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「除染目標の年間1mSv」、こだわるべきではない/川合 将義
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    原発事故の起こった福島で、機会あればさまざまな形で原子力と放射線についいて説明しています。原子力にかかわってきたものの責務であると考えるためです。除染をめぐる質問で、長期目標に設定された年間追加被ばくの1mSv(ミリシーベルト)が正しいのかということです。私の行う説明を皆さんに紹介し、少しでも福島の不安を和らげたいと考えます。

    年1mSvという基準は過剰に安全に配慮したものです。

    (1)1mSv/年のリスクはどの程度か


    図1 放射線量と発がんの関係
    出典:小笹:京都府医大誌, 120, 903(2011)

    放射線の被ばく影響は、広島と長崎原爆被災者に対する放射線影響協会の疫学調査で調べられています。右図に示すように、200mSv以上で、過剰相対危険度(リスク)が、被ばく量とともに上昇すること、ほぼ線形になっていることが分かります。民間団体で世界各国の政府に放射線の防護基準を提言するICRP(国際放射線防護委員会)は、この結果に基づいて、100mSv被ばく当たり(生涯)がん死亡率は0.5%と評価しました。ただし、これは放射線防護の考え方を論じたものであって、その確率で必ずがんになるということではありません。そして、放射線に関わる業務を行っている職業人の被ばく限度は、平均的には20mSv/年としています。(5年間積算で100mSv、単年度で最大50mSvというのが規則)

    これを交通事故死のリスクと比較します。この場合に、気をつけなければいけないのは、単位をそろえることです。交通事故死は、よく10万人当りの死者数で表されていますが、上記の放射線の影響は、生涯死亡率の増加で表されています。生涯死亡率は、概ね平衡状態にあると考えれば、その年の死者数の割合で計算できます。

    原子力学会の放射線影響部会が著したサイエンスポータル第225号より採った2008年の我が国死者数と死亡内訳を表1に示します。これによれば、生涯死亡率について、がんが30.1%、交通事故死が0.66%です。その放射線被ばく100mSvによるがん死亡率0.5%は、交通事故死の0.66%とほぼ同等であることが、分かります。

    また、この時の全死者数約90万人から10万人当りの死者数の4.5人と割合(リスク係数)の4.5×10-5が得られます。上表により、放射線を業務とする人と一般人のリスク係数を計算してみます。

     職業被ばく 20mSv/年: リスク係数= 9×10-6
     一般人   1 mSv/年: リスク係数=4.5×10-7

    表1  2008年の我が国の死者数と死亡内訳

    上記の値は、ともに交通事故の場合の5.9×10-5に比べれば、かなり小さく、この値を超えたからと言って、危険を示唆するものではありません。

    (2) 低線量被ばく影響

    広島・長崎原爆による被ばく影響の調査やその後の医療従事者や原発作業者に対する調査結果において、100mSvより低い線量では、影響が低いために統計的に有意なデータが得られていません。一方で、がんの放射線治療において、100mSvの低線量全身照射や免疫をつかさどるひ臓への照射が、がんの転移に対して抵抗が増すという東北大の坂本博士の報告があります。がん患者という正常者とは違った状況にあるため、同一視できないかも知れませんが、これは朗報と言っても良いと思います。とにかく低線量であれば影響は低いということは信じてよいでしょう。

    人は、自然放射線にさらされています。それでも、がんが多発することはありません。がんの発生は、人の細胞中のDNAが異常を来たし、異常な速度の細胞分裂を起こすことによって起きます。そのDNA損傷は、放射線やストレスによって作られた活性酸素や、放射線が直接DNAに当たってできます。しかし、損傷したDNAの多くは修復再生されます。また、再生し損ねて生み出された異常細胞は、アポトーシスといって自然消滅したり、白血球などによってほぼ駆除されたりします。

    このように人体には、何段階もの放射線に対する防御機構が備わっています。ただし、それらの機能は個人差があり、また若いほど強いと言えます。老齢化して免疫力が弱くなると、体内にひそんでいたがん母細胞が突然に増殖し出して、発ガンするようになります。そのため、特別に被ばくしなくても男子の場合30%の人ががんによって死亡します。

    100mSv以下の低線量被ばくよりも、ストレスの影響は大きいとされています。一つのデータを示します。産業医大・放射線衛生学講座「放射線学入門」中の資料によれば、活性酸素によるDNAの2本鎖切断が、放射線を浴びた場合も日常のストレスでも起こります。放射線を1日1mSv浴びた場合に比べて、ストレスの方が300倍も高いのです。この日常のストレスの大きさと比較すると、後述する自然放射線による年間2-3mSvの被ばくや、医療被ばく(胃のX線検査で0.6mSv/回、CT検査で5-30mSv)の影響は、かなり低いと言えます。

    ICRPは、前述した放射線被ばくにおけるリスク係数の低さや、上述の生体の防御機能の効果や日常ストレスの影響も考慮して、事故時の避難勧告の線量として、20-100mSvのいずれか適当なレベルで決めなさいと言っている訳です。

    (3) 除染との関係

    除染は5mSv/年を目標として、福島県伊達市や郡山市でスタートしました。ところが、2011年4月の小佐古内閣府参与が、その科学的根拠は不明なのに「学校における20mSvの被ばく基準は高すぎる」と泣いて辞任をしました。その後で、マスコミが主導する形で、除染目標を1 mSv/年にする声が高まりました。当時の福島問題担当の細野豪士環境大臣がこの基準の受け入れを表明し、2011年10月に、国が年間追加被ばくが1mSvとなる地域を除染対象域とすることになりました。新しい除染基準のため、除染対象地域が非常に広がりました。

    当然、除染にかかる予算も巨大化しています。また除染を急いで欲しいという住民の気持ちも冷やされ、除染のはかどりが悪くなりました。一部の自治体の首長さんまでもが、「1mSv未満にしなければ帰還できないので、避難区域の解除は認められない」と主張しました。

    2013年に来日したIAEA調査団は、こうした状況を見て、「除染で年間1mSvの目標にこだわらないで」という内容の勧告を出しました。

    この問題では、その節目ごとに、「なぜ1mSvなのか」の意味付けがなされなかったのと、国もそれまでの形式的な説明を繰り返すだけでした。しかし、私が示したように、免疫が勝る限り100mSv以下ではの健康被害は、ほぼありえません。そして福島の住民の被ばく量は、事故後の経過を考えても10mSv以下の人が大半で、健康に影響はありません。ストレスの無い生活が重要です。それなのに、いまだにマスコミも含めて一般には、この意味はよく理解されていません。

    (4) 除染の効果、限界、主要都市の除染後の空間線量率

    除染は、国のガイドラインに基づいて行われます。除染の効果は、除染の前と後での地上1m高さでの空間線量率の低減割合で評価しますが、放射線は、除染した外からもやってくるため、その場所をきれいにしても下がりません。

    局所的に放射性物質が多くたまった「ホットスポット」だと、除染すると7−9割下がります。しかし、が、平均的な線量だと、半分も下がりません。計算によれば、半径を1kmぐらいを除染すると、本当の効果が見えます。


    図2 事故1か月後の福島県の空間放射線量
    出典:文部科学省

    右図は、航空機モニタリングによる地表1m高さの空間線量率であり、2013年11月19日現在の線量に換算されています。モニタリングポストの結果によれば、中通りの比較的線量が高かった福島市、郡山市等の放射線量は、0.24μSv/時間を切っています。また、伊達市の一部で0.5μSv/時間です。さらに、田村市や川内村等の除染特別地域も、平均的には、0.4および0.7μSv/時間です。これらの空間線量率を5倍して得た数字が、mSv/年単位の年間追加被ばく量の概算値です。福島市等の中通りの主要都市は、概ね1mSv/年で、高いところで2.5mSv/年です。

    (5) 自然放射線被ばくとその影響

    自然界には、宇宙線とともに、天然のカリウム中1万分の1含まれているカリウム40やラドンなどからの自然放射線があり被ばくします。食品を通じて取り込まれます。そのため、我々の体内にも、7000ベクレルもの放射性物質があて、内部被ばくします。そこで、国連科学委員会の資料UNSCEAR 2000に基づいて、国別に自然放射線による年間あたりの被ばく量を計算して図にまとめてみました。日本は2.1mSv、世界平均は、2.4mSvです。日本に比べて、北欧の高さが目立ちます。

    図3

    (6)福島での被ばく

    福島の中通りの人が受ける放射線量は、日本平均の自然放射線被ばく量にセシウムによる追加被ばくの0-2.5mSvを加えたものです。これは、ヨーロッパで受けるのと、ほぼ同等だということが、上のグラフで分かります。また、国別のがん死亡率と年間被ばく量に関係があるかも調べてみましたが、自然放射線による違いの影響は見られません。

    食物を通じた内部被ばくも、福島の食品は多くが基準値よりずっと低く、最近のWBC検査でもセシウムの検出例は少なく、1mSv/年を超えた人はいません。これを日本政府が世界にもっと強く主張すれば、福島に対する、また、日本に対する海外の風評被害もずっと緩和できたと確信します。

    (7)まとめ

    放射線被ばく1mSvのがん死亡リスクは、4.5×10-7で、交通事故死のリスクの5.9×10-5に比べて2桁以上小さく、リスクはきわめて低いと言えます。また、福島の被ばくは、自然放射線とセシウムによる寄与を足しても、ヨーロッパでの自然放射線による被ばくと同じか、それより低いと言えます。自然放射線による被ばくの差でがんによる死亡率に差が無く、健康影響はないと、安心してよいと言えます。

    また除染についても、「除染目標の年間1mSv」にこだわるべきではないというIAEAの主張は妥当です。住民の方のご意見を聞きながら、復興を促進するために、除染の目標を地域ごとに柔軟に変更するべきでしょう。

    私の示したことは、多くの有識者、そして福島の住民の方が繰り返し述べてきたことです。しかし、その不安の払拭のためには、一段の定着が必要です。福島復興の加速と、日本社会を明るくするために、福島の放射線の状況と放射線影響について、不安にとらわれることなく、正確な情報を伝えていきましょう。

    (2015年2月9日掲載)

    高エネルギー加速器研究機構名誉教授
    ///////////////
    中山恭子先生を応援し支える心優しき保守の会 Facebookより

    「除染目標の年間1ミリシーベルト」、こだわるべきではない

    中山先生、この問題も何とかして下さい。

    除染は5ミリシーベルト/年を目標として、福島県伊達市や郡山市でスタート。ところが、2011年4月の小佐古内閣府参与が、その科学的根拠は不明なのに「学校における20mSvの被ばく基準は高すぎる」と泣いて辞任をし、その後で、マスコミが主導する形で、除染目標を1 mSv/年にする声が高まった。当時の福島問題担当の細野豪士環境大臣がこの基準の受け入れを表明し、2011年10月に、国が年間追加被曝が1ミリシーベルトとなる地域を除染対象域とすることになった。新しい除染基準のため、除染対象地域が非常に広がり、除染にかかる予算も巨大化している。また除染を急いで欲しいという住民の気持ちも冷やされ、除染のはかどりが悪くなり、一部の自治体の首長までもが、「1ミリシーベルト未満にしなければ帰還できないので、避難区域の解除は認められない」と主張している。2013年に来日したIAEA調査団は、こうした状況を見て、「除染で年間1mSvの目標にこだわらないで」という内容の勧告を出し...ている。

    つくる会の尾形氏は11月7日、次のように言っている。昨日のTVニュースで福島の除染費用の事を報道していた。当初の政府見積もりは2.1兆円だったが既に3兆7500億円に達し更に兆円単位で膨らむ見通しだという。(メモは取っていませんので、数字に聞き違いがあるかもしれません)。山野で伸びた樹木の伐採などで費用が嵩んでいるということです。このニュースを聞いて思い出したのが、プロメティウスの神話。人に火を教えた罰で、ゼウス神はプロメティウスに巨岩を山頂に運び上げさせる。山頂に上げた岩は、直ぐに転げ落ちる。プロメティウスはこの作業を永遠に繰り返す。今一つは、GDPを上げるには、「穴を掘っては、埋める」作業を繰り返すだけでも良い、ということです。要するに「無意味な作業」ということです。福島の「1ミリシーベルト以下までの除染」は"無意味”な作業です。(つまり、民主党政権がそんなナンセンスな"努力目標”を口にしなければ無かった除染なのです)。これが広島・長崎の被曝の後の復旧・復興作業であれば大いに意味があります。広島では原爆の熱線で曲がった線路を直し、何と、3日後には路面電車が走り始めて、人々に勇気を与えています。

    長崎では、爆心地で被曝し工場が蒸発してしまい1400人以上が犠牲になった三菱製鋼所長崎工場の復活に、原爆投下時に工場の地下室に居て奇跡的に助かった久保田工場長が、直ぐに復興に立ち上がっています。

    今、福島で除染作業に携わっている作業員たちは、単なる「公共事業」という感覚ではないでしょうか。しかも、予算も期限もないのです。これを「有難い」と考えるか、「虚しい」と考えているかは分かりませんが、少なくと「危険な作業」とは全く考えていないと思います。4兆円あれば海・空自衛隊や海保などの装備増強がかなりできると思うのですが。それを全く考えない現下の日本はどうなっているんでしょうか?尤も、菅直人先生はじめ民進党の皆さん、共産党の志位さんや福島瑞穂などの皆さんは、「だから素晴らしい」、と小躍りしてお喜びでおいでだと思ますが・・・。勿論、朝日や進歩的な識者の方々は言うまでもありません。

    posted by: samu | 原子力政策 | 18:09 | - | - | - | - |
    「 あまりに露骨、司法のイデオロギー化 」櫻井よしこ
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      『週刊新潮』 2016年3月24日号
      日本ルネッサンス 第697回

      日本は果たして公正な国か、国民は究極的に国を信頼できるのか。
       
      この問いへの回答は、司法が良識と法律に適った判断を下しているか否かという中にある。司法は国民にとって社会や国の公正さを信ずる最後の拠り所である。司法の健全さは、その国が国民によっても世界によっても信頼される鍵だと言ってよい。
       
      たとえば国家としての中国はおよそ信頼に値しないが、その理由をダライ・ラマ法王14世はこう語っていた。

      「司法の独立がないことが中国の最大の問題であり、悲劇です。司法は中国共産党に従属し、判事の任命も判決も共産党の了承なしには不可能です。判決は法ではなく、政治的イデオロギーに基づいて下されます。中国の司法は事実も真実も認定できず、独裁政治を支えることによって、中国社会を蝕んでいます」
       
      では日本の司法はどうか。中国とは異なり、わが国には言論、思想信条の自由がある。三権分立も確保されているはずだ。しかし、さまざまなイデオロギーの呪縛から解放されているわけではない。それが司法の公正さを歪めているのではないか。
       
      3月9日、大津地方裁判所の山本善彦裁判長が関西電力高浜原発3、4号機の運転差し止めを命じた仮処分には驚いた。
       
      右の高浜原発3、4号機は昨年2月、原子力規制委員会(規制委)の新規制基準に合格、再稼働に向けて準備中のところを住民の訴えを受けた福井地裁によって昨年4月、再稼働差し止めの仮処分が出された。関西電力が異議を申し立て、同じ地裁の異なる裁判官が再審査し、仮処分を取り消したのが12月だった。
       
      関電は今年1月には3号機を、2月には4号機を再稼働させた。しかし今度は、大津地裁が運転差し止めの仮処分を下したのである。

      反原発イデオロギー
       
      山本裁判長が挙げた仮処分決定の理由は、➀福島原発事故の徹底した原因究明がない、➁新規制基準はただちに安全性の根拠とはならず、過酷事故時の安全対策が十分とは証明されていない、➂原発の安全性の立証責任は関電側にもあるが、関電は十分説明できておらず、判断に不合理な点があると推認される、などである。
       
      決定文を読んでみて、この仮処分はどう見ても不公正だと思えてならない。反原発イデオロギーに染まった結論ありきの判断だったのではないか。
       
      たとえば➁について規制委の田中俊一委員長は、日本の安全基準が世界最高レベルに近づいているという認識を変える必要はないと語り、国際社会の多くの専門家も、日本の安全基準については同様の評価をしている。こうした内外の専門家の評価を、山本裁判長はどういう根拠で否定するのか示していない。
       
      裁判所が提起した➁及び➂を含む争点について、実は関電側は詳細な説明及び資料を提出しているのである。彼らは計14通、843頁に上る主張を行い、提出した立証資料は219通だと発表した。だが、裁判所は関電側に十分説明する機会を与えなかったと言うのだ。関電は十分説明できていないのではなく、裁判所が十分な説明をさせず、一方的な審理を進めたのではないか。
       
      北海道大学大学院工学研究院教授の奈良林直氏は裁判所の審理に対する姿勢以前に、仮処分決定の「前提事実」が間違っていると指摘する。

      「裁判官は原子炉の仕組みを誤解しています。誤解というより、全く知らないのだと思います。その結果、前提においても判断においても間違っているのです」
       
      たとえば、決定文の2頁以降、「(3)原子力発電の仕組み」の「オ」の欄にはこう書かれている。

      「1次冷却材の喪失(以下「LOCA」という。)が発生したときは、原子炉容器を冷やすことができず、発生した熱によって原子炉容器内の燃料集合体が損傷し、燃料集合体ないし1次冷却材中の放射性物質が外へ漏れ出し、(中略)最終的には、本件各原発から放射性物質が放出される」
       
      奈良林氏が説明した。

      「LOCAが起きた場合、つまり、原子炉容器内の燃料冷却材が失われた場合、ECCSと呼ばれる非常用炉心冷却系が作動するように設計されているのです。そうすると炉心に水が注入され、炉心全体が完全に冠水します。高浜原発3、4号機もそのように設計されています。水で満たせば冷却できるわけで、燃料集合体も損われません。さらに格納容器スプレイで格納容器全体を冷やすように設計されています。
       
      この一連の冷却が確実にできることを全ての原子力発電所の設置時に安全審査を行って、世界中の実験結果や解析資料をもとに証明し、初めてその原子炉は安全である、合格であると認められるのです。この点を無視して危険だと断じたのは、裁判官は、世界中の専門家たちが知恵を絞った原子炉の安全性確保の設計と原子炉設置許可の厳格な審査を全く理解していないということです」

      まだ1基もない
       
      決定文にも矛盾がある。債権者、つまり仮処分を求めた住民らのテロ対策に関する主張として、38頁には「EUでは、原子炉にコアキャッチャーを付けること及び格納容器を二重にすることが標準仕様となっているが、原子力規制委員会は、このような整備を要求していない」と記述されている。
       
      コアキャッチャーとは原子炉の炉心がメルトダウンするとき、溶けた燃料の溶融物を受け止めるための耐熱設備である。

      「たしかにいまフランスで建設中の欧州加圧水型原子炉(EPR)にはコアキャッチャーは組み入れられています。しかし、ヨーロッパで現在運転中の原子炉にはコアキャッチャーを導入しているものは1基もありません」と奈良林氏。
       
      二重の格納容器は、航空機が突っ込んでくるようなテロに備えるという考え方から生れたものだが、これも将来は別にして現在、標準仕様になっているわけではない。
       
      第一、山本裁判長は決定文の52頁「(2)争点5(テロ対策)について」の項で「債務者(関電)は、テロ対策についても、通常想定しうる第三者の不法侵入等については、安全対策を採っていることが認められ、(中略)新規制基準によってテロ対策を講じなくとも、安全機能が損なわれるおそれは一応ないとみてよい」と書いている。
       
      だとすると、世界最高水準の新規制基準が世界と較べて見劣りする点はひとつもない。この基準のどこが不十分だと言うのか。再稼働差し止めに走る余り、論理に整合性を欠くことにも気づかないのではないか。

      posted by: samu | 原子力政策 | 09:51 | - | - | - | - |
       震災5年であらためて考える原子力規制委の権限と在り方 」桜井よしこ
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        『週刊ダイヤモンド』 2016年2月6日号
        新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1119

        「読売新聞」が「震災5年」と題して、東日本大震災の当事者たちの証言を連載している。1回目は宮城県南三陸町町長の佐藤仁氏、2回目は福島県飯舘村村長の菅野典雄氏だった。小町村の首長がどのような思いで震災に向き合い、住民を守ろうとしてきたか、読めば胸を締め付けられる。当事者の皆さん方の思いはどれほどのものかと思う。
         
        そして連載3回目、班目春樹氏(元原子力安全委員会委員長)の証言を読んで、当時の民主党政権の愚策にあらためて憤りを覚えた。3・11発生の夜、氏は官邸に招集された。氏の役割は菅直人首相(当時。以下同)への助言である。ところが東京電力や現地の保安検査官からの情報は、一切班目氏らには伝えられなかった。首相補佐官の細野豪志氏が福島第1原子力発電所の吉田昌郎所長と電話で連絡を取り合っていたことも、伝えられなかった。

        「それを私は知りませんでした。後で知ってがくぜんとしました」と氏は証言している。
         
        情報が極度に少なく、手元にある限られた情報さえも共有できなかったのが菅政権の実態だった。氏は3月12日朝にヘリコプターで菅首相と福島第1原発を視察したときのことを次のように語っている。

        「東電の武藤栄副社長の説明はとても参考になりました。(中略)次の対策を考えるため、原発で何が起こっているのかをもっと聞き出したかった。ところが、首相はその話を遮ってしまった。大事な機会を逸しました」「原子力を知らない政治家との対話には苦労しました」
         
        氏の証言は専門家としての後悔の言葉で満ちている。例えば、11日夕方、原子炉を冷やせない緊急事態になったとの報告が東電から届いたとき、「大丈夫だ」と思い込んでしまった。自らの甘さを責め、「結局、私は何ができたのか。今も同じ問いを繰り返す日々です」と語っている。
         
        班目氏はいま、あの事故で起こったことを忘れないうちにまとめるべく執筆しているという。日本が2度と同じ間違いを繰り返さないためにも、氏の著作は重要な意味を持つはずだ。
         
        各種の事故調査報告書によって明らかにされたのは、3・11の被害を拡大させた要因の1つが菅政権だったということだ。自身の知識をひけらかして現場の混乱に拍車を掛けたのが菅首相だが、氏の肝いりで設置されたのが原子力規制委員会である。日本の原発再稼働阻止の意図で設置した機関だと、菅首相自身が「北海道新聞」の取材で語ったように、強い政治的意図を背景にした規制委は、原発や放射能の安全を高めるという本来の仕事をしてきたのだろうか。
         
        その問いに国際原子力機関(IAEA)の専門家チームが答えてくれた。12日間にわたって調査し、「迅速な改善、しかし、課題あり」という暫定評価を公表した。そこには規制委に対する厳しい意見が書き込まれている。
         
        IAEAが規制委の改善すべき具体例として筆頭に挙げたのが「もっと能力のある経験豊かな人材を集め、教育、訓練、研究および国際協力を通じて原子力と放射能の安全に関係する技術力を上げるべきだ」という点だ。
         
        原子力施設の検査をより効率的に行えるように、関連行政手続きを修正すべきだとの指摘もされた。
         
        規制委に関しては活断層問題をはじめ、科学的根拠を欠く議論が注視されてきた。原発再稼働の申請に当たって無意味なほど大量の文書を作らせたこともすでに明らかにされている。
         
        国際社会の権威から「能力ある人材を集めよ」と言われてしまう規制委に、わが国は内閣からも独立した強い権限を与え、国の未来を決するエネルギー政策の根幹を任せているわけだ。規制委に助言する専門家集団の設置が必要だと強調するゆえんである。

        posted by: samu | 原子力政策 | 10:11 | - | - | - | - |
        中国、「原発輸出」技術に自信なく日本へ「支援要請」する/勝又壽良
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          中国、「原発輸出」技術に自信なく日本へ「支援要請」する 1月16日 勝又壽良
           

          「中国製原発を受け入れる英国でも、『中国に原発建設を許可したのは愚の骨頂だ』(英ガーディアン紙)と異論が広がっている。『中国製原子炉を採用するのはあくまで原子力規制当局の審査をクリアした場合に限られる』(英王立防衛安全保障研究所のスクワーク研究員)といった冷ややかな見方も多く、審査次第で中国政府の意向通りにならない可能性も十分にある」。

          英国ユニバーシティー・カレッジ・ロンドンエネルギー研究所上席研究員、ポール・ドーフマン氏 は、次のように中国製原発の問題点を指摘している。

          「中国の原発の安全性、透明性に対する国際的評価は低い。英国の規制当局は2016年から中国製原子炉の審査手続きに入る予定だが、最低でも4年かかる上に、クリアできるかどうかは不透明だ。さらに中国については、英国に対するサイバー攻撃の疑いが長年指摘されており、安全保障の観点からも多くの懸念が持たれている」(『毎日新聞』12月30日付)。
           

          ここでの指摘は、想像以上に厳しい内容だ。中国という国家自体への信用が低くて、安全保障の観点からサイバー攻撃に晒されると危惧している。もう一つ、2016年から最低でも4年かかる技術審査を必要としている。実は昨年11月、中国原発メーカーが日本企業へ技術協力の要請していたのだ。中国側の苦しい技術的隘路の現実を垣間見せている。前記の毎日新聞は、次のように報じた。
           

          「15年11月、中国大手原発メーカー2社のトップ、中国核工業集団の銭智民社長と国家電力投資集団の王炳華会長が揃って訪日。『海外での原発建設に力を貸してほしい』。2人は日本の大手電機メーカーに原発輸出での協力を打診していた。核工業集団の銭社長は電機大手の日立製作所を訪問、原発輸出時に不可欠な地盤調査から建設資材の調達、建設工程や保守点検まで広範にわたる分野で協力を求めた。複数の関係者によると銭社長は中国政府が原発輸出を加速させる中、輸出先での安全審査への対応が遅れることを以前から懸念していたという。電力投資集団の王会長は電力大手Jパワー(電源開発)と日立のほか、東芝も訪問。銭社長と同様に原発輸出への技術面での協力を打診した」。
           

          日立と東芝は世界的な原発メーカーである。いずれも米国の原発メーカーを傘下におさめている。この実績を背景にした日本企業へ参加の打診をしてきたものだ。本来ならば、そうした下準備をすべて終えてから、海外への商談をするのがビジネス慣行である。話しはあべこべで、受注してから大慌てで技術的な弱点をカバーする。中国商法の「危うさ」はいかんともし難い。「デタラメ」というか、形容詞も浮かばないのだ。
           

          この動きを察知した日本政府の対応も早かった。まんまと中国へ技術流出しかねない瀬戸際である。粉飾会計で問題を起こした東芝については、次のような対応策を検討している。

          「官民ファンドの産業革新機構と経済産業省は経営再建を進める東芝の事業再編を支援する。 革新機構は東芝などと具体的な支援策の協議に入った。16年3月までに中身を詰める。原発事業の再編も視野に入れている。東芝は子会社の米ウエスチングハウス(WH)社を通じ、加圧水型軽水炉(PWR)、本体で沸騰水型軽水炉(BWR)を手掛けている。世界的に主流を占めるPWRに経営資源を集中し、事故を起こした東京電力福島第1原発と同型のBWRは他社との提携を模索している。革新機構を所管する経産省は原子炉技術の国外流出を防ぐため、国内の同業他社との連携が望ましいと考えている」(『日本経済新聞』12月31日付)。
           

          中国は、日本からすでに新幹線技術を掠め取っている。次は、原発技術を狙っているのだ。二度の失敗は許されない。断固、技術の漏洩は阻止しなければならない。あたかも、自国だけで生み出した技術のごとく言いふらす。そのマナーの悪さにも辟易するのだ。中国は、「謙虚さ」という言葉と無縁な存在である。
           

          「原発輸出で存在感を高める中国だが、実際に原子炉をしっかり制御できるかは不透明だ。特に原発運転に関しては人材不足の指摘が少なくない。中国では原子力関連の学科を持つ大学が65大学あり、学生数は1万人を超える。中国国内で建設中の27基がすべて稼働すれば間違いなく経験のある人材の不足は深刻化するとみられる。中国の政権トップ主導で進む売り込み攻勢には、輸出の担い手、原発メーカー首脳ですら不安を募らせている」
           

          大量原発の同時操業とは、極めて危険な話しである。経験の蓄積がないままに、多数の原発が同時に稼働することのリスクは計り知れない。習近平氏は、そうしたことにはお構いなく、「見栄」で原発大国を狙っているに違いない。唐突に見える中国原発メーカーから日本メーカーへの協力打診には、中国が直面する技術基盤の脆弱性を表している。



          経済日記と経済展望ブログより(私のコメント)

          中国がビジネスパートナーとして信用が出来ないのは、新幹線ビジネスでも明らかですが、次は原子力発電の技術協力を申し出て来ている。中国人の強心臓には驚きますが、日本人のお人好しも驚かざるを得ない。もちろん中国の原発に関してはフランスも熱心であり、アレバ社は経営不振であり中国市場は命綱だ。

          原子力発電所は作りながら技術を高めて行かなければ出来ない。福島原発がやられたのも初期の原発だからであり、安全対策も経験を重ねる事で向上してきた。日本の原発も50年以上たって解体の時期が来ている原発もありますが、これも経験を重ねて行かないと解体技術は進まない。

          中国の原発は、フランスからの技術協力によるものなのでしょうが、フランスはイラクにも原発輸出してイスラエルに爆撃されている。中国は最新の原発をイギリスから受注しましたが、イギリス政府は本気で中国製の原発を受け入れるのだろうか? 中国の原発技術は年数が浅くて実績面で不安がある。

          韓国もUAEから原発輸出契約を獲得しましたが、パククネ大統領が起工式に参加したというニュースを最後に音沙汰がない。無茶苦茶な破格条件で獲得した契約だけに大丈夫かと見ていましたが、音沙汰がないという事はどこかでストップしてしまっているのだろう。

          中国の原発輸出も契約時点では世界に華々しく広報されますが、韓国の原発輸出と同じような展開になるのではないだろうか。インドネシアの新幹線輸出も日本との競争に勝って契約しましたが、さっそく年内着工が遅れている。中国や韓国とは破格の条件で契約しても後がちゃらんぽらんだ。

          勝又氏のブログにあるように、中国の原発開発の責任者が日本に技術協力を申し込んできたという話ですが、いかに日本やアメリカやフランスが中国に対して技術援助をしてきたかを裏付けている。家電などの技術は民製品だから問題も少ないですが、原発ともなれば国防にも関係してくる。

          中国はAIIBで日本やアメリカから資金を出させて原発技術も提供してもらえると思っていたようだ。原発も最新式となれば使用する部品も高性能な部品が使われますが、韓国や中国ではその中核部品が作れない。例えば韓国ではまだ存在していない超高性能なケーブルを使用する設計になっていてもそのケーブル一本出来ていない。日本から買うつもりだったのだろう。

          このような中核技術が出来ていないのに、最新式の原発を売り込んでいる。韓国がUAEに売り込んだ原発も韓国では実際に運転も出来ていない。UAEも運転実績を見てからと言う条件もクリアできていないので膨大な違約金が出ているのかもしれない。中国の新型原発も同じであり中国でも建設途中のものだ。

          中国や韓国の原発輸出の問題の根源は実績が無い事であり、実績がなければロイズの保険もかけられない。保険が無ければ資金面での調達も出来ないから工事がストップしてしまう。中国や韓国の目論みとしては契約は獲得しても実際の工事は日本にやらせるつもりだったようだ。つまり日本企業を下請けに使ってやるつもりだったのに、60年の補償契約では誰もがしり込みする。

          原発の輸出は金額が大きいだけに中国や韓国も力を入れているのでしょうが、まるで実績も無く信用も無い。フランスのアレバ社もフィンランドの原発建設で大赤字を出していますが、安全性を高めるには相当なコスト高になるのだろう。

          日本の原発輸出にしても新幹線輸出にしても中国や韓国のダンピング攻勢にやられっぱなしですが、原発も新幹線も高度な技術を持たなければ大事故につながる。中国にしても資金力が怪しくなって来ており、海外投資では多くのプロジェクトは失敗しているようだ。石油・資源投資でも最近の暴落で失敗しているはずだ。

          中国や韓国は、世界の道路建設や橋やビル建設などのプロジェクトを次々と獲得してきた。しかしビル建設などでは、あまりものダンピングで建てて業者は倒産して建てたビルが傾くといった話も出てきている。だから中国にはやりたいでけやらせて失敗するのを見ていればいい。大前研一氏は次のように言っている。


          大前研一氏 中国の海外プロジェクトはことごとく頓挫と予測 2015年12月22日 ZAKZAK

           しかし、他の国では土地は私有だから、そういうわけにはいかない。高速鉄道や高速道路といったインフラプロジェクトの土地収用や環境アセスメントをはじめとするフィジビリティスタディ(実行可能性調査)には膨大な時間と労力がかかるが、中国には地主と交渉した経験もなければ、フィジビリティスタディのノウハウもない。

           もう一つの理由は、中国に海外インフラプロジェクトの運営ノウハウがないことだ。海外のプロジェクトには、ファイナンスやエンジニアリングなどを全部きめ細かく運用するプロジェクトマネージャーが不可欠で、そういう人材を育てて企業が十分なノウハウを蓄積するためには50年くらいかかる。

           日本のプラントエンジニアリング専業大手3社(日揮、千代田化工建設、東洋エンジニアリング)も、これまで苦労に苦労を重ね、血と汗と涙の物語で経験値を蓄えてきた。それでも、利益を出すのは簡単ではない。それほど海外インフラプロジェクトというのは難しいのだ。

           そうした経験も人材もノウハウも持っていない中国が、海外で高速鉄道などの大規模なインフラプロジェクトを成功させることができるとは思えない。おそらく、中国が手がけた海外プロジェクトはことごとく中途半端な状態で頓挫してしまい、世界中にインフラの“鬼城(ゴーストタウン)”ができるだろう。

          posted by: samu | 原子力政策 | 09:32 | - | - | - | - |
          「 原子力規制委が妨げる最先端癌治療 」桜井よしこ
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            『週刊新潮』 2016年1月14日号
            日本ルネッサンス 第689回
             

            昨年12月、鹿児島県にある九州電力川内原発を取材して考えた。東日本大震災以降、原子力発電の安全基準は大幅に強化され、日本の規制基準は世界で最も厳しくなった。全原発が止められた中で先頭を切って再稼働を許された川内原発のいたる所に、原子力規制委員会のメンタリティが見てとれた。杓子定規で、合理性を欠いた、硬直した精神だと言ってよいだろうか。
             
            広い敷地の方々に大容量の給水用ポンプ車、どこにでも大量に注水可能な放水砲、高圧発電機車、緊急用車輌や復水タンクの数々が配置され、幾つかは太い鎖で分厚いコンクリートの床につながれていた。竜巻対策であるのは明白だが、果たしてここまで必要なのかと考え込んだ。
             
            九州電力は、川内原発再稼働に漕ぎつけるまでに40万ページもの書類を作成させられた。10万ページの書類作成はこれまでの取材で知っていたが、40万ページは初めてだ。厚さ10センチのキングファイル150冊が10万ページ、高さ15メートル、5階建の建物に相当する。15メートルの書類の柱、4本分を作成して初めて、川内原発は規制委の要求を満たし得たわけだ。
             
            膨大な量の書類は、一体誰が審査するのか。九州電力は書類を台車に積んで何度も往復して運んだが、規制委はそれをどうしたのか。保管庫に積み上げたのか。こんな前近代的手法で原発の安全審査を行うのは、少なくとも先進国では日本だけだ。
             
            米国では全ての応答は迅速にメールでなされる。規制委はいつでも現状をチェックできるし、事業者は疑問や質問をこれまたいつでもメールで送り、回答や指示を受けとれる。諸外国では当然の電子化ファイルが、日本ではなぜ駄目なのか。全てを紙に転写して提出させる理由は何か。規制委の手法は疑問だらけだ。
             
            規制委は電力会社に不必要な負担を強いているだけではない。京都大学原子炉実験所の事例に見られるように、日本が世界に誇る最先端の研究も停止に追い込まれ、年間数十人規模の命を助けてきた治療がこの1年半以上、停止され続けている。規制委の不適切な規制で失われている命があるということではないか。原子炉の安全確保は当然だが、どう見ても、規制委には決定的な問題と行き過ぎがある。

            人命を脅かす
             
            たとえば彼らは、強大な権限を与えられた3条委員会としての独立性を、事業者とは話し合わずに孤立することだと誤解しているのではないか。本来規制委は、現場を1番よく知る事業者と対話し、助言し、原発及び原子力利用施設の安全性を高め命を守るために、互いに協力する立場にある。しかし、彼らは現場を無視し、見当外れの安全審査を行い、人命を脅かす結果さえ招いている。
             
            世界の注目を集める京大の先駆的研究、中性子を使った基礎研究と、加速器駆動未臨界システムの研究の両方が規制委の壁の前で完全にストップしているのである。
             
            中性子活用の研究のひとつが「ホウ素中性子捕捉療法」(BNCT)という癌治療である。
             
            京大原子炉実験所・原子力基礎工学研究部門の宇根崎博信教授が語る。

            「京大が最重視する社会貢献が癌治療のBNCTです。私たちは研究の傍ら週1日をBNCT治療に割き、年間40人から50人を治療し、難しい癌から救ってきました」
             
            90年以降、京大はBNCTの臨床研究として500症例以上を扱っており、症例数及び適用範囲の広さで世界最高水準を誇る。
             
            ちなみにBNCTでは、ホウ素を含んだ特殊な薬剤を投与し、癌細胞が薬剤を取り込んだタイミングで中性子を当てる。中性子を吸収した途端にホウ素はパンと割れ、その際の放射線(アルファ線)で癌細胞は死滅する。アルファ線の飛距離は細胞1個よりも短いため、癌細胞だけを破壊し隣接する正常細胞は傷つけない。このように正確に癌細胞だけを攻撃できるため、癌の患部と正常組織がまじり合っている悪性度の強い場合でも有効で、これまで困難だった治療が可能になった。適用範囲は当初の脳腫瘍と悪性黒色腫から、舌癌、口腔癌、耳下腺癌、肺癌、肝癌に広がり、いまや癌克服の決め手として熱く期待されている。
             
            BNCTの成功には、原子炉を運転して作る中性子を安全に扱う原子力工学、ホウ素を含む薬剤を開発する薬学、放射線治療専門の医学の3チームによる高度の連携が欠かせない。これら全てが揃っているのは世界で京大原子炉実験所だけである。にも拘らず、BNCTを含む中性子を用いた基礎研究が規制委に止められているのだ。

            世界をリード
             
            その理由は、川内原発で感じた柔軟性と合理性を欠く規制委の杓子定規な精神にあると私は考える。規制委は2013年に商業発電用原発の規制を大幅に強化した厳しい新基準を打ち出し、これを実験・研究用原子炉にも適用した。川内原発は1号機も2号機も各々89万キロワット、対して京大の原子炉は出力5000キロワットと100ワットだ。近畿大学の研究用原子炉は出力わずか1ワット。これは豆電球と同じで、空気で十分に冷却される。ところが規制委は大規模商業発電用原子炉と同じ基準を、京大にも近畿大にも規模の違いなどお構いなしに当てはめた。地震、津波、竜巻、テロ、航空機の衝突、火災、活断層など全てを網羅した厳しい対処と、膨大な量の書類作成も求めた。
             
            宇根崎氏ら研究者・教授は過去2年間、規制委対応に追われ、書類作りがメインの仕事となり、本来の研究は遅延遅滞が続いている。学生たちも研究用原子炉の運転が停止され学べなくなった。近畿大は窮余の策として学生を韓国水原に送り、慶熙(キョンヒ)大学の試験研究炉で学ばせている。かつて日本は、慶熙大学をはじめソウル国立大学など韓国6大学の精鋭学生約20名を毎年、京大原子炉実験所に迎え、教えていた。それがいま逆転したのだ。
             
            BNCT同様、京大が世界をリードする加速器駆動未臨界システムの研究も止められた。同システムは放射性廃棄物に含まれる長寿命の元素でウランやプルトニウムよりも重たい厄介者、たとえばアメリシウムなどを原子炉に入れて半減期の短い元素に変える、核変換処理にも使える優れたシステムだ。宇根崎氏が語る。

            「世界各国がこの次世代原子炉の研究をしています。概念設計に必要な基礎研究、実験データにおいては、京大が先駆的存在です。諸外国が猛烈に追い上げていますが、世界をリードしているのは私たちです」
             
            宇根崎氏は、人材育成のためにも、またこの時代に、原子力研究を目指す志ある学生たちのためにも研究再開を切望している。日本の先駆的研究と、命を守るために、政府は規制委に対する監視と助言の機能を果たさなければならない。

            posted by: samu | 原子力政策 | 22:07 | - | - | - | - |
            原子力規制委が止めた癌治療 的外れな規制に国会監視を強化せよ/櫻井よしこ
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              原子力規制委員会の不合理な審査で日本が誇る世界最先端の研究が停止に追い込まれている。年間数十人規模で助けることのできる命が、2年間も犠牲にされ続ける許し難い事態が発生している。

               京都大学原子炉実験所は原子炉による実験および関連研究の拠点として昭和38年に開設された。以来、ここを舞台に全国の大学研究者が最先端の研究を進めてきた。2つの原子炉をはじめ各種加速器施設、大強度ガンマ線照射装置などを備える日本最大規模の統合的核エネルギー・放射線関連教育・実験施設である。

               世界が注目する京大の研究の核は中性子を使った基礎研究だ。それが規制委の壁の前で完全に中止された状態が続いているのである。

               中性子は物質の構造を比類なく正確に探るのに欠かせない。惑星探査機はやぶさが持ち帰った小惑星イトカワのサンプルの微量な元素の成分も中性子を当てることで分析できた。京大が中性子を活用して行う研究のひとつが「ホウ素中性子捕捉療法」(BNCT)という癌治療である。

               1990年以降、京大のBNCTの臨床研究は500例以上、症例数および適用範囲の広さで世界最高水準にある。原子炉実験所・原子力基礎工学研究部門の宇根崎博信教授は、京大が社会貢献として最重視するのが癌治療のBNCTで、京大は研究の傍ら週1日をBNCT治療に割き、近年は年間40人から50人を救ってきたと指摘する。
              BNCTの治療では、特殊なホウ素を含んだ薬剤を投与し、癌細胞が薬剤を取り込んだタイミングで中性子を当てる。するとホウ素が中性子を吸収して2つにパンと割れ、その際の放射線で癌細胞が死滅する。小さな爆竹を癌細胞に送り込むイメージだ。

               BNCTは癌の患部と正常組織がまじり合っている悪性度の強い癌にも有効で従来困難だった治療を可能にした。進化を遂げたBNCTの適用範囲は、当初の脳腫瘍と皮膚癌の黒色肉腫から舌癌、口腔癌、耳下腺癌、肺癌、肝癌に広がり、いまや癌克服の決め手として期待されている。

               治療の成功には、原子炉を運転して作る中性子を安全に扱う原子力工学、ホウ素を含む薬剤を開発する薬学、放射線治療専門の医学の、3チームによる高度の連携が欠かせない。それが全てそろっているのは世界でも京大原子炉実験所だけだ。ところが、このBNCT治療が中性子を用いた基礎研究とともに規制委に止められているのである。

               規制委が2013年に商業発電用原発の規制を強化した厳しい新基準を打ち出し、実験・研究用原子炉にも適用したからだ。京大の原子炉は出力5000キロワットと100ワット、近畿大のそれは出力わずか1ワット、関西電力大飯原発1基の約30億分の1、豆電球だ。これは空気で十分冷却される。
              にもかかわらず、規制委は大規模商業用発電原子炉と同じ基準をこの研究用小規模炉に当てはめる。地震、津波、竜巻、テロ、航空機、火災、活断層など全てを網羅した厳しい対処と、数万から40万ページ(九州電力の川内原発)にも上る膨大な量の書類作成を求める。

               京大の宇根崎氏ら教授・研究者は過去2年間、規制委対応に追われ、書類作りがメーンの仕事となり、本来の研究の遅延遅滞が続いている。

               なぜこんなことになるのか。規制委の役割は、現場を一番よく知っている事業者と対話し、原発および原子力利用施設の安全性を高め命を守ることだ。だが、強大な権限を与えられた3条機関としての独立性を、事業者とは意見交換しないとでも言うかのような孤立と混同しているのではないか。規制委は現場の実情を無視した見当外れの審査に走り、人命を脅かす結果を招いているのである。

               原子炉施設の安全確保が万人共有の目標であるのは論をまたない。しかし現場に十分耳を傾けない規制委は非現実的なまでに厳しい要求をするだけでなく、具体策になればなるほど彼らの基準は揺らぐのである。
              たとえば放射線に関して十分な安全性を要求するのはもっともだが、何をもって十分とするのか、工学的要素やリスクをどう評価するのか、その基準は曖昧である。京大は核燃料物質関連の施設改造で補正申請を4回、繰り返させられた。宇根崎氏が「生みの苦しみ」と表現した同プロセスは、最終審査までに1年半かかったが、生みの苦しみの主因は規制委の基準が定まっていなかったことにある。

               審査に臨むに当たって、規制委は本来、最初に明確な基準を示すべきだ。だが、現実はそうではない。これまでの取材で審査のたびに規制委が新しい要求を出す事例は幾つも見てきた。規制委は実習しながら規制について学んでいるのかと問いたくなる。彼らが原子力研究を左右し、放射線医療の進展までも止めている現状は、日本のみならず人類にとっての不幸である。

               癌治療だけではない。研究も教育も停滞中だ。大学の研究用原子炉の運転停止で学生たちが学べなくなり、近畿大学は窮余の策として彼らを韓国水原に送り、慶煕大学の試験研究炉で学ばせている。かつて日本は慶煕大学をはじめソウル国立大学など韓国6大学の精鋭学生約20人を毎年京大原子炉実験所に迎え、教えていた。現在の逆転を、宇根崎氏ならずとも「情けない」と思うのは当然であろう。

               あらゆる研究分野で先駆者としての地位を守り続けることが国益であり、日本人の幸せである。政府は規制委の的外れな規制を正し、彼らが正しく機能するように、専門家会議を設置し、医療や研究が完全ストップのわなから解き放たれるように、国会の監視機能を強めなければならない。

              posted by: samu | 原子力政策 | 10:09 | - | - | - | - |
              いまだ危険なイメージが消えない福島への誤解 /竜田一人×開沼博
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                いまだ危険なイメージが消えない福島への誤解 竜田一人×開沼博対談(1) 12月25日 週刊ダイヤモンド

                ――福島を取り巻く世論の変化をどうご覧になりますか?この5年で変わったことはあるのでしょうか。

                竜田?正義を目的に福島を語って来た人は、いまでもあまりスタンスは変わっていないんじゃないですかね。最初からそこまでの主義主張がなくて、ふわっと正義に触れることを言ったりして最初のころはそっちの意見につられていた人が、冷静さを取り戻してきていることはあると思います。そういう人に対して「今の現場ではこうなんだよ」ということを伝えることは効果があるのではないかなと。

                開沼?一時に比べればよくも悪くも落ち着きつつあるんじゃないでしょうか。ただ、風化と風評というキーワードがよく出てきていますが、多くの人は風化を懸念しますが、圧倒的に風評の問題の方がよほど大きくせり出してきていて、それによる誤認識が課題解決を遠ざけていることに気づいていない。福島の農家で話を伺うと「変な噂が流れ続けるくらいなら忘れてもらった方がいい」という方はとても多いです。

                ?あと、いまだに原発周辺地域のイメージが福島全体と思われている可能性はある。さらにその原発周辺地域ですら、現在の情報は知られていない。たとえば、原発の立地自治体である大熊町には、今東京電力の750戸の社宅が建設中で、作業者向けの給食センターもできてトラクターが元気に田畑を耕している状態です。

                ?いまもたまに「原発がある町には何万年と人が住めなくなってしまった」とか情感たっぷりで書いた文を目にしますが、「いやいや、事故をおこした1−4号機がある自治体にはもう人住むんですが」っていう話。そういう基本的な現状認識を知らないままモノが語られるケースが多すぎるんです。

                「『不幸なフクシマ』のままでいてほしい人が
                たくさんいる

                竜田?今の現場からの情報発信が足りていないんじゃないでしょうか。結局ぼくが『いちえふ』を描いたあとに続く原発ルポマンガは現時点までに出てないし。事故直後はルポライターみたいな人が入って、結構デマっぽい記事も出ましたが。伝える側も、新しい情報を仕入れようとしていないですよね。

                開沼?これは伝える側の問題だけではなく、視聴者や読者もわかりやすいセンセーショナルな非日常を求めるんでしょうね。被災地復興に限らないですけど、課題も希望も日常・正常の中に隠れているものなのに。現場感覚が欠けています。「『不幸なフクシマ』のままでいてほしい」人たちがたくさんいますよね。

                ?まあ、こういう無意識のバイアスに基づくイメージの再生産に依存するメディア・言論の薄っぺらい構造であったり「マイノリティ憑依」「ヘッドライン寄生」は他の分野でも散々やられてきたことですが。「きれいな目をした子供たちがいるアフリカ」みたいな。「きれな目」をしてないと急に怒り出す。現場からしたら「知らねえよ、あんたの意のままに動く玩具じゃないんだよ」っていう話です。まあそうしたメッセージの出し方が現地にメリットがあるならいいのですが、逆に迷惑をかけているとなると放ってはおけません。

                竜田?ただ、現場からの発信、といっても難しい面はあるんですよね。さっきの大熊町の話も、本来なら住んでいる人が伝えるべきなんでしょうが、現在人が住んでないですからね。給食センターのおばちゃんくらいしかいない。かといって東電が発信したところで「やつらの言うことだから信用できない」という受取り方をされてしまう。第三者が実際のところを伝えていくしかない。そこに関心のあるメディアが行って正しく伝えていただくしかないのかなと、思います。

                *1 Q?原発周辺は今も放射線量の高い「死の町」なの?

                A?特別対談にもあるように、現在廃炉作業員として約7000人が働いており、原発までの作業員の通勤ルートである国道6号線は、朝晩慢性的な渋滞が発生しているほどだ。事故直後にむき出しになった3号機、4号機にはカバーが付いた。

                ?
                2011年は作業員の拠点となっていたJビレッジから、原発まで全面マスクとタイベック(放射線防護服)装備で移動していたが、現在では原発構内の汚染数値も大幅に下がり、そのため屋外も含む原発構内の多くの部分で、通常の作業服で行き来ができる。
                 
                *2?Q?汚染されている福島の食品が流通しているんでしょ?

                A?事故直後、放射性物質が検出される可能性がある食品には全て出荷規制がかけられた。その後出荷基準値を超えた物は市場に流通させない仕組みもできた。これまで、福島県、各農協・漁協などで出荷前検査を行い安全性が確認された物だけが流通している。検査数は県だけでもこれまで累積で100万件を優に超える。

                ?現在、出荷基準値を超える食品は、出荷を前提としない検査用の野生の獣肉などに限られ、その比率も全体の0.3%程度しかない。

                ?主食の米についてはさらに全量全袋をスクリーニング検査する方法が取られ、毎年1000万袋以上が検査された上で、出荷基準値を超えない物のみが出荷される。

                ?現在福島県内で生産者が出荷を自粛している主な物は近海魚類だが、事前の3万件のモニタリング調査から、一定期間以上検出限界値(装置で測定できる限界)未満が確認されている魚種67種に限って、出荷前に検査の上、福島県近郊を中心に流通している。

                ?原発事故前から、日本人は大気・大地・宇宙線などから年間2.1ミリシーベルトの自然被ばくをしていた。事故を契機に国は長期的な目標として年間での追加放射線被ばく量1ミリシーベルトという目標を定めたが、これは「超えると人体に影響が出る」数字をはるかに下回る、あくまでも管理上の長期目標。出荷基準値は「日常的に汚染された食品を食べ続けた」と仮定しても、この目標に届かないとして設定された基準にすぎない。放射性物質は量の概念が最も重要で、実際に食べる形に調理し日本人の食生活に合わせた場合の数値で見る必要がある。日本の基準は世界と比べてもかなり安全に設定されている



                株式日記と経済展望ブログより(私のコメント)

                「株式日記」のアクセス数をみると未だに、福島第一原発事故の関心の高さがうかがわれます。しかしテレビでは現在の福島災害現場の様子をルポした番組はあまり見かけなくなりました。報道する側としては福島原発の周辺は「死の町」であってほしいのでしょうが、復旧工事は着々と進んでいる事が写真でも分かります。

                今では事故直後の瓦礫の山はすっかり消えて、水槽タンクの並ぶ工場建設現場のような様相を呈しているそうです。Jビレッジから福島第一原発までは通常の作業服でもよくなり、防護服着用は事故現場だけになっている。4号機は燃料の取り出しも終わり、解体作業の準備段階に入っていた。

                反原発のルポライターたちは、4号機の燃料プールが破損していて水が抜けて核燃料の大爆発で日本の半分が住めなくなると扇動していたが、燃料棒はとっくに抜かれてプールだけになっている。そんな順調な状況を報道したら原発再稼働反対のムードが壊れると思うから、最近の福祉な原発報道がされないのではないだろうか?

                週刊誌やブログの中には、未だに子供の癌が多発しているとか奇形児がたくさん生まれているといったデマを飛ばす人がいますが、根拠になるデーターも無くあっても検証に耐えられないようなものであり、ネットから拾ってきてそれを記事にしているようだ。いわばデマのキャッチボールをして不安を煽っている。

                福島産の野菜やコメを食べると内部被ばくで癌になるとか言ったウワサも福島の人に対する差別であり、酷いのは早く東京から避難しないと長期の食物汚染でばたばたと人が死ぬような噂を広めている人がいる。「食品の放射能汚染 福島 奇形」といったキーワードを打ち込めば記事がたくさん出てくる。知らないうちに放射能汚染食品を食べさせられているといった記事です。

                しかし食品の出荷基準値にしても、年間被ばく量1ミリシーベルトは自然被曝の2,1ミリシーベルトからみれば、これで内部被ばくで癌になると言った根拠は何なのか。7000人も復旧作業に従事持している人がバタバタと白血病で倒れているのなら分かるが、いたずらに不安を煽っているようにしか見えない。

                本来ならば水素爆発さえなければ放射能汚染は原発周辺に限定されていたはずだ。ベントするにしても海側に風が吹いている時にすれば汚染は防げたはずだ。容器本体がメルトダウンしただけなら象の足をどのように取り出すかの問題になる。

                結果的に水素爆発した事で、屋根が吹き飛んで直に放水する事になりましたが、燃料プールが原子炉の隣にある事自体が驚きだ。ストーブの傍に薪を積んでいるようなもので原発の構造に理解が苦しむ。素人ならば制御棒が作動して運転が制止すれば安全だと考えていましたが、専門家たちも同じように考えていたようだ。

                今現在では日本中の原発が停止していますが、停止していても冷却水が循環しなければ水は蒸発して核燃料棒は熱で溶けて爆発するとはだれも思っていなかったようだ。だから停止中だった4号機は放置されて水素爆発して初めて気がついたようだ。武田邦彦教授はその説明をしていましたが、軽水炉の構造そのものが欠陥があり設計上のミスにつながった。

                posted by: samu | 原子力政策 | 10:27 | - | - | - | - |
                ◆「われわれは愚かだった」 米有力紙が“反省” 誇張されすぎた被曝リスク
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                  「われわれは愚かだった」 米有力紙が“反省” 誇張されすぎた被曝リスク 12月20日 産経新聞

                  東京電力福島第1原発事故以降、放射線被曝リスクに対し、過剰に恐れる極端な反応もみられ、混乱と迷走を続けてきた。そうした中、米有力紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が12月3日付で、「原子力のパラダイムシフト」と題して、被曝リスクは誇張され過ぎているとした上で、「われわれはどれほど愚かだったのか」と自戒する記事を掲載した。その理由と背景は何か。被曝リスクについて振れ過ぎた針を戻す試みが、海外から出てきている。(原子力取材班)

                  WSJの名物記者が執筆

                   記事を執筆したのは、WSJ編集委員で、コラムニストのホルマン・ジェンキンス氏。同紙のホームページによると、ジェンキンス氏は1992年から同紙に所属、97年には、金融や経済分野で優秀なジャーナリズムをたたえる「ジェラルド・ローブ賞」を獲得している同紙の名物記者だ。現在は週に2回、「ビジネスワールド」という欄を担当し、今回の記事もそこに掲載された。

                   記事ではまず、パリで開催されていた国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)を題材に、フランス国民一人当たりの所得が世界20位にもかかわらず、温室効果ガスの排出量はなぜ、世界50位なのかという問いを投げかけている。

                   答えは、フランスが電力の75%を原発でまかなっているからである。その上で、記事は「『放射線被曝はいつも被曝量に直接比例して危険である』という根拠のないドグマ(独断)に、世界は1950年以来、屈服してきた」と指摘する。

                   ジェンキンス氏はこのドグマを「秒速1フィートで発射された弾丸で死ぬ確率は、秒速900フィートで発車された弾丸で死ぬ確率の900分の1だと言っているものだ」と皮肉っている。

                  LNT仮説の欺瞞性

                   この記事が議論しようとしているのが、「閾値(しきいち)なしの直線仮説」(Linear Non−Threshold=LNT仮説)と呼ばれるものだ。

                   単純に言ってしまうと、放射線被曝線量と、その影響の間には、直線的な関係が成り立つという考え方である。

                  ところが、年間100ミリシーベルト以下では、広島や長崎の原爆の被爆者を対象とした膨大なデータをもってしても、発がんリスクの上昇は認められない。つまり、100ミリシーベルト以下の低線量では、どれだけ被曝しようと、直線的関係は成り立たないということだ。

                   国際的に権威がある国際放射線防護委員会(ICRP)もLNT仮説を支持していないが、福島の事故以後、「被曝すればするほどリスクが高まる」という言説が流布した。

                   記事では、米国の原子力規制機関のトップが2001年、「チェルノブイリ原発事故(1986年)に起因する白血病の超過発病はなかった」と認めていることにも触れている。

                   さらに1980年代、台湾で1700戸のアパートが、放射性コバルトに汚染されたリサイクルの鉄を使って建設されたが、2006年の調査で、住人のがんの罹患率が大変低いことが分かった。その研究者は「米国のリスク評価が修正されれば、原発の稼働で多くの金が節約できるし、原発の拡大が促進される」と主張している。

                  原子力のパラダイムシフトが起きている

                   これを受け、ジェンキンス氏は「放射線に対する過度な恐れが、原発の安全や廃棄物の貯蔵、原発の許可費用にとって大きな問題となっている。しかし変化は起きている。パラダイムシフトが起きつつある」とみている。

                   米国の原子力規制委員会は、安全基準を改定することに関して意見募集を開始。変更を求めた申請者の大学教授が「LNT仮説には根拠がない」と指摘したという。

                   さらに、オックスフォード大学のウェード:アリソン名誉教授(物理学)、マサチューセッツ大学マースト校のエドワード・カラブレーゼ氏(毒物学)の名前を挙げて、「この2人は何十年も前からLNT仮説と闘い続けてきた」と称賛。学術誌の10月号の論文では、「1950年代のマンハッタン計画に関わった放射線遺伝学者が、自分たちの研究分野の地位を高めるために、わざとLNT仮説が採用されるように促した」という経緯を暴露した。今では、何百もの論文がLNT仮説に反対する証拠を提出しているという。

                  大統領は屈服する?

                   続いて、石炭火力と原子力について比較している。

                  石炭は21世紀初めに世界の主力なエネルギー源となった。しかし、安全面や効率の点でどうだったかについて疑問を投げかけた。

                   記事は「今なら中国もインドも石炭を選ばず、先進国で開発された安価で安全で、クリーンな原発を選ぶだろう」とした上で、「われわれは何と愚かだったのだろう」と嘆く。

                   石炭は原子力よりも危険であり、米国肺協会によると、石炭火力発電所から排出される粒子状物質や重金属、放射性物質で年間1万3200人が死亡していると試算しているという。

                   ジェンキンス氏は最後に、温室効果ガス削減に前向きなオバマ政権とリベラルなニューヨーク・タイムズ紙をチクリとやった。

                   「オバマ大統領は気候変動問題で有益な態度を示しているが、もしニューヨーク・タイムズが『(原発の増設は)環境保護主義者への背信だ』と社説で非難すれば、大統領は屈服してしまうだろう」



                  株式日記と経済展望ブログ(私んコメント)

                  原発再稼働の問題は、反原発活動家の反対運動で遅延が続いていますが、スリーマイル事故でアメリカの原発は止まらず、チェルノブイリでもソ連の原発は止まっていない。いずれも操作ミスにより事故であり、操作ミスによる事故はいつでも起こりうる。

                  しかし福島第一原発は地震と津波による不運な天災であり、数百年に一度の天災に巻き込まれたものだ。天災ならば想定される事態も予測可能であり、震度6の大地震や15メートルの津波に耐えられるように改造すればいいだけの話だ。それは不可能な話ではない。

                  しかし反原発活動からのデマ報道で原発再稼働が遅れている。しかしこれは全面的な再稼働推進ではなく、現状ある原発で安全対策が取られればの話だ。電源の全面喪失に対する対策や近隣の避難計画などの策定はしなければならない。福島第一原発事故では当時の民主党政権では情報を封鎖して飯館村を被曝させてしまった。

                  東電では原発事故は起きない事を前提としていたから、事故に対する対策は限定的なものになってしまったために、実際に事故が起きると思考停止状態になり対策は後手後手に回ってしまった。少なくとも水素爆発に対する対策が専門家からも出なかった事が不思議でならない。

                  物理学では水が数千度の高温に接すれば水素と酸素が発生する事は常識なのですが、アメリカなどでは原子力潜水艦や航空母艦があるのだからアメリカから警告が無かったのだろうか? 最悪の場合は手動でバルブを操作する事も想定されているはずですが、福島第一ではそれが出来ていなかった。

                  放射能の人体に対する影響はデータそのものが非常に乏しく、長期間の観察記録もチェルノブイリにしても限られている。ヒロシマ、ナガサキの被曝にしても長期的な低容量被曝ではないから参考にならない。参考になるのは60年代の米ソの核実験競争における放射能汚染ですが、雨に当たるだけで頭が禿げると言われた。

                  チェルノブイリでは子供の甲状腺がんが問題になっていますが、福島ではどうなっているのだろうか? 検査の基準そのものがまだ4年しかたっていないので結果が分からず、少なくとも子供が癌でばたばたと死んでいるわけではないようだ。センセーショナルに50倍の発生率と言ったところで事故前からデータを取っていたわけではなく、被曝線量自体の測定が難しい。

                  放射線自体は自然界にも存在しており、飛行機に乗っただけでも低容量の放射線を浴びる事になる。100ミリシーベルトと言ってもどれくらいの放射線なのか見当もつきませんが、自然界でも2〜3ミリシーベルトの放射線を浴びている。それよりも車の排気ガスを吸い込んだ方が遥かに危険だという事は感覚的に分かる。しかし誰も車を廃止しろとは言わない。

                  火力発電所や車や工場から出る排ガスは北京や上海などではPM2,5の水準が異常数値となり肺がんの発生率にも明らかな関係があるのですが、2,3日もいれば喉がひりひりしてくる。中国では過去30年で肺がんが465%も増えている。

                  その様な状況からして低用量放射線だけに異常反応して反対運動をしているのは不自然に思える。火力発電にも弊害はあるし原発にもそれなりの弊害はある。それ以上に自動車には弊害発生源となっていますが、毎年1万人近く死んでも誰も騒がない。

                  原発で問題になるのは核廃棄物の問題であり、核燃料サイクルは破綻している。高温ガス炉は実用化レベルになって来ており、核のゴミも半分以下に減らせる。
                   

                  posted by: samu | 原子力政策 | 09:15 | - | - | - | - |
                  原子力規制委の独断は許されぬ 公正化は自民党の責務である/櫻井よしこ
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                    わが国の原子力政策を決めるのは政府であり、原子力規制委員会ではない。だが現状は、ほとんど国民の支持を失った民主党・菅直人政権の残した規制委の独断がまかり通ろうとしているかのようだ。

                     国家行政組織法による第3条機関として設置された規制委は委員長の任免を天皇が認証し、公正取引委員会同様、内閣総理大臣といえども介入はできない。強い権限を与えられた分、規制委には、「中立公正」さと運営の「透明性」が設置法によって求められている。だが、田中俊一委員長以下規制委はその法的要件を満たしているだろうか。

                     田中氏は11月13日、高速増殖炉「もんじゅ」の運営母体である日本原子力研究開発機構の能力を否定し、半年後に機構に代わる専門機関を探せなければもんじゅを根本的に見直せと勧告した。高速増殖炉を扱える専門家集団は機構以外には見当たらないため、同勧告はもんじゅの廃炉にとどまらず、高速増殖炉を中核とする核燃料サイクルを完成させるというわが国の原子力政策を覆しかねない。

                     確かにもんじゅの評価は厳しい。約20年間動いておらず、2013(平成25)年には運転再開の準備作業も禁止された。地元の「福井新聞」による今年4月の世論調査では、3人に1人が「廃炉にすべきだ」と答えた。
                    国民の信頼回復も高速増殖炉の安全確保も最重要課題だ。それでも核燃料サイクルを完成させ、使用済燃料を再処理して、2500年以上にわたってエネルギーを供給するという基本的エネルギー政策を、規制委が覆すのは行き過ぎであろう。

                     政府は日本のエネルギー政策として、核燃料サイクルの完成を目指す基本計画を続けるのかどうか。国民への明確な意思表示が必要である。

                     同時に政府には規制委が設置法に基づき正しく機能しているのか否かを検証する責務がある。3条委員会といえども独断専行は許されない。活断層問題で露呈したように、規制委による安全審査の在り方には、内容と手続きの両面で深刻な問題がある。その事実に、なぜ、政府はもっと正面から向き合わないのか。

                     福井県の日本原電敦賀原発第2号機の安全審査で、規制委は敷地内の破砕帯を活断層だと断じた。反対の立場の専門的・科学的資料を門前払い同様に退け、まともな科学的議論がないまま断定したことに関して、敦賀市の渕上隆信市長は11月25日、公正な議論を求める意見書を規制委に提出した。
                    一方の意見への偏りが目立つ規制委の審査は真の安全確保にはつながらない。のみならず、科学立国としてのわが国の力をそぐことになる。

                     加えて規制委の審査方法は世界で最も非効率、非合理的で、遅れていること、信じ難いものがある。

                      欧米では検査記録はすべて電子化され、パソコンでの閲覧が可能だが、日本は必ず紙に転記して提出し、説明しなければならない。規制委が原発各社に要求する検査関連書類は概して10万ページに上るであろう。厚さ10センチのキングファイルで150冊分、積み上げると15メートル、言語を絶する量だ。しかも、高速増殖炉に関してはより多くの書類作成が求められている。

                     現場の技術者や専門家に他国に例を見ない膨大な書類の山と格闘する負担を課す一方で、審査の目的や優先すべき事柄について、規制委は意思の疎通をはかっているのか。長年経緯を見詰めてきた地元の敦賀市や福井県は明らかに疑問を抱いている。

                     渕上市長は「(規制委の)適切な指導があれば、勧告という事態にはならなかったのではないか」と述べ、西川一誠知事も「これまでの助言に親切さが欠けている」と、いずれも規制委のコミュニケーション不足を批判した(「福井新聞」11月17日)。
                    対して、規制委の更田豊志規制委員長代理は「要するに手詰まりだというふうにしか聞こえない」と突き放したが、このような姿勢は妥当なのか。私たちの眼前で進行中の、高速増殖炉という重要技術に関する規制の在り方を一例として、国際社会のそれと比較し、日本の規制がどれほど異端であるかに、政府は目を向けるべきだろう。

                     米国の規制では、原子炉の安全や行政手続きの透明性と公正さの確保について、規制委が判断を間違わないように複数の専門家集団が助言する。上院の環境公共事業委員会、下院のエネルギー商業委員会も規制委の監視権限を有し、過度な規制や偏向した判断を抑制する機能を、議会が果たしている。

                     日本では規制委の行き過ぎを、専門家も国会も抑制できていない。3条委員会を尊重することと、彼らが真に公正な立場で、高い透明性を保ちながら安全審査を行うよう、専門家および国会による助言や抑制を機能させることは両立する。否、両立させなければならない。にもかかわらず、それができていない。このことになぜ政府は心しないのか。

                     2030年代の原発全廃を念頭に民主党・菅政権が人選した規制委を国会承認したのは政府・自民党である。結果として、国のエネルギー政策が覆されようとしている。民主党の置きみやげである規制委の公正化を目指して、専門家委員会および国会の機能の活用に、急ぎ踏み込むのが、自民党の責務である。

                    posted by: samu | 原子力政策 | 09:33 | - | - | - | - |
                    中国原発の技術とカネにすがる英国のお寒いエネルギー事情/ 山本隆三
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                      10月下旬の習近平主席の訪英時、英国政府は原子力発電所の新設に中国資本の受け入れを決め、さらに中国製の原発設備を将来採用する計画を明らかにした。翌日の「ガーディアン紙」は、基幹技術である原子力分野に中国を受け入れたことを、「中国との原子力取引は、今まででもっとも馬鹿げた合意の一つ」との記事を掲げ強く非難した。

                       一方、中国が参加するヒンクリーポイントC原発において2万5000人の雇用が創出されるとの英国政府発表を歓迎するビジネス界の声もある。また、中国の参加により、「原子力技術が流出する」、あるいは「いざという時に発電所が停止する恐れがある」との指摘に対しては、「巨額の投資を行った中国が、投資額を捨てる行動を取ることはない」との反論がある。

                       習近平主席と英キャメロン首相との会談で中国との原発取引が発表されたため注目されているが、英国原発への中国の参加は既定路線であり、何も目新しい話ではない。ヒンクリーポイントに中国企業が参加することは、2013年10月に英国政府により発表されている。正式発表前には、英国地元紙が、「ヒンクリーポイントの設備は中国製になる」と報道し、地元で「原発は歓迎だが中国製は困る」と反対運動が起こった。

                       その時期に、たまたま英国政府関係者と面談する機会があり、「中国製設備を英国政府は受け入れるのか」と尋ねたことがある。数秒間沈黙があった後、中国製設備が導入されるかどうかの是非を明らかにせず、「資金を提供してくれるのであれば、中国でも、どの国の設備でもいい」と答えてくれた。首脳会談では、中国製原子炉華龍1号機がブラッドウエルに建設される予定と発表されたが、今年になり、中国広核集団は、「ブラッドウエルでの建設を前提に115万kWの華龍1号の包括設計審査(型式認定)を16年に英国政府に申請する」と発表している。既定路線に沿い英中両国政府は粛々と協力関係を具体化しているだけだが、英国政府が原発建設の資金と技術を中国に依存するには当然理由がある。

                      世界を牽引した英国原発
                      消えたのは何故か

                       福島第一原発1号機の事故の後、英国政府関係者から「福島事故の際に日本から退避する必要があるか、ロンドンの施設で解析した。仮に1号機から4号機まで炉心が全て溶融しても日本から退避する必要はないとの結果だった」と聞いた。話は、「遠く離れたロンドンですら解析ができるのに、日本はドタバタしていた。危機管理能力がない内閣だったのが、日本の不幸だった」と続き、「世界で最初に商業原子炉を完成させた英国は、この程度の解析はできる」と自慢で終わった。しかし、英国の原子力業界の実態は、自国の原発建設さえも自力でできないほどに衰退している。
                      英国では1995年運転開始のサイズウエルBを最後に原発の新設が止まるが、その遠因は90年に行われた電力市場の自由化だった。電力供給を行っていた中央電力庁は分割され、原子力部門は96年に民営化される。自由化した市場では将来の電気料金は誰も予測できない。巨額な投資を必要とし、減価償却のため40年以上に亘り常に運転を行う必要がある原発の建設には収益面のリスクがあると投資家は考え、自由化市場での原発の建設はなくなっていった。

                      民営化で激減した英国の原子力研究開発予算
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                       民営化後、新会社は石炭火力の買収、米国への進出など積極経営を進めるが、英政府保有の核燃料会社BNFLに支払う米国の6倍もする再処理費用額と、低炭素電源にもかかわらず課せられた気候変動税の負担がやがて重荷になってくる。しかも、北海からの安価な天然ガスを燃料とする火力発電により卸電力価格も下落し、新会社は青息吐息になる。財務的に行き詰まった新会社を買ったのは、フランス政府が84.5%の株式を保有する仏電力公社(EDF)だった。英国の原発は2009年にEDF保有となる。

                       自国設計の原発から加圧水型軽水炉型の導入に切り替えた英国BNFLは、99年に技術を持つウエスティングハウスを買収する。しかし、北海の石油・ガス生産量が輸出をするほどに増え、02年に政府は原発の新設見送りを決める。ウエスティングハウスは東芝に売却され、英国は原子力技術を失った。

                       英国政府は、06年になり地球温暖化対策、エネルギー安全保障上、原発の新設が必要との方針を打ち出す。第1号案件となったヒンクリーポイントでの新設のために、英政府とEDFが合意したのが、1MW時当たり92.5(1kW時18円)の固定価格での発電した電気の買い取りだった。

                       発電した電気を買ってもらってもリスクは残る。工事の遅れと工費の増大だ。フィンランドで出力172万kWのオルキルオト原発工事を手掛けたアレバを見ればリスクが分かる。03年に32億ユーロ(4300億円)の予算で09年の運転開始を目指した工事は遅れ、運開予定が18年に後ろ倒しとなり、工費も85億ユーロ(1兆1500億円)に膨らんだ。アレバはEDFの支援を受け、三菱重工業にも資本参加を要請する事態に陥った。

                       欧州のエネルギー政策の研究者は、「複雑で大規模工事の原発新設には、何よりも継続した工事の経験が必要」と指摘する。福島第一原発の事故以降、世界では原発新設の動きが一時中断した。そんな中で短期間の中断後すぐに工事を再開した中国だけが、継続的な工事実績を着実に積んでいる。

                      中国で稼働中の原発は29基、建設中は22基ある。16年に運開予定の世界の原発16基のうち8基は中国で建設され、17年運開予定では15基中8基だ。いま、世界の原発工事の半分は中国が行っている。工事を予定通り進められるのは、今や経験を積んでいる中国なのだ。20年には発電設備量は5000万kWを超え、日本を抜き、米国、フランスに次ぐ原発保有国になり、30年には設備量は1億5000万kWと世界一になると予想されている。

                       中国の原発設備は、東芝が87%の株式を保有するウエスティングハウスとアレバの技術が基になっている。10年に国際原子力機関が15カ国のメンバーからなる査察チームを中国に送り、中国の原子力安全のシステムの効果と将来の安全性に、問題なしとお墨付きを与えている。

                      世界で建設中の原子力発電所(2015年11月現在)
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                      中国1強時代の到来か
                      日本の原発輸出にも脅威

                       アレバの原発の建設コストはkW当たり6000米ドル(72万円)と言われている。100万kWの原発だと、7200億円だ。一方、ウエスティングハウスの原発を改良した中国CAP1400のコストはkW当たり3000ドル、発電コストは1kW時当たり7米セント(8.5円)と中国政府関係者は述べている。工期が予定通り、工費もアレバの半分。安全性も問題なしとなれば、英国政府が中国製を受け入れるのも無理はない。市場自由化の結果、発電設備の建設が進まない英国では、中国製でなければ、電力の安定供給が実現しないのかもしれない。

                       英国は自国の電力安定供給強化に、工期と工費を確約できる中国を利用しているようにも見えるが、中国も英国をショーケースにした輸出拡大を考えている。中国はパキスタンには原発輸出実績があり、アルゼンチンなどでの建設も合意しているが、さらに中国製を検討する国も出てくると期待している。「鉄道車両」と「原発設備」輸出に力を入れる中国政府は、今回の英国との合意を梃子に輸出に一層力を入れる筈だ。

                       日本では、原発の再稼働は遅々として進まず、新設はいつになるのか全く見えない。政府は30年に電源の20%から22%を原子力で賄うとしているが、その道筋は不透明だ。原発の工事を長々と中断すれば、いざ建て替えや新設工事を再開することになっても、アレバのように工費と工期で問題を起こすようになる可能性も高い。そうならないようにするには、継続的な工事で着実に力を付けるしかない。

                       停電が発生する可能性を避けるため中国企業に工事を依頼するしかないとなれば、英国と同じだ。原子力技術が衰退した英国を他山の石として、中国企業との競争をどう勝ち抜くのか、いまから考えなければ、気がつけば、海外市場どころか国内市場も中国に席巻されていることになりかねない。

                      posted by: samu | 原子力政策 | 14:44 | - | - | - | - |