思えば、これを背後で操っているのは中国だという。
              沖縄経験の長いケント・ギルバード氏によると、反米軍基地にあつまる左翼には、日当がでているうえ、殆どが外人部隊、なかに韓国人活動家も多数混ざっているそうな。
              この歪んだ沖縄独立論の横行を放置すれば、やがて沖縄の真の独立は失われ、チベットやウィグルの悲運の二の舞を演じるだろうと恵氏は危機を警告する。
              沖縄の二大メディアは極左である。不思議なことである。
              米軍基地に反対を叫んでいる『市民』とは、じつは「県民」ではない。沖縄の行政単位では、米軍基地の誘致を本心では望んでいる。
              恵さんは、その現場で或る村長から基地誘致を要請された実話も紹介している。
              沖縄関連予算は、じつに1兆2000億円にのぼるから庁舎はまるでチャウシェスク宮殿のミニチュア版のごとし。林立する豪華なマンション、ホテル。。。。。贅沢に慣れてしまって深酒をするため、長寿日本一の座から滑り落ちたのはご愛敬と言うべきだろうか。
              地元民が反米であろう筈があろうか?
              かねてからの疑問を本書はさらりと解いてくれる。
              まず国庫支出金で沖縄県には3858億円。地方交付税は3575億円。これらの普通会計のほかに『沖縄振興予算』と「防衛省関連予算」が加わる。合計の国費受取額は、なんと1兆2240億円で、県民ひとりあたり86万1000円である(ちなみに全国平均は12万円だ)。
              それなのに毎年、沖縄県知事が東京へ予算折衝にやってきて、『たかる』のである。アレレ、何処かの国の圧力団体に似ているなぁ。
              さて本書にはいくつもの貴重な情報が配置されているが、紙幅の関係でひとつだけ。
              かのペルー提督は黒船を率いて、六回、沖縄に寄港している。その時の記録が残されているが、「沖縄は事実上も、また法律上も正に日本の一部である」と断定している。
              そして「那覇には薩摩藩の旗が翻っており、守備隊が配置されている」。
              さらに琉球の貿易はすべて日本と行われており、この沖縄が清国に属することはあり得ないと結論している。
              左翼にとって、この不都合な文献は紹介されることはなく沖縄の歴史もまた『左翼ガクシャ』等によって改竄された。
              中国船は尖閣諸島の周辺海域をチョロチョロ動き回っているが、『尖閣だけではない。沖縄が危ない』のである。
              □▽◎□◇ □▽◎□◇
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              書評 /宮崎正弘

              福山隆『米中は朝鮮半島で激突する』(ビジネス社)

              タイミング良く、日本の危機管理と対応の適正な方法を提言
              なぜ米中は必然の宿命として軍事対決に至るのか、地政学的にやさしく解説


              著者は元陸将(つまり陸軍大将)、四半世紀前に、氏が韓国の駐在武官だったとき、ソウルでお目にかかったこともある。
              本書のサブタイトルは「日本はこの国難にどう対処すべきか」となっている。
              おりしも、朝鮮半島に戦雲が近づき、一隻の米空母が日本海に入った。もう一隻が横須賀あたりに、そしてあと一隻の空母がインド洋からか、地中海からか、日本海にやってきたら、本当の戦争が起こる。
              戦々恐々の北朝鮮は時間稼ぎだが、トランプも「金正恩はちょっとばかり頭が切れる男だな」(PRETY SMART COCKIE)とへんに持ち上げてみせ、空母の戦闘態勢が整うのを待つ。
              中国は介入するのか、北朝鮮に圧力をかけるのか、鵺的な覇権国家ゆえに、なにか別の企みがありそうだし、ロシアとて黙ってはいないだろう。
              いざ戦争がはじまったら日本はどうするのか?

              その問題が本書の肯綮にある。
              福山氏は、アメリカも中国も、ともにマハンの「海洋権力」という海の地政学の門徒であることが共通であり、したがって、いずれ勝負をつけなければいけなくなると衝突への必然性を説く。
              これが本書の一番の特徴である。
              なぜ不可避的に米中が軍事衝突へいたるかは、本書にあたっていただくとして、世にはびこる平和的解決論の虚妄を、実務経験的立場から、それとなく揶揄しているのだ。
              問題は日本の危機管理である。
              「核戦争にエスカレートしないようにお互いが『手加減』を加えて戦い、双方の領土・市民を直接攻撃することには慎重になると思われる。その代わり、在日米軍基地のある日本という『戦場』においては、両国は遠慮会釈なく振る舞うだろう。米軍は家族や軍属を含め、激突以前に日本から逃げ出すだろうl」
              しかし「有事に於いては日本は米国と一定の距離を維持する必要がある」と福山氏は言う。
              古典的教科書ともいえるマハンの『海洋権力史論』がいうには「海軍は商船によって生じ、商船の消滅によって消える」。つまりマハンのシーパワーとは「海軍力の優越に拠って制海権を確立し、その下で海上貿易を行い、海外市場を獲得して国家に富と偉大さともたらる力」だからだ。
              嘗て世界の七つの海を支配して英国海軍も海上交通路の要衝を抑えて、覇権を確立した。中国はそのマハンの教え通りに黄海、東シナ海から南シナ海へのシーレーンの要衝を抑え、チョークポイントに軍事施設を建設し、マラッカの先への商船の通り道のあちこちに拠点を確保しようと死にものぐるいである。
              大日本帝国華やかなりし時代、時の明治政府はドイツからメッケルを顧問に招き陸軍士官で教鞭を取らせた。それが陸戦でも日露戦争を勝利に導いた原動力のひとつとなった。
              帝国海軍は、じつはマハンを招聘しようとしていたという秘話も、さりげなく本書に挿入されている。

              posted by: samu | 書評 | 11:06 | - | - | - | - |
              書評『日本人にリベラリズムは必要ない』(KKベストセラーズ)田中英道
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                書評/宮崎正弘/

                 

                平明に、しかし強烈な田中版の「反革命宣言」 リベラリズムを根源的に徹底的に批判した爆弾

                 

                本書は痛快極まりない、壮烈な風のような読み物である。「リベラリズムの悪」を根底から暴き、的確に批判しているからだ。
                リベラリズムの残党がまだ日本にいることは嘆かわしいが、だからといって寛容であるわけにはいかない。この悪を日本から追い出そうとする意味で、本書は田中英道版の「反革命宣言」だ。
                しかも難解な語彙、晦渋な表現を一切はぶいてやさしく論じられているから、高校生でも理解できる内容である。。
                そもそも日本の哲学、思想は世界的に高いレベルにあった。文学、音楽、芸術、絵画においても、むしろ西洋人が模倣したのだ。江戸の春画、美人画に衝撃を受けてゴッホもゴーギャンも模倣から入った。「源氏物語」は世界初の恋愛小説、三島は世界的文豪だ。
                日本人が忘れていた伊藤若沖を発見し、戦後その作品を大量に収集していたのはアメリカ人の富豪だった。独特で伝統的な日本美の価値を西洋のほうが見いだしたのだ。
                日本刀の芸術をひそかに尊敬して戦後のどさくさに買い集めたのは欧米人。そういえば幕末に日本からメキシコ銀と等価交換などと詐欺の手口で大量の小判を持って行ったのはアメリカ人だった。
                戦後、左翼が意図的に否定した人々に音楽家の信時潔、画家の藤田嗣治、作家の中河與一、文芸家の保田輿重郎、ジャーナリストの徳富蘇峰らがいる。同時に左翼リベラルは福沢諭吉を意図的な誤解で評価し(近代化の祖などと持ち上げたが、福沢はナショナリトであり『文明論之概略』は自衛、軍隊強化を説いているのである)、原節子は、周囲の左翼が馬鹿に見えて映画にでることを辞めた。保田は奈良の故郷に引き籠もり、長く沈黙した。いま保田は全集がでたうえ、個々の作品は文庫版となって広く読まれ始めた。
                田中氏は言う。
                「西欧の思想を有りがたがるな」「マルクスやフロイトやフランクフルト学派にコンプレックスを抱くのは馬鹿である。
                そもそもリベラルとは『破壊思想』なのだ。
                それが分からないからグローバリズムを受け入れ、日本の経済金融政策はリベラル左翼の本質を隠した『新自由主義』とかの面妖な理論がまかり通る。悪質で詐欺的で他人をたぶらかす、国家を破壊するのがリベラリズムである。
                日本に本当のインテリが少ないのは、リベラリズムへの譲歩をしているからで、そんな必要はないのだ。
                そしてリベラルと訣別する時代がやってきた。
                米国にトランプ大統領が出現した。日本でも安倍首相がいる。延時潔の「海道東征」が大阪で東京で演奏会を開くと超満員の人出が見られるようになってきた。藤田嗣治への評価は熱風のごとし。
                正常に正統に復帰しようとする風潮がようやく本格化してきたのは心強い。
                田中氏は最後に、このトランプの出現を単なる「現象」とは捉えず、本流の流れと見る。
                「トランプ大統領はそうした少数派インテリの批判に動ぜず、本当の社会の現実を知っている者たちに語り始めた」
                それがともすれば粗野に見えても「大多数の国民にはわかりやすい」。
                だから左翼メディアやリベラルは論客らがトランプをポピュリズムと呼んで、侮蔑・軽蔑したが、トランプを「攻撃する彼らこそ、今は少数派インテリというただの『反対勢力』になっていることを知らない」のである。

                posted by: samu | 書評 | 10:55 | - | - | - | - |
                書評『日本が果たした人類史に輝く大革命』(自由社)植田剛彦、ヘンリー・ストークス
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                  書評 宮崎正弘

                   

                  本書は日新報道から2015年に出た『目覚めよ日本』の改訂版である。
                  前掲出版のおりに評者(宮崎)は以下のような書評を書いている。
                  ここに再録してみよう。
                  「読み終えて清涼剤をまとめて十本ほど呑んだような爽快感が残った。快著であり、同時に画期的な問題を提議する著作である。
                  脳幹に爽やかな一陣の風が吹いた。
                  ストークス氏が担った歴史的作業とは、欧米ジャーナリストのなかで、とくに在日外国人特派員のなかにあって最古参の氏はただひとり敢然と「東京裁判史観は間違い」であり、「日本の大東亜戦争の目的はアジア植民地の解放戦争だった」と正当に評価した初めての英国人であり、南京大虐殺の嘘を世界に向けて発信している稀有の存在である。
                  慰安婦、強制連行、性奴隷に関しても資料をふんだんに使っての反論がなされる。
                  ストークス氏は「GHQ史観」とも「東京裁判史観」とも言わず、独自の「連合国戦勝史観」と定義されるように、歴史に対する凛とした態度が明瞭に示されている。
                  かくいうストークス氏とて、東京赴任当時から上記のような歴史観を抱いていたわけではなく、英紙フィナンシャルタイムズ、ロンドンタイムズ、そしてニューヨークタイムズの東京支局長として滞在半世紀におよぶ裡に、三島由紀夫氏ら多くの友人・知己を得て、考え方が自然と固まってきた、日本に対する冷静な視点から到達した結論である。
                  そうだ、ストークス氏は英語で三島伝記を書いた初めての外国人でもある。
                  だから率直にその思想遍歴を次のように語る。
                  「私はいわゆる『南京大虐殺』をはじめとして、マッカーサーが日本占領下で演出した東京裁判が、一部始終、虚偽にみちたものであり、日本が侵略国家であったどころか、数世紀にわたって、白人による植民地支配のもとで苦しんでいたアジアを解放した、歴史的におおいに賞賛するべき偉業を果たしたことを、(半世紀の滞在を通じて)理解するようになった」と。
                  また対談相手の植田剛彦氏は辣腕のジャーナリスト、アメリカ通として活躍され、多くの著作がある論客だが、鋭い筆法のなかに独特のユーモアが含まれ、つい笑いに誘われた箇所も数カ所ある。
                  その植田氏がストークス氏の発言を継いでこう言う。
                  「マッカーサーは、日本に『平和憲法』を強いたり、トンチンカンなことが多かった。日本国憲法は、占領軍に銃剣をつきつけられて、1946年に公布されましたが、日本を土足で踏みつけたようなものでした。(中略)それなのに、今日でも多くに日本人がこの土足を頭の上に戴いて、満足している」
                  そして惰眠をむさぼり続けてきた日本の平和ぼけはヒトラー台頭時の英国に似ているとして植田氏が続ける。
                  「ヒトラーが1939年にポーランドに侵攻して、第二次世界大戦の火蓋が切られたときに、イギリスは不意を突かれた(中略)。いまの日本の状況と、驚くほどよく似ています」
                  ストークスはその後『右翼』といわれたチャーチルが登場し、勝利に導くのだが、「今日の日本に、もし、チャーチルのような人物がいたとしたら、跳ね上がりの『右』だといって、白い目で見られてきたことでしょう。だから三島由紀夫はいまでも、『極右』ときめつけられている」
                  だから、日本は東京裁判の再審をおこなうべきなのだとストークス氏は貴重な、大胆な提言をされる。
                  「東京裁判では、一方的に、敗戦国のみが、裁判を装った『復讐劇』によって、私刑を受けたわけです。ブレイクニー弁護人は『侵略戦争それ自体は犯罪ではない』と主張し、さらに『もし侵略戦争が犯罪であるというなら、原爆を投下した者、その命令を下した司令官、その国の指導者の名も挙げられる。
                  彼らは、この法廷のどこにいるのか』と、裁判が一方的であることを訴えました。私は、『東京裁判』それ自体を、国際法に則って、『再審』することで、日本の正義は充分に立証されると、強く思うのです」。
                  戦後七十年をむかえて歴史戦で大外交攻勢をかける中国、韓国と、それを背後で黙認し、いや擁護さえしながら米国は「安部談話」に介入している。内政干渉である。このような未曾有の歴史戦を前にして、私たちは東京裁判の再審を行わなければならないのである」(引用終わり)。

                  さて、この改訂版に加えることが二つある。
                  それは明快な解説を書いているのがケント・ギルバート氏であり、じつはケントさん、この本の解説以来、ストークス、植田氏の主張の影響をうけてか、まさしく「日本に目覚め」、最近の旺盛な、日本人を鼓舞する物語をつぎつぎと発表されるようになった。
                  その意味で、あたらしい外国人の日本論の論客を産んだ書でもある。
                  ついで著者のひとり、植田剛彦氏は4月4日に伝統ある「聖マゥリツィオ・ラザロ騎士団」の騎士に叙任されるという慶事があった。

                  posted by: samu | 書評 | 10:03 | - | - | - | - |
                  書評『トランプが中国の夢を終わらせる』ワニブックス/河添恵子
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                    藤岡信勝 書評

                     

                    今、もっとものっている元気印の女性ノンフィクション作家、河添恵子さんの新著が出た。書名は『トランプが中国の夢を終わらせる』(ワニブックス刊、1296円+税)。25日発売でアマゾンに予約注文していたのだが、本日(15日)著者から現物が送られて来たのですぐに読んだ。以下はその感想文である。
                     本書の内容をひとことで言うと、近現代の世界政治を彩る人物相関絵巻図である。登場人物の数は、ざっと200人を下らない。この中で私が名前を知っているのは、たかだか3割程度である。半世紀を生きてきた著者が、中国語、英語、日本語の3つの言語を縦横に駆使し、30年にわたって40か国を取材して回った知見がぎっしりと詰め込まれている。圧倒されるような、凄まじい情報量である。
                     この中には知らなかった事実が沢山あるのだが、私はどうしても、歴史にかかわる人物に興味を惹かれる。そこで本書の中で、私にとって最も魅力に富む、男女一人ずつの人物を取り上げてみたい。
                     第一は、ロイ・マーカス・コーンという名前の人物である。コーンは検事(のちに弁護士)として、1950年代初頭、「赤狩り」を推...進したジョゼフ・マッカーシー上院議員の手足としてはたらいた。マッカーシーは「共産主義のスパイが政府機関に潜入し、枢要なポストを占めている」「国務省内に57人の共産主義者がいる」などと告発し、いわゆるマッカーシー旋風を起こした。1995年に公開されたヴェノナ文書によれば、スパイ潜入の規模はマッカーシーの予想をうわまっていた。
                     ところで、アメリカの新大統領トランプの執務室には、コーンの写真が飾られているという。なぜか。年齢的には19歳上のコーンは、亡くなるまでの13年間、実はトランプの顧問弁護士だった。ふたりは1日に5度は話をするほど近しい関係にあった。トランプのアグレッシブで好戦的なビジネス手法は、コーンがトランプに仕込んだものだった。「モスリムやテロリストに関する排他的な政策、歯に衣を着せぬ表現、それらすべてがコーンの受け売りだ」と証言する人もいる。だから、リベラル系のメディアは、大統領選挙戦中に「トランプはコーンの作品」と揶揄していた。
                     ハリウッドは「赤狩り」の対象となったから、コーン=トランプへの憎しみは強い。著者は「我々日本人がハリウッドの怨念に引きずられ、トランプ政権の本懐を見誤ってはなりません」と書いている。マッカーシーからトランプへ、こういう反共思想の水脈があったとは興味深い。コーンについて、もっと知りたくなった。
                    第二の魅力的な人物は、中国人の女性で、その名を陳香梅という。2015年の9月と10月、北京と台北で「抗日戦争勝利70周年記念行事」が開催された。その場に90歳の老婆が招待され、両岸のメディアが大きく報じた。それが陳香梅なのだが、この人は、アメリカの軍人クレア・シェンノートの未亡人で、英語名はアンナ・チェン・シェンノートという。シェンノートは、1930年代に、日本軍と戦争状態にあった中国国民党政府を支援し、日本軍を攻撃するために1940年に義勇兵をよそおってアメリカ空軍兵らを組織したフライング・タイガーの指揮官だった。ついでに言うと、このフライングタイガーの写真を載せて歴史教科書に取り上げているのは、つくる会の教科書(自由社刊)だけであることを覚えておいでいただきたい。(エヘン!)
                     彼女は日本でこそ無名だが、アメリカのワシントンを拠点に、戦後の米中台外交の中枢に長期にわたり身を置いた超大物、ナンバーワンのロビイストなのだという。まさに抗日の国共合作を体現したような女性だ。では、彼女は戦後史の裏側でどんなことをしていたのか。この先は、ぜひこの本を読んでいただきたい。俗に歴史の陰にオンナありというが、歴史戦を仕掛けられている日本としては、恐るべき人物だ。
                     こういう、実に面白い本なので、歴史好きの方には特にオススメだ。書名にはあまりこだわる必要はない。
                     気がついた誤植を2つ。
                     。毅献據璽牽弦毀棔「コーンの性的思考」は「性的嗜好」ではないか。
                     ■沓哀據璽減能行から。「ナチスの迫害から逃れるためアメリカに移住したユダヤ人が、アメリカ映画産業に本格的に参入したのは1900年初頭のことで」。年代の整合性は大丈夫ですか。
                     誤植は少ない。出版社はがんばってつくったようで、売り上げにも協力したい。

                    posted by: samu | 書評 | 09:50 | - | - | - | - |
                    書評/『世界が地獄を見る時』(ビジネス社)門田隆将 vs 石平
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                      宮崎正弘/書評
                      日本は米国と電撃的に台湾を国家承認せよ
                      トランプは本気で中国に経済戦争を仕掛けると予測する

                      意外な顔合わせ、しかも熾烈なボキャブラリーを駆使しての激突対談。つぎつぎと機関銃の連射のように発射される「門田砲」に対して「石砲」は爆発的火力で応酬する。
                      連続パンチ、アッパーカットのあとの結論がまた素晴らしい。
                      日本と米国は一緒になって台湾を電撃的に外交承認せよ、と外務省が聞いたら腰を抜かすような提言で締めくくられている。
                      むろん北京は青筋立てておこり台湾にミサイルを撃ち込むだろうが、本書の副題が「日米台の連携で中華帝国を撃て」だから、さもありなん。

                      さて、戦後の「世界秩序」を白昼堂々と無視して強盗のように、傍若無人にふるまう習近平の中国だが、その行動原理の基礎にあるのは華夷秩序、中華思想という、中国人以外には絶対に理解できない思い上がった意識がある。
                      結局、いまの国際秩序なるものは中国人から言えば西洋列強の帝国主義の結果であるとしか認識していないことである。
                      中国を最初に侵略したのは大英帝国。そして「最後にきた大日本帝国は、力で華夷秩序に致命的な一撃を与え、完全に崩壊させてしまった。そして、ようやく大日本帝国が沈んだと思ったら、こんどは米国の帝国主義がアジアで幅を利かせ、アジアの覇権を握った」とする石平氏は、この認識から中国は力への信仰が進んだと総括する。
                      「中国がこれからやることは、近代以降、西欧列強帝国主義によって、西洋あるいは米国から押しつけられた秩序を破壊するのは、むしろ正義であり、当然である、ということになります。つまり、これを破壊したうえで、中国本来の意味での理想的な秩序を取りもどす。経済の意味に於いても、政治の意味に於いても、もう一度、華夷秩序を作り上げるのが、中国の歩むべき道だ」
                      という単純で短絡的で、原始的な発想に繋がる。元中国人の石平氏だからこそ断定できる中国のパラノイア発想の源泉だ。

                      しかしながら門田氏は、そうして時代錯誤の中国を次のように論駁する。
                      「列強の帝国主義時代が終わりを告げたことを受けて、世界は戦後の国際秩序の構築を目指しました。東西冷戦がありながれも、基本的には力による現状変更、要するに領地や了解を奪い合いにいく『侵略』は許されない土壌が出来た。ところが、あろうことか、国連常任理事国の中国が、二十一世紀を迎えて、おおっぴらに現状変更に乗り出してきた。それが許されると思っているところが驚き」であるという。
                      そして門田氏は、こう続ける。
                      「華夷秩序を主張する神経は、ほかのどの国にも理解されません。中国にかかれば、人類の英知とも言える国際司法裁判所の判断や海洋法の条文も『紙くず』に過ぎません。俺たちは力をつけたのだから、そんなものには従わない、と平気で踏みにじる。しかも、そうした見解を中国の殆どの人がもっています」
                      この現実は驚異的な時代錯誤だが、中国人は気にしている気配がない。

                      石平氏は、この背景に流れる、もうひとつの中国人の危機意識に「生存空間」があるという。
                      つまり「民族が生存していく上で、ひとつの空間が必要である、それは国土、水、空気、海など全部含めての『生存空間』というものです。エリート達はいまの中国は生存空間の危機に陥っていると思っています。人口の膨張により、中国の伝統的な国土だけでは、いまの中国人民を養うのは物理的に不可能だと捉えている」からだと、ちょっと日本人の発想にはない、見えない理由を付け加える。

                      ○◎○ □▽◎ ○◎○
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                      宮崎正弘/書評
                      いま西側社会を揺らす難題は、難民をいかに扱うかである。
                      クルド族もロヒンギャもすでに日本に這入り込んでコミュニティを形成


                      大家重夫『シリア難民とインドシナ難民』(青山社)
                      @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

                      シリア難民が世界を揺らしている。
                      シリアからトルコ経由で地中海へ漕ぎ出したボロ船には、定員オーバーの難民が公海上で救助を求める。国際法にもとづき、近くの船は救助に向かわなければならず、そうやって助かった人々はギリシア領や、イタリアに帰属する島々にいったん収容される。
                      しかし悪質な密輸業者に騙されたり、航海中に嵐に遭遇して海の藻屑ときえた犠牲者の数も夥しい。
                      数百万とも見積もられる難民がシェンゲン協定の穴を狙って、西欧を目指し、最終的にはドイツへ這入り込もうとする。
                      このためメルケル政権は人気急落。ネオナチ、ドイツのための選択肢が台頭し、ドイツ社会はガタガタになった。
                      あたかもゲルマンの大移動、欧州政治が根底から揺らぎ、ドイツでフランスでオランダで、ナショナリズム運動が勃興し、英国はEUから脱出し、いずれEU解体、ユーロ崩壊という近未来が展望されるまでに暗いシナリオが提示された。
                      さて、この難民問題、日本も例外ではないのである。
                      埼玉県蕨市。クルド族の難民集落ができて、ワラビスタンと言われているという。その数二千人。いやはや、知らなかった。日本は何時の間に、この厄介なクルド族を難民認定したのか?
                      ミャンマーを追われたロビンギャ。日本が期待して祭り上げたスーチー政権も、このロヒンギャ弾圧という政策には変わりがない。
                      スーチー政権をヒューマニズムに溢れると言ったのは誰だ?
                      このロヒンギャ族が、230人、すでに日本に上陸し、しかもこのうちの200名が群馬県舘林市でコミュニティを形成しているという。
                      この話も知らなかった。
                      嘗てベトナムから大量のボートピーポルが輩出し、日本も米国の圧力に根負けして、数千名を受け入れ、大村の収容所に保護した。このうち日本への定住を望んだのは少数で、大概はフランスへ出て行った。
                      「ボートピーポル」なんて名ばかりで、殆どがベトナム華僑だった。
                      フランス植民地時代に支配者に追従し、ベトナム人を弾圧してきた層であり、ベトナム人から恨まれていた。
                      ベトナム戦争で米軍が負けたとき、米軍傀儡政権側の人々は、とうに米国へ亡命していた。
                      あまつさえボートピーポルを偽装した中国人が大量に紛れ込んだが、日本の当時の取り締まり側にはベトナム語と広東語の区別が出来なかった。
                      「結局、偽装難民の上陸者は、平成元年か五月から平成二年四月末までに23隻の船舶で、2830人にのぼった」(136p)のである。
                      偽装の嘘がばれるに手間取ったが、究極には「強制送還」した。
                      本書は、こうした難民問題の基本を考えるテキストでもあり「入国管理および難民認定法」「国籍法」「外国人登録法」など法律、これらの判例。そして国際条約の「難民条約」「地位議定書」などが一連掲載されている。

                      日本は難民に冷たいという国際非難がある。
                      冗談だろうとおもいきや、国連でも批判され、80年代に米国の『難民大使』だったダグラス氏と評者(宮崎)も米国で会ったことがあるが、『日本は人道上、もっと難民を受け入れるべきである』と非難めいた口調だったので反論した。
                      「日本は朝鮮半島から二百万。中国から百万の難民を受け入れてきた。合計300万人の、いわゆる難民は日本各地にコミュニテイィを形成し、多くが日本社会に溶け込んでいる」。
                      溶け込めないのは日本語を学ぼうとせず、単にカネ稼ぎにやってきて、当てが外れ犯罪行為に走る輩なのだと答えたことがある。
                      本書は現場で難民対策に従事してきた筆者ならではの体験的実態報告と、これから日本はいかにしてこの難民対策にあたるべきか有益な提言をしている。
                      とくに行政を一本化し『外国人庁』の設置が必要と説かれている。
                      ほかにも上陸前の日本語教育、エンジニアの認定。亡命希望への対応など、礒がなければならない問題点が整理され、日本では稀有の提言書となっている。
                       

                      posted by: samu | 書評 | 18:12 | - | - | - | - |