PR
Search
Calendar
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728   
<< February 2018 >>
New Entries
Category
Archives
Profile
Links
mobile
qrcode
RSSATOM 無料ブログ作成サービス JUGEM
賃上げ主導の「脱デフレ」 政府は緊縮財政で邪魔するな /田村秀男
0
     安倍晋三首相は1月22日に衆参両院本会議で行った施政方針演説で、賃上げ主導による脱デフレに意気込んだ。経団連と連合も3%賃上げに前向きなので機運は上々だが、ちょっと待てよ。20年間も日本経済に取りついてきたデフレ病を、賃上げ頼みで克服できるのだろうか。
     日本の慢性デフレの期間は1930年代の大恐慌時代の米国をはるかに上回る歴史上未曽有の経済事象で、米欧流の経済学教科書では説明できない。特徴は緩慢な物価低落傾向の中で賃金がしばしば物価以上の幅で下がることだ。
     モノやサービスの値下がりは一般の家計にとってみれば悪くないことなので、デフレ病の自覚に乏しいのだが、何となく懐具合が寂しくなってきたと感じる。日銀の「生活意識に関するアンケート調査」によれば、デフレが始まって以来、「暮らし向きが悪くなった」との回答比率が「良くなった」を上回っているのはそんな背景による。
     従って、賃上げが脱デフレの鍵になるという考え方は、正社員、パートを問わず勤労者全体に恩恵が及ぶという条件付きだとしても、いかにももっともらしい。慢性デフレが始まった平成9年12月を100とした賃金水準と消費者物価指数を見ると、昨年9月時点では賃金は96.5であるのに対し、物価は100.1。両者間のギャップは3余りだから、3%賃上げは確かにつじつまが合うが、単純過ぎる。
     全体的なモノやサービスの需要の伸びを表す経済成長率が名目で1〜2%の中で3%賃上げが全雇用の9割を占める中小・零細企業に浸透するとは考えにくい。人手を確保するためとはいえ、製品需要、つまり売り上げが2%程度しか伸びないのに、経営者がそれ以上の幅で賃上げに踏み切るには覚悟がいるだろう。
     繰り返すが、日本では物価下落を上回る速度で賃金が下がる「賃金デフレ」に陥りがちだ。今は物価がわずかずつ上がる傾向にあるが、賃上げ率がインフレ率を下回る限りデフレ圧力が加わり、需要が押し下げられる。総需要を左右する政府・日銀の財政・金融政策が、賃上げ以上に脱デフレの鍵を握るはずだ。
     金融は、日銀の異次元緩和政策が円安局面を演出し、輸出企業を中心に企業収益を好転させてきたが、円安は外部要因によって左右されがちだ。日銀の黒田東彦総裁は大規模な金融緩和とマイナス金利政策の堅持を強調して、円高阻止に努めているが、トランプ政権要人の「ドル安容認」が伝わった途端、外国為替市場で円が大量に買われる始末だ。円高による収益源を恐れる企業は賃上げに慎重になりかねない。
     財政はどうか。グラフは22年度から30年度までの国の一般会計からみた財政の緊縮・拡張度と、民間給与の増減額を対比させている。緊縮・拡張度は前年度に比べた歳出の増減額から税収の増減額を差し引いて算出した。財政支出が増えると拡張型と解釈する向きもあるが、税収の増加額がそれを上回ると民間の所得を政府が奪う、つまり、緊縮型とみなすのが当然だ。30年度は国の一般会計予算案を、前年度の補正後と比較している。
    イメージ 1
     24年12月にアベノミクスが始まって以降、24年度を含め明確な拡張型に転換したのは28年度のみだ。対照的に民間給与はほぼ一貫して増加し、国内需要増に貢献している。消費者物価指数と並ぶ代表的なインフレ指標である国内総生産(GDP)項目の総合物価指数であるデフレーターは給与が上がれば上向くが、緊縮財政によって下押しされるトレンドが読み取れる。
     緊縮財政の最たるものは、26年4月の消費税率8%への引き上げだ。26年度の給与増額2.7兆円に対し、財政の緊縮額は8.4兆円、GDPの1.6%にも上った。巨額の民間需要を政府が取り上げる。その後、デフレーターがマイナスに落ち込んだのは増税のせいである。
     安倍首相は、施政方針演説で「4年連続の賃上げにより、民需主導の力強い経済成長が実現し、デフレ脱却への道筋を確実に進んでいる」と強調したが、民間給与がつくり出す需要増を奪い取ってきたのは政府のほうである。
     政府は31年10月に消費税率10%への再引き上げを予定しているばかりか、軽減税率導入に先駆けてサラリーマン増税を予定するなど、緊縮財政路線を堅持している。賃上げ主導で脱デフレを早めに実現するつもりなら、安倍政権はさっさと大型補正を組んで財政の緊縮度をゼロにし、民需の足を引っ張らないようにすべきだ。さて、春闘でどれだけの賃上げになるのか。
    posted by: samu | 経済認識 | 10:08 | - | - | - | - |
    うなぎ上りの米原油生産、経済に驚異的な波及効果/ロイター
    0



      うなぎ上りの米原油生産、経済に驚異的な波及効果 1月22日 ロイター

      [ヒューストン 16日 ロイター] - 米国内の原油生産量は、シェールオイルの急激な増産によって日量1000万バレルの大台に近く達しようとしている。これは1970年に記録した過去最高を上回り、10年前にはほとんどの関係者が想像すらしなかったような水準だ。

       さらに米政府の見通しでは、来年終盤までに生産量は1100万バレルまで増え、世界最大の産油国ロシアに並ぶだろうという。

       こうした生産増がもたらす経済的、政治的な波及効果は驚異的と言える。例えば10年間で米国の原油輸入量を20%減らし、地方社会に高給の仕事を生み出しているほか、国内のガソリン小売価格を2008年の高値に比べて37%も引き下げている。

       デロイトの米エネルギー・資源事業責任者ジョン・イングランド氏は「米経済にとって信じられないほどのプラスの影響を与えている」と強調した。

       シェール部門が今の生産ペースを維持できるのかどうかは、なお議論が分かれるところだ。急成長を遂げてきただけに、この業界は既にピークを迎え、生産量の予想は楽観的過ぎるのではないかとの懸念も広がっている。

       ほとんどの油田において、人件費や関連サービスへの支払い費用はこのところ高騰し、掘削可能な土地の値段も跳ね上がっている。シェール業界の資金提供者からは、掘削事業を拡大するより目先のリターン確保に専念しろという要求も聞かれる。

       ただ米国の生産者はこれまで、予想をはるかに上回るペースで増産を続け、さまざまな難しい課題も克服してきた。最近では、石油輸出国機構(OPEC)が国際市場に大量の原油を供給して価格を押し下げ、採算割れを起こさせる「シェール生産者つぶし」を試みたが、原油安に対して先に音を上げたのは、一部のOPEC加盟国だった。シェール業界は積極的なコスト圧縮や掘削技術の急速な進歩を通じて、この闘いを勝ち抜いたのだ。

       今や原油価格は1バレル=64ドル超と、米国の生産者の多くが事業拡大と株主への配当支払いの双方に動くだけの資金を調達できる水準になった。

      パイプライン増設

       OPECとの闘いで事業が効率化し、生産量が十分増えたおかげもあり、米石油業界による政府への原油輸出解禁の働き掛けは成功した。2015年終盤に議会が輸出禁止を解除し、現在では最大で日量170万バレルが輸出されている。今年は日量380億立方フィートの天然ガス輸出も見込まれている。

       こうした輸出需要とともに、テキサス州西部とノースダコタなど離れた地域で生産が急増しているという事情から、米国ではパイプライン建設も活発化。パイプライン・ハザーダス・マテリアルズ・セーフティ・アドミニストレーションによると、キンダー・モーガンやエンタープライズ・プロダクツ・パートナーズといった企業は、12年から16年までに2万6000マイル相当を増設した。

      技術力

       シェール生産の伸びがさらに高まるかどうかは、それぞれの油井からより大量に採掘する技術次第だ。各企業は現在、ドリルにセンサーを取り付けて鉱床を一段と正確に探り当てようとしたり、設備と熟練のエンジニアを最大限に活用するためにAI(人工知能)や遠隔操作などの手段も用いている。

       ウォーウィック・エナジー・グループのケート・リチャード最高経営責任者(CEO)は、技術力が採掘事業の収益性を高める手助けをしてくれると指摘した。

       また過去2ヵ月で原油価格が約10バレル上がったことにより、水圧破砕法(フラッキング)を利用した掘削サービスを提供しているキーン・グループやリバティ・オイルフィールド・サービシズなどは、新たな受注を期待して高額の新機材を購入している。

       調査会社スピアーズ・アンド・アソシエーツの見積もりでは、米フラッキングサービス業界の今年の収入は20%増加し、14年に記録した過去最高の290億ドルに迫るという。

      潤う地方経済

       シェール開発を当初主導したのは中小企業で、海外での資源開発に力を入れていたエクソンモービルやシェブロンなどの大手は遅ればせながら、先発のシェール企業や権益を取得する形で参入し、米国内への投資を加速させている。

       エクソンは昨年、パーミアン盆地の土地に最大66億ドルを支払うことに合意。シェブロンは今年シェール開発に43億ドルを投じる。

       こうした動きは、米国の地方の人件費や掘削可能な土地の値段を押し上げ、地域の賃金水準を引き上げて豊かさを提供することに貢献しつつある。「シェール城下町」のテキサス州ミッドランドでは失業率が2.6%まで下がった、と地元で企業の求人を支援する機関の幹部が明らかにした。この幹部の話では、企業側は人材獲得のためにボーナスを提供することも提案しており、就職状況は「かつて買い手市場だったが、今は売り手市場の側面が強い」という。

      (Liz Hampton記者)



      株式日記と経済展望ブログより(私のコメント)

      最近のシェールオイル革命は、全く予想外の出来事であり、私もオイルピーク説を信じて世界のエネルギー予測を誤った。ロイターの記事ではシェールオイルの生産高は日産1000万バレルに及ぶといいますから1970年の過去最高を上回る生産高だそうです。しかしシェールオイルは数年で枯れてしまうということですが、いつまでもつのだろうか。

      石油の採掘は、地下から金が湧き出てくるようなものであり、アメリカの繁栄は石油の国内生産が本格化したことでもたらされた。それまでは普通の国家であり海外への影響力もそれほどなかった。アメリカの強みは石油の国内生産にあり、来年度は生産量は1100万バレルまで増えて、ロシアと並ぶ石油生産大国になる。

      サウジはアメリカのシェールガス・オイルつぶしに動いたが、原油下落の影響はOPECのほうにダメージが出てしまった。特に南米のベネズエラはハイパーインフレが起きて政治が大混乱だ。現在の原油価格は60ドル台に乗せて、シェールオイル生産者の事業拡大に拍車がかかっている。

      アメリカでシェールガス・オイルの生産が盛んなのは、パイプラインが整備されていることであり、他の国にもシェールオイルの埋蔵はあるが、地層が深かったりパイプラインの整備がないと生産しても運べない。シェールガス・オイルの採掘技術は年々進歩しており、アメリカの石油採掘技術は最先端を行っている。

      採掘可能な土地の値上がりが地方経済を支えている。日本では温泉くらいしか出ませんが、アメリカでは不毛な荒野の下に石油が埋まっている。なんとも羨ましい限りですが、だからアメリカは空前の好景気に沸いている。テキサス州では失業率が2、6%で完全雇用に近い。

      もともとシェールガス・オイルは中小の石油ベンチャー企業が開発した技術であり、メジャーはシェールガス・オイルに乗り遅れた。それが本格化してくればメジャー主導のアメリカの石油政策が行われるようになる。スタンダード石油も中小の石油会社を買収して大きくなってきてロックフェラー財閥ができた。

      シェールベンチャーもメジャーにどんどん買収されて石油のメジャー支配が完成するのだろう。石油は戦略商品であり、米ドル基軸通貨の価値の源泉にもなっている。サウジとアメリカの関係も石油によるものであり、イラク戦争も石油支配が狙いだった。

      その後のシェールガス・オイルの採掘の本格化で、イラク戦争は必要だったのかと思いますが、5000名以上の戦死者とその数倍の負傷者を出した。ちょうど満州に大慶油田があるにもかかわらず、戦争を始めた日本軍によく似ている。

      posted by: samu | 経済認識 | 10:40 | - | - | - | - |
      1ドル=100円より円安なら景気は大丈夫か?/田村秀男
      0
        1ドル=100円より円安なら景気は大丈夫か? 企業の景況判断と円相場
         今年も残すところ後わずか。来年の景気はどうか、とよく読者の方々から聞かれるが、「現在のような円安水準が続く間は大丈夫ですよ」と答えている。(夕刊フジ)
         景気は「気」、それは端的に企業経営者の見方に表れる。その点、日銀が四半期ごとに行う「全国企業短期経済観測調査」(短観)はその手がかりになる貴重なデータだ。
         とはいえ、日経新聞など専門紙の短観報道を読んでも、企業の業況判断以上の景気は見えにくい。何が景気の決め手なのかを理解していないと、短観を読み解くことはできないのだ。
         そこで、どう短観を読めばよいのかという問いに答えたのが本グラフである。日銀が先週、公表した短観の業況予測指数(DI=景気が「よい」と見る割合から「悪い」と見る割合を差し引いた数値)を円の対ドル相場と対照させている。期間は2012年12月のアベノミクス開始期間から現在までである。
        イメージ 1
         一目瞭然、円相場が1ドル=100円の水準を超えると、DIはプラスに転じる。円高に振れても100円のラインよりも高くならない限り、マイナスにはならない。業種、規模を問わず、100円ラインよりも円安であれば、景況感をよいとする企業が悪いとする企業よりも多いのだ。
         円相場とDIについて統計学上の相関係数を計算してみると、0・77(1が最高値)と極めて高い。
         円安と景気を関連付ける材料はほかにもいくつかある。財務省の法人企業統計調査の企業収益と円相場は高い相関度がある。円安は自動車など輸出企業を後押しし、設備投資に前向きになる。国内総生産(GDP)も上向き、景況感は全業種に浸透していく。円安は企業収益を好転させるので、株価も上昇する、という具合である。
         拙論が以前から指摘してきたように、アベノミクス最大の狙いは実のところ、円安である。政府・日銀ともそれを公には認めないのは、「円安誘導」だと米国などからバッシングされかねないからだ。日銀がおカネを大量発行する異次元金融緩和は円安を実現し、その効果が薄れたと見るや日銀はマイナス金利政策に踏み切り、円安水準の維持に努めた。
         問題はこれからだ。まず、1ドル=110円前後の円相場水準は持続するのか。米利上げが事前予想よりも遅く緩やかなテンポであれば、日米間の金利差が広がらないとみられ、円高になりうる。トランプ政権の大型減税は世界の対米投資の魅力を高めるので、ドル高・円安になるが、米議会の調整が難航すると、逆にもなる。

         他方で、政府と与党は19年10月の消費税再増税に合わせて、所得税など増税を相次いで繰り出そうとしている。増税はデフレ要因であり、円高を招きやすい。円高に反転させたら、景気が逆戻りすることを、本グラフは暗示している。安倍晋三政権と日銀はそのことに気付いているのかどうか、心配になる。(産経新聞特別記者・田村秀男)http://www.sankei.com/premium/news/171223/prm1712230011-n1.html

        posted by: samu | 経済認識 | 10:19 | - | - | - | - |
        家計に対する増税主義の策謀にだまされるな /田村秀男
        0

          家計に対する増税主義の策謀にだまされるな 97年度の増税後にデフレ不況突入、財政収支悪化の失敗

          民間給与所得者の階層別人数と比率
           大方のメディアは政府・与党が合意した所得税増税容認だが、拙論は別だ。(夕刊フジ)
          イメージ 1
           米国トランプ政権と議会は大規模な減税の方向で一致し、景気拡大を加速させようというのに、依然としてデフレ圧力が止まない日本が停滞する個人消費を押し下げる議論しかしないのは異様だ。どの国でも、経済成長の責務を持つ政治・政策としてはお粗末に過ぎやしないか。
           政府・与党は今週初め、年収850万円超の会社員を対象にした所得税増税で合意した。国税庁の統計によると、年収800万円超、1000万円以下の会社員は全体の4・6%、1000万円超は4・3%なのに対し、500万円以下は71%、500万円超800万円以下は20%弱だ。
           この構成比はアベノミクス開始前の2012年に比べほとんど変わらないが、数では800万円超が69万人、500万円以下は155万人それぞれ増え、格差は拡大気味だ。
           メディアがおとなしいのは、(1)増税対象は「高額所得者」に分類される(2)家計の税負担増は年間900億円で小規模(3)実際の増税対象者は公務員も含め、子育て・介護世帯を除くので、全給与所得者の5%程度-などの口実がある。建前だけは「平等」にこだわり、「金持ち」に冷たい大衆迎合メディアらしい反応だが、ちょっと待てよ。もっともらしい化けの皮を剥いでみれば、本合意の正体は家計に対する増税主義そのものではないのか。
           思い起こせば、財務省の策謀に弱い歴代の政権はことあるごとに、パブロフの犬のごとく財源すなわち増税と反応してきた。11年の東日本大震災が起きるや、民主党の菅直人政権(当時)はただちに増税し、全国の家計に負担を押し付けた。
           次の野田佳彦政権は自民、公明両党を巻き込んで消費税増税の3党合意に踏み込んだ。慢性デフレの泥沼は完全に無視し、野田氏は「増税すれば景気はよくなる」とうそぶいた。増税して社会保障財源を確保すれば、家計は将来不安が少なくなり、消費に励むという論法だが、1997年度の消費税増税後、デフレ不況に突入、肝心の財政収支が悪化した失敗を一切省みなかった。
           公正に言えば、この増税主義は自民、公明両党内にも根付いている。
           所得税増税は19年10月予定の消費税再増税実現の手段である。消費税率10%時に食料品などに軽減税率が導入されるのだが、軽減分だけ消費税増収見込み額が減る。タバコ増税をしても穴埋め必要額はおよそ6000億円と財務省は騒ぐ。その財源確保のための増税という理屈を与党は受け入れた。今回合意の小規模所得税増税は次から次へと繰り出す増税の前触れなのだ。
           19年5月には平成に代わる元号に改まる。10月には消費税増税、翌年1月が所得税増税実施、夏は東京五輪だ。各国の例から見て、五輪は終われば消費が冷える。増税主義者たちは新元号時代もデフレにしようとしている。(産経新聞特別記者・田村秀男)
          posted by: samu | 経済認識 | 11:01 | - | - | - | - |
          世界的株式バブルの黄信号 崩壊不況回避の鍵は財政にあり/田村秀男
          0
            【田村秀男の日曜経済講座】 http://www.sankei.com/premium/news/171210/prm1712100015-n1.html
            イメージ 1
             日本を含め世界は株式ブームだ。バブルではないのか。
             20年以上前、ニューヨーク市場はインターネット関連(ドットコム)主導で沸いた。バブル懸念を抱いたグリーンスパン米連邦準備制度理事会(FRB)議長(当時)は「根拠なき熱狂」と警告した後、配下のエコノミストたちに命じてバブルの定義を探求させた。たたき台は日本の平成バブルとその崩壊だ。
             議長側近が当時、筆者に明かした結論は、「バブルは崩壊して初めてバブルと断定できる。上げ相場の最中にバブルだと判断する基準はない」。愛し合う男女のように、市場が陶酔状態にあるときは、現状肯定のさまざまな見方や論理がまかり通る。不都合な材料は消し去られる。
             FRBはバブル判定を無駄な努力だと諦める代わりに、バブル破裂後の金融政策こそが経済全体の命運を左右すると割り切り、事後対策に焦点を絞った。日銀政策の失敗を反面教師にしたのだ。
             1980年代末の日銀によるバブル潰しは、急激な利上げで株価を暴落させた後も、まるで水に落ちた犬をこれでもかとばかりぶったたくように金融引き締めを重ねた。以来、日経平均株価は低空飛行を続け、バブル崩壊後の最高値(1996年)を上回ったはつい最近のことだ。
             バブルだと見分けられなくても、せめてシグナルはないのだろうか。米国の「オマハの賢人」こと、著名投資家のバフェット氏が考案した指標がある。一国の国内総生産(GDP)名目値を、上場企業全体の時価総額が上回って増え続ける場合、警戒せよ、というものだ。経済学理論や数学では立証できないが、何となく合点がいく。
             経済とは、私たちが日々働き、消費する実体経済、すなわちGDPの世界と株式など資産市場の金融経済に二分される。GDPの規模と成長速度を上回って株式に代表される金融資産が膨らみ続けるのは、何か変だ。旦那さんの年間勤労収入よりも奥さんのへそくり株の値打ちのほうがはるかに大きくなったら、そんなうまいもうけ事がいつまで持つかと不安になるはずだ。
             多くの投資家が疑心暗鬼になっている最中に突発的な米利上げ、中国バブル崩壊、あるいは朝鮮半島や中東の有事など国際情勢の急変があればパニックが起きかねない。
             グラフは米国、日本、中国と世界全体の株式時価総額のGDP比(バフェット指標)の推移を追っている。世界全体を含めたのは、国境を越えてカネが動き回る金融のグローバル化を考慮したからだ。日米中とも、100を超えてなお時価総額が膨張した揚げ句、バブルが崩壊した。
             特徴的なのは世界全体の指標だ。平成バブル崩壊は海外の株式市場にはほとんど波及しなかった。ところが1990年代末には米ドットコム・バブルがはじけ、2007年の米住宅バブルの崩落は翌年9月のリーマン・ショックを呼び込み、全世界の市場を巻き込んだ。その当時、バフェット指標は米国で100を超えていたばかりではない。世界全体もそうだ。
             上海株価は07年、世界と共鳴、増幅して時価総額が一挙にGDPを上回るや急峻(きゅうしゅん)な崖のピークから墜落した。世界同時株安はこうして10年間で2度も起きた。そして今秋、米国、日本、世界のバフェット指標はそろって100を超え、ニューヨーク市場には先行き不安感が漂っている。
             投機マネーがニューヨークや世界各地の市場を覆い尽くす今、株価のサイクルに一喜一憂しても始まらないだろう。金融市場崩落に歯止めをかけ、実体経済への打撃を軽減化し、早めに回復させる政策が肝心だが、国によって政策の中身は異なるはずだ。
             FRBはリーマン・ショック後、ドルを大量発行する量的緩和に踏み切った。金融市場にカネを流し込み、株価を押し上げてきた。株価上昇は消費を支え、GDPを押し上げ、米景気を回復軌道に乗せた。日本の異次元金融緩和政策も株価の動因であることは米国と共通する。
             しかし、GDPの6割を占める家計消費は低迷したままだ。家計金融資産の5割以上が現預金で、株式関連資産比率が低い日本では株価上昇の恩恵が実体経済に滴り落ちる度合いは薄い。残る選択肢は政府が国債を発行し、GDPの2倍近い余剰資金を金融市場からくみ上げ、成長分野に投入する財政出動しかない。
             政府・与党は最近の輸出回復や株高に意を強くしたのか、所得税や消費税の増税と緊縮財政路線を変えようとはしない。金融政策一本やりで、株式市場異変に実体経済が耐えられるだろうか。
            (編集委員)
            posted by: samu | 経済認識 | 11:13 | - | - | - | - |
            金融理論の貧困がデフレを招く/田村秀男
            0
              【ビジネスアイコラム】金融理論の貧困がデフレを招く 伝統に固執 視点を変えられぬ日
               ■伝統に固執 視点を変えられぬ日銀
               アベノミクスが始まって以来もう5年だが、肝心の脱デフレのめどが立たない中、「日銀理論」に固執してきた白川方明前日銀総裁時代までの日銀主流グループが息を吹き返している。日銀理論とは貨幣の供給によってインフレをコントロールできない、という見方だ。
               典型は元日銀金融研究所長で法政大学客員教授の翁邦雄氏だ。氏は26日付の日経新聞朝刊で「日銀がマネタリーベース(資金供給量)を増やすだけで物価が上がるという直接的な波及経路はない。日銀は将来の物価が上がるという『期待』を生むとしたが、多くの国民はマネタリーベースとは何かを詳しくは知らないだろう。だからインフレ期待も生まれない」と言い切った。
               中央銀行がおカネをじゃんじゃん刷れば、物価は必ず上がると岩田規久男日銀副総裁らリフレ派エコノミストは主張するのに対し、翁氏ら日銀理論派は一般国民がそう思うはずはないと断じるわけだ。
               黒田東彦総裁の日銀は年間で最高80兆円もの資金を追加発行しながら、5年間という中長期間でも継続的にインフレ率をプラスに持っていけない。物価動向は異次元緩和前とほとんど変わらないのだから、なるほど、論争の軍配は日銀理論派に上がりそうだが、ちょっと待てよ。このマネー論争は土俵、すなわち問題設定を間違えているのではないか。
               金融資産市場が実物市場である国内総生産(GDP)を圧倒する金融資本主義の現代において、中央銀行資金がGDPの主要素である物価に直接作用するとは考えにくい。中央銀行資金は金融機関に供給されるのだから、カネの資産市場である金融市場に向かうのは当然だ。物価がうんぬん、とばかり口角泡飛ばしても平行線をたどる不毛論争になってしまう。
               現実に即した視点とは何か。まず、米国に目を転じればよい。米連邦準備制度理事会(FRB)は2008年9月のリーマン・ショック後、3次にわたる量的緩和政策をとり、短期間でドルの発行量を2倍、3倍と急増させた。ドル資金は金融市場に注入され、当初は紙くずになりかけた住宅ローン証券化商品の相場を支え、次には米国債相場を押し上げて長期金利を下げ、最終的に株価を押し上げた。個人や年金の金融資産の多くは株式関連であり、株価の上昇は家計の懐をよくする。企業は株式市場で有利な条件で設備資金を調達できる。FRBがカネを大量発行すれば実需が好転し、物価を押し上げ、日本のようなデフレに陥らずに済んだわけだ。もし、FRBが日銀理論に毒されていたら、とんでもないデフレ不況になって世界を巻き込んだはずだ。
               日本では家計が保有する金融資産の大半は現預金で、株式関連資産の比率はわずかだ。企業も平成バブル崩壊に懲りて、株式を中心とする財テクはご法度だ。つまり、米国のような量的緩和の実物経済への波及効果はゼロではないとしてもかなり薄い。
               異次元緩和の唯一と言ってもよい効果は円安だ。円安は企業収益をかさ上げし、株価を押し上げるのだが、株が上がっても上記の理由で家計消費が増えるとは限らない。円安で企業の輸出が増えるとGDPが好転するのだが、円安は断続的だし、先行きは不透明だから、企業は慎重で増えた収益を設備投資や雇用よりも、内部留保の積み増しに充当する。実需が増えないのだから、物価は上がらないのは当たり前だ。
               日本の停滞を決定づけるのは増税と緊縮財政だ。アベノミクス第2の矢は「機動的財政出動」と銘打ったが、財政出動は初年度だけで、14年度は消費税増税と公共投資などの削減に踏み切った。以来、税収が増えても民間に還流させない緊縮財政を基調にしている。政府が民間需要を萎縮させるのだから、物価が上がるはずはなく、デフレに舞い戻りだ。
               脱デフレ失敗は黒田日銀自ら招いた面がある。黒田氏は消費税増税実行を安倍晋三首相に迫り、金融緩和だけで脱デフレを実現できると大見えを切った。その背後にはリフレ派、日銀理論派とも「金融理論の貧困」があることを見逃すべきではない。(産経新聞編集委員 田村秀男)
              posted by: samu | 経済認識 | 10:02 | - | - | - | - |
              インフレ目標2%は非現実的 カネを増やしても物価は上がらない /田村秀男
              0

                田村秀男の日曜経済講座】

                イメージ 1
                 アベノミクスが始まって以来、ほぼ5年がたったが、脱デフレはいまだ成らずだ。日銀が年間で最高80兆円、国内総生産(GDP)の15%相当の巨額資金を追加発行することで世の中に出回るカネの量を増やし、物価上昇につなげるというもくろみははずれたままだ。なぜか。今回は世界のカネと物価のトレンドから考えてみた。
                 グラフは1970年以降の世界の貨幣(カネ)総量の対GDP合計比と、世界平均と日本のインフレ率の推移である。世界の通貨の基軸であるドルは、71年8月のニクソン米大統領による金の交換停止宣言により、金保有量の束縛から解き放たれた。
                 80年代にはレーガン政権による金融自由化によって、住宅ローンなどの証券化や金融派生商品(デリバティブ)が続々と登場し、カネの増殖が始まった。冷戦終了後の90年代は、マクロソフトの基本ソフト、「ウィンドウズ95」登場をきっかけにインターネットが地球全体に普及しはじめ、ネットを経由して世界の金融市場が結びついた。
                 金融のグローバル化によってカネは国境を越えて自由に移動する。ニューヨークやロンドンを拠点とするヘッジファンドによる投機が引き起こしたのが、97年のアジア通貨危機である。その後、カネの膨張は続き、GDPを上回った2008年9月に「100年に1度の大津波」と呼ばれた金融バブル崩壊、リーマン・ショックが勃発した。
                 米連邦準備制度理事会(FRB)はドル資金をそれまでの2倍、3倍と大量発行して金融市場につぎ込んだ。量的緩和によってカネの総量は増え続けていく。FRBは14年11月に量的拡大を打ち止めたが、日銀は13年4月から量的緩和を柱とする異次元金融緩和政策に踏み切った。
                 中国人民銀行はリーマン後、ドルの増発分にほぼ見合う人民元を発行し、市中銀行融資を通じてカネの総量を爆発的に増加させていく。リーマン後の世界全体のカネの増加額の約5割が人民元である。こうして世界のカネの合計額は、16年にGDPの1.3倍近くに膨らんだ。
                 金融の量的緩和政策はGDP、つまりわれわれが暮らす実体経済に比べてカネの量を増やしていけば、物価が上がるはずだという経済理論に基づいている。特にバブル崩壊後に物価が下がり続ける日本のような慢性デフレを防止できるとFRBは踏んだ。米国は確かにデフレに陥らずに済んだが、日本は依然としてデフレから脱却できない。
                 グラフのインフレ率を見よう。世界のインフレ率はカネの膨張にもかかわらず、長期的には下がる傾向が見える。その間にインフレ率が高騰したのは1970年代の石油危機、80年代末の東西冷戦終結後の経済混乱とともに起きたロシアなどの悪性インフレ、2008年の穀物など国際商品投機という具合で、いずれも一時的な出来事である。インフレ率が下がり続ける「ディスインフレ」の局面がグローバル世界では定着している。カネと物価の相関関係は薄いのが、世界経済の現実なのだ。
                 低インフレの中で金融は量、金利とも超緩和政策が継続され、カネはますます膨らんでいく。個人消費や設備投資に回らないカネは市場での投機に向かい、株価を押し上げる。世界の株式時価総額がGDP規模を上回ったとき、ITバブル崩壊(00年)とリーマン・ショックが起きたが、今年もどうやらGDPを上回る情勢だ。中国では不動産バブルが頻発している。
                 日本はどうか。インフレ率はもとより世界平均を大きく下回っている。最近20年間の大半はゼロかマイナスだ。ディスインフレの世界にいる日本が、金融緩和によってデフレから抜け出すことは至難の業のようだ。
                 国内経済が停滞し、物価も上がらないとなると、家計は消費を控え、現預金をひたすら増やす。企業も内部留保をため込み、賃上げや設備投資にカネを回さない。銀行は国内の資金需要低迷に苦しみ、米国の投資ファンドなど海外向け融資に奔走する。その結果、国際投機マネーがますます太り、新たなバブル崩壊リスクを高める。
                 異次元緩和だけでインフレ目標2%達成は到底無理だ。政府と日銀は13年1月に宣言した2%インフレ共同目標を見直し、1%程度の現実的な目標に置き換えるべきではないか。政府は同時に、国内で企業、家計合わせて年間約50兆円も増える余剰マネーを政府が吸い上げ、インフラ、教育、防衛技術など成長分野への財政支出を通じて内需拡大に振り向けるべきだ。
                posted by: samu | 経済認識 | 17:36 | - | - | - | - |
                バフェット指数が映す株価黄信号/田村秀男
                0
                  バフェット指数が映す株価黄信号 中国の不動産バブル崩壊など世界同時株安のきっかけ多数
                  世界の株式時価総額のGDP比
                   日本の株式市場はグローバル投機の大潮流に翻弄される世界の市場の一角だ。著名投資家のウォーレン・バフェット氏は株式時価総額の国内総生産(GDP)対比とする指標を参考に、株式市場の潮目の変わり目を観察している。(夕刊フジ)
                   われわれが手元のカネで日々暮らす実体経済に対し、巨額のカネが動かす資産市場を金融経済と呼ぶ。株式市場は金融経済の主役である。実体経済の規模を表すGDPを株式時価総額が上回るのは、株式市場過熱のシグナルだと、バフェット氏はみなした。
                   この見方の正当性を経済学理論で説明することは難しいが、思想的にはよくわかる。カネというのは本来、実体経済を循環してわれわれの暮らしを良くするはずなのに、中央銀行がいくら通貨を発行しても、カネは金融市場になだれ込み、株価だけを押し上げるのは経済の摂理に反すると考えられるからだ。
                  イメージ 1
                   卑近な例が日銀による異次元金融緩和だ。年間80兆円、GDPの15%ものカネを追加発行しても、GDPはほとんど成長せず、株価だけが大きく上昇する現状を良いとは、まともな倫理観を持つ者はだれも思わないだろう。
                   グラフは「バフェット指標」を念頭に作成した。1970年代後半からの世界の株式時価総額のGDP比の推移である。一国単位ではなく、世界全体でみるのは、投資マネーが世界全体をめぐるグローバリゼーションが進んだ80年代以降の現実に即しているはずだ。
                   71年8月のニクソン声明による金・ドルの交換停止以来、米国は世界のカネの根幹であるドルを金保有量の制限なしに発行できるようになった。続く金融市場自由化により、証券は多様化し発行額が膨らんで、金融経済が実体経済を圧倒するようになった。
                   金融経済の規模を端的に表すのが株式時価総額で、GDP比が100%を上回ると、米国でバブル崩壊が起きた。99年ピークのIT(情報技術)バブルと2007年ピークの住宅金融証券バブルであり、翌年につぶれ、世界の市場に波及した。
                   今はどうか。ことしの世界のGDPはもちろん未確定だが、時価総額のほうはロンドンに本部のある「世界取引所連盟」が毎月算出している。最新統計の今年9月のデータは81兆ドルで前年末を11兆ドル以上上回っている。前年の時価総額GDP比は99%だ。ことしの世界のGDPは最近の趨勢からみて1兆ドル前年より増えるとすれば、バフェット指標は106%程度になる。黄信号だ。
                   留意すべきは投機マネーだ。国境を越えて動き回る投機マネーの規模は世界の外国為替取引額でおよその見当がつく。それは06年時点で国別取引額合計が1日当たりで6・5兆ドルに上る。世界の1日当たり株式取引額の20倍近い。その巨大な潮の流れが引けば世界同時株安が起きる。北朝鮮情勢ばかりでなく、中国の不動産バブル崩壊などきっかけはいくらでもある。(産経新聞特別記者・田村秀男)

                  posted by: samu | 経済認識 | 18:20 | - | - | - | - |
                  安保妨げる「財政均衡」の呪縛/田村秀男
                  0
                     安全保障、少子化と「国難」への対処が待ったなしだというのに、衆院選は今一つ、切迫感に欠ける。与野党とも財務省が仕掛けた「財政均衡」に文字通り金縛りになっているからだ。大局を忘れ、ちまちましたカネのやりくり談義に終始する。選挙後、日本再生は大丈夫なのか。
                     一触即発の危機は北朝鮮の核・ミサイルによる威嚇ばかりではない。尖閣諸島(沖縄県石垣市)では武装船を含め、月間延べ平均10隻以上の中国公船が領海に侵入している。これに対し、憲法に「自衛隊」を書き込むのは至極当然だが、唱えるだけで相手が引き下がるはずはない。効くのは防衛システムであり、必要なのは軍資金だ。なのに、防衛費を国内総生産(GDP)の1%にとどめることに、主要政党は異議を唱えない。財政支出拡大はタブーなのだ。
                     昭和57年、アルゼンチン沖の英国領フォークランド諸島(アルゼンチン側の呼称はマルビナス諸島)に侵攻したアルゼンチン軍に対し、英首相のマーガレット・サッチャーは軍を出動させ、撃退した。サッチャーは「費用の観点から考えてはならない」と言い、戦時内閣メンバーから財務相を外した。
                     × × ×
                     日本では財務官僚が財政を仕切る。長年、用意周到に政財界やメディアに対し、財政均衡主義を浸透させてきた。増税と歳出削減による緊縮財政によって、借金せずに政策経費を税金でまかなう「基礎的財政収支(プライマリー・バランス=PB)ゼロ」の考え方だ。策謀にまんまと乗せられたのは、平成21年に発足した民主党政権だ。
                     22年6月、カナダ・トロントで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議で首相の菅直人に32年度のPB黒字化を、翌年のフランス・カンヌでのG20では首相の野田佳彦に消費税増税を、それぞれ国際公約させた。国際公約なら政権が代わっても、破棄できないと踏んだのだ。官僚に洗脳された野田は自民・公明両党を巻き込んだ「3党合意」で消費税増税法案を成立させた。
                     × × ×
                     24年に自民、公明両党が政権復帰し、首相の安倍晋三は「国際公約とは言っていない」と距離を置くが、副総理兼財務相の麻生太郎はPB黒字化、消費税増税とも「国際公約に近い」と繰り返す。財界も主要メディアも「国際公約」の大合唱だ。安倍はこの包囲網に抗しきれず、26年4月、消費税率を8%に引き上げた。
                     結果は個人消費の萎縮、デフレ圧力再燃を招いた。家計消費は安倍が24年12月に「アベノミクス」を打ち出し、めざましく回復した。だが、8%に増税した途端に急落し、いまだに東日本大震災後の不況時よりも低い。一般会計の歳出増減額から税収増減額を差し引いた値をみると、民主党政権、安倍政権とも緊縮を基調としている。
                    イメージ 1
                     安倍政権は26年度から3年間の消費税増収分の4割強を社会保障に回している。安倍は予定通り2年後に消費税率を10%に引き上げ、増収分の半分相当を教育・社会保障に振り向けるというが、心持ち還元率を引き上げるだけだ。安倍は「32年度黒字化」目標を無視したものの、PB均衡論に縛られている。
                     × × ×
                     希望の党などの「消費税増税凍結」はどうか。増税をしないで教育や福祉を充実させようとすれば、「財源はどうするのか」と自民、公明両党やメディアから突っ込まれる。小池百合子代表は苦し紛れに「ワイズスペンディングで」と横文字で答える。何のことはない。公共事業など財政支出の削減で捻出する、というわけで、やはり財政均衡主義に引きずられている。
                     いわば、与野党とも財務官僚のシナリオ通り、「PB均衡劇」を衆院選という大舞台で踊らされている。予想される結末は悲惨だ。安全保障能力は現状維持、子育て・教育支援は小出しに終始する。待機児童は相変わらずだ。経済は慢性デフレで、税収は減り、財政健全化は遠のく。
                     国難を招くPB均衡主義の呪縛から自らを解き放つ。経済の原点に立ち返る。日本には成長の原資になるカネは有り余っている。カネが回らなければ経済は萎縮する。企業が手元に留め置く利益剰余金は今年6月末で388兆円、年間で20兆円以上も増え続けている。企業は経常利益のうち6割弱しか設備投資に使わない。民間設備投資が利益を上回るのが正常な経済の姿であり、日本も平成20年に起きた「リーマンショック」前まではそうだった。
                     一方、家計は現預金だけでも残高が6月末で944兆円に上り、これもまた年間で20兆円以上も増えている。企業は海外企業の合併・買収(M&A)を盛んに仕掛けては、東芝や日本郵政のように大失敗する。利益蓄積にばかり目が向き、品質検査にカネを惜しんでごまかした神戸製鋼所のように、「モノづくり日本」の国際信用も揺らぐ。
                     × × ×
                     政府はPB黒字化を金科玉条に掲げて、増税と緊縮財政で国内需要を細らせてきた。企業が国内投資や賃上げを渋るのは当然だ。米有力誌の論文によれば、先進国で過去100年間、政府支出を減らして成長を呼び込めた事例は一つもない。日本は9年の橋本龍太郎政権の緊縮財政以来、財政健全化と経済成長にも失敗してきた。
                     民間の手ではカネが動かないなら、政府がカネを吸い上げて、実体経済に行き渡らせるしかない。国債は経済の成長によって返済可能になる。成長をもたらすインフラ投資用の建設国債は該当する。将来の人材を育成するための教育国債も、防衛技術を開発するための防衛国債もあって当然だ。コンピューター、インターネットなど米国発のイノベーションの原動力は国防予算による。
                     PB均衡至上主義を廃棄すれば、一夜にして日本再生の方策が一斉に開花する。国難のときだからこそだ。(敬称略)
                    posted by: samu | 経済認識 | 10:19 | - | - | - | - |
                    】「経済敗戦」に終止符を 成否の鍵は財政出動にあり田村秀男
                    0
                       終戦の「8月15日」から、まもなく72年がたつ。最近の20年間、日本経済はデフレのふちに漬かったままだ。安倍晋三首相がいまだに「経済再生・脱デフレを最優先する」と繰り返すのは、何とももどかしい。中国は停滞日本を押しのけて急膨張を遂げ、傍若無人に振る舞う。改造内閣の使命は、直ちに「経済敗戦」に終止符を打つことだ。成否の鍵は国家の財政政策にある。
                       7月末、ワシントンでは国際通貨基金(IMF)の対日年次審査報告書が発表された。日本経済新聞は「アベノミクスは目標未達」との見出しで報じ、あたかもIMFがアベノミクスに低い評価を下したかの印象を与えたが、報告書に目を通すとさにあらず。「アベノミクスは経済状況を改善した」と称賛している。
                      イメージ 1
                       脱デフレ目標は「未達」だが、達成のためには財政支出を活用した成長戦略が必要と指摘している。平成26年4月の消費税率8%への引き上げによる経済失速後は、昨年秋の政府の大型補正予算の効果が上がっていると分析している。安倍首相が今年4月に予定していた消費税率10%への引き上げを、2年半先送りしたことも正しいとみる。
                       「財政収支の健全化」については中長期的な課題としながらも、短期的には財政刺激策が経済成長率とインフレ率の上昇につながると診断、政府が29年度以降、緊縮財政に舞い戻ることがないよう勧告した。要するに、当面は財政出動をためらうな、というわけである。
                       IMFの対日報告といえば、これまでほぼ日本の財務官僚の意向に従って緊縮と増税による財政健全化を求めてきた。拙論はリーマン・ショック(20年9月)以来、本欄などで財政・金融緩和の両輪を回せと主張し、緊縮財政を求めるIMFの対日報告は日本にデフレを押し付ける誤った処方箋だと批判してきた。
                       昨夏、ノーベル経済学賞受賞者のクリストファー・シムズ米プリンストン大教授が、脱デフレのためには金融緩和政策偏重では無理で、財政出動の併用が必要との「シムズ理論」を発表して以来、米経済学界では財政の役割を重視する考え方が広がっている。市場原理主義・金融偏重のIMFも、宗旨変えせざるをえなくなった。
                       グラフはリーマン前からの財政の緊縮・拡張度合いと個人消費の伸び率を対比させている。緊縮・拡張度は社会保障、公共事業、教育など一般会計の政策関係支出合計額の前年度との差額から税収の前年度との差額を差し引いて算出した。政府支出が多くなっても、民間の稼ぎを吸い上げる税収の増加分を下回れば緊縮型(数値はマイナス)、上回れば拡張型(同プラス)とみなした。特別会計や地方自治体会計を含まず、一般会計に限っているので財政の緊縮・拡張規模を正確に表してはいないが、トレンドはつかめるはずだ。
                       日本財政は緊縮と拡張の繰り返しで、景気が少しでも上向けばすぐに財政を引き締める一貫性のなさが目立つ。安倍政権は25年度からアベノミクスを本格化させたが、その前の民主党政権時代と同じパターンの繰り返しだ。26年4月からの消費税増税を含む財政緊縮とともに、個人消費はリーマンショック後を上回る急激な落ち込みぶりで、アベノミクスは死にかけたが、昨年秋の大型補正予算による財政出動で蘇生(そせい)しつつある。
                       問題は今年度、さらに編成準備に入った来年度予算である。今年度当初予算を前年度決算と比較すると、グラフが示すように民主党政権末期のような大型緊縮になり、せっかく軌道に乗りかけた景気を冷やし、脱デフレどころではなくなるだろう。
                       与党内部から今年度も大型補正予算を求める声が出るのは無理もない。それでも、当初予算で緊縮し、補正で追加するのはいかにも場当たり的、泥縄式だ。当初予算こそが重要だ。まず支出削減ありきの予算編成は不毛な結果しか生まない。企業は内需の先行きを見通せないと賃上げや雇用に慎重にならざるをえないし、消費者は将来に不安を抱く。
                       中長期的なプログラムに基づき教育、防衛、基礎研究、防災インフラに支出を回し、若手を育て、安全を確保しつつ経済成長の道筋を明示する。そのためには国債増発もためらうべきではない。実体経済に回らず、たまる一方のカネは企業の利益剰余金、銀行の日銀当座預金合わせて700兆円を超える。その一部、100兆円を政府が吸い上げ、財源にする。経済再生のための100兆円プラン、経済敗戦から抜け出すのは政治の意思次第なのだ。
                      posted by: samu | 経済認識 | 21:07 | - | - | - | - |